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第45話 最強の種族、グランドオーク


とある街、そこには一際豪華な館があった。

その館の一室で女神や勇者達が集まり会議をしている。


「随分と勇者の数が減ったみたいですが」

「はい、ミディカ様それが移動途中にオークに遭遇してしまい……」

1人の勇者が膝をついて報告する。


「なんですって!よりにもよってあんな連中……」

「当然応戦したものの全く歯が立ちませんでした。その上、勇者数人が鹵獲されてしまう始末……」

報告を聞いて頭を抱えるミディカと呼ばれる女神。


「連中はただのオークではない、グランドオーク、進化する最強の種族。もうこの世界の住民には神話や寓話の類とされる程に人目につく事が無い種族。まさかこんな時に遭遇するとは」


「ですが、これは好機でもあります、ミディカ様」

眼帯をつけた女神がミディカの前に出てそう言った。


「確かに……考え方を変えれば、これは願ってもない好機、鹵獲された者達には全員、あれを仕込んであるのよね?」

「はい、勿論でございます」

この事を聞くとミディカは小さく笑う。


「いいわ、では当面の目標をグランドオークに」


「しかしオークたちに捕らえられた仲間たちは如何いたしましょうか?」

「確かに、捕らえるという事はひょっとして情報でも抜き出そうというのでは?」


勇者達はそう話すが、ミディカは首を横に振る。


「情報目的でない、では何のために捕らえたのでしょうか?」

他の者も興味を持って質問する。


「試練を与えるのよ」


「試練?」

いまいちピンとこない様子の勇者達。


「別に貴方達が気にするような内容ではないわ。あの者達は捨ておきなさい、どうせもう生きては帰ってこないわ」

ミディカはそう言って瓶を取り出す。


「これを皆に渡しておきなさい……グランドオークの里、あそこにはこの薬を更に進化させるものが……楽しみだわ」


瓶の中身を光にかざし、恍惚とした表情を浮かべるミディカ。




人里から遠く離れた山の奥。

人が気軽に近寄る事は出来ない、そんな秘境の場所。


この場所にある建物の一室、ランタンが妖しく照らすその部屋で、男が倒れもがき苦しんでいた。その服装や装備品から察するに勇者だろう。


「ごほっ!!えっほ……ぜぇ、ぐるしいぃ……!!」


床に倒れ込んだ彼の目の前には、食事が散らばっていた。

彼は事切れてしまう。


「ひ、ひぃぃッ!!騙したな!毒を盛るなんて!」

それを見た他の勇者が駆け出し、外へ出る為の扉を開ける。


部屋の外は開けた中庭のようになっていた。


「なんだよ、あれ……」

彼の視線の先には大きな球体状の水が浮いていた。

更にその隣には同程度の大きさの火柱がたっていた。


水の球体に近づく。

すると突然、内側から手が。


手が水の外に出ようとするが、まるでガラスの壁に当たったかのように阻まれる。


「ごぼぼッ!!だずげでッ!!ごごがらだじでぐれ!」

何度も手が水の壁を叩くと内側から男が現れた、男はもがき、水の壁を叩く。


彼は水の中にどうやら閉じ込められているようだ。


「え?!ど、どうしたんだよお前!水の中で!」

「ばやぐ!ごごがらッ!だじで……!」


水の壁を叩き、必死に訴える彼の胸を突き破り剣が現れる。

球体状の水が形を崩し地面に流れ落ちた。


勇者は腰を抜かす。


「ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ッッ!?!ア”ぢィ“ッ!なんで、おれが……」

今度は火柱の中から誰かが飛び出して来た。


全身を炎が覆う、その者は叫び声を上げながら地面に倒れた。

炭と化した体は地面に叩きつけられるとボロボロと崩れた。


「そ、その装備、もしかして……!?なんでだよ、お前ら!お前は水中じゃ負け知らずだろ?!お前も炎なんか効かねぇ筈だろ!!!」


勇者は仲間の亡骸に向かって叫ぶ。


すると何かが口にこみ上げて来た。

それを吐き出す、血だ、大量の赤黒い血だ。


「なんだよ、これ!?」

見た事が無い血の色に怯える勇者。


「ひょっとしてさっきの飯の毒か?!いや、そんなはずはねぇ。俺は毒は効かない、そういう体だ。猛毒を扱う魔物に噛みつかれようが毒沼に落ちようが関係ない、そういうのは効果が無い筈だ……ああっ!」


彼の手が痺れて動かなくなる、同時に腕の内側から燃えるような感覚が襲う。


「な”ん”た”!?こ”れ”!?!」

その感覚は足からも襲って来た、足に力が入らずに倒れる。


「貴様は少しばかり耐えたが、毒を完全に克服できなかったか。貴様は【失格】だ」

そう言って彼の前に一人の女性が現れる。


彼女は深緑の肌をしており、深紫の美しい髪を後頭部で束ねている。


「おまえら……一体……」

勇者はそう言って動かなくなる。



彼女の後ろに、もう一人の女性が現れた。

同じ肌の色をしている、髪の毛は黒に赤のメッシュが入っている。


「ベロニカ様ー、ありゃーそっちも【失格】っすかー?こっちもダメっすねー。水の中なら誰にも負けないって言ったからわざわざ用意してやったのに。ぜーんぜん話にならねーって感じでした」


その女性は全身水で濡れており、短刀をクルクルと手元で遊ばせていた。


「えぇ、そっちもぉ?こっちのも炎効かねぇぜぇって豪語してたのに結局炭になっちゃったし。服、焦げ臭くなってないかなぁ?大丈夫ぅ?」


もう一人現れた、今度は赤く熱せられた剣を持っている。

こちらは黒に青のメッシュが入った髪色だ。


「あの中でも一番良いのを選んだのですが、ダメでしたか」


額に手を当ててそう話すベロニカと呼ばれるオークの女性。


「じゃあアタシたち後片付けしておきますー。いくよー、パープルちゃん」

「あぁ、お腹へったぁ。チョコちゃぁんご飯たべたぁい」


「食事ならこの者たちが手を付けていないものがあるので、それを食べて貰えると助かります。では私は報告してきます」


そう二人に行ってベロニカはその場を離れた。



ベロニカは中庭を出て大きな階段を昇って行く。

階段の先には大きな扉、もはや城門のように思えるような規模だ。


金属で出来た重厚な扉をノックするベロニカ。


「マートル様、試練の結果報告をさせて頂きます、よろしいですか?」


「入りなさいベロニカ」

入室の許可をえるベロニカ。


「失礼します……」

巨大で重厚な金属の扉を片手で押し開けるベロニカ。


扉を開けた先に、巨大な玉座が置かれていた。


「マートル姫、本日の試練ですが」

「ええ、全員【失格】なんでしょう?それも全て第一段階で」


玉座の上に1人の女性が座っている。

その者がこのグランドオークたちの姫、マートルという者のようだ。


マートル姫の言葉に頷くベロニカ。


「姫のお母上の世代を最後に200年間は試練を突破するものが現れませんね」

「はぁ、愛しの王子様はいつ現れるのかしら」


ため息をつくマートル姫。


「もしかして、試練がもう突破出来ないものになっているのでしょうか」


ベロニカは少し視線を落とし、一本の巻物を広げる。

巨大な部屋を横断できる程の長さだ。

そこにはびっしりと文字が書かれていた。


「試練の内容をもっと簡単にしろというの?そんなのダメよ!私達にできることぐらいは出来て貰わないと困りますわ!」


「それはそうなのですが。私達は親の世代に比べて極めて優れた進化を遂げる事ができました。実際、前の世代は歴代で類を見ない程短い期間で寿命を迎えていました。それほど多くの生命力、魔力を私たちが受け継いだ証拠です」


ベロニカの言葉に口をとがらせるマートル。


「それで?私たちが強くなり過ぎたから、もっと他の種族に配慮しろという事かしら?そんなの分からないじゃない!私達よりもっと強い種族、いや種族じゃなくても個人がいるかもしれないじゃない!いやよ!ぜったい試練の基準は下げないから!……ッ!」


玉座の上で頬を膨らませていたマートルが何かを感じ取ったのか天井を見上げた。


「ッ!?姫様こちらへ!」

ベロニカも天井を見上げ、マートルを自分の方に引き寄せた。


天井を破壊して何かが飛来する。


その何かは玉座に向かって落下した。


「こ、これは……一体?」

「……はっ!」


「ふわーあ、あれ?んー?飛んでねぇ、どこだここ?」

天井の瓦礫から一人の男が現れた。


飛来したのはカヅチ・タケミだった。



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