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ふく×ふく2 決闘の舞台はあなたのおそば  作者: こっとんこーぼー(琴音工房)


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35、モエギ・ザ・ガンスリンガー

 パペットの口から撃ち出されたのは通常の銃弾ではなく、火炎弾とでもいうべき火の玉だった。


 モエギはポンチョを脱ぎ捨てて、火の玉へとかぶせるように投げつける。

 

 ポンチョが火勢に負けて燃え上がるのを待つことなく、モエギはテンガロンハットを押さえながら横へと走り出し、抜き打ちとばかりにスズノへと弾丸を撃ち込む。


 弾道に冷たい空気をともないながら、銃弾がスズノの顔の横を駆け抜けた。

 弾丸がかすめたスズノの頬にうっすらと細く小さく霜が走る。


 スズノはそれにひるむことなく、逃げるモエギへと2発、3発と先ほどよりも小さい火炎弾を放つ。


 モエギはスライディングのモーションで、先ほどから凍りついたままになっているテーブルの陰へ滑り込みながら、ノールックで発砲する。


 スズノは姿勢を低くして銃弾を避けると、パペットを氷塊と化しているテーブルへと向けた。

 パペットの口から銃弾でも火炎弾でもなく、炎そのものがはき出される。

  

 悪夢のような火炎放射人形が繰り出す炎の舌が氷の表面を舐め、その奥に隠れているモエギをテーブルもろとも丸呑みのように燃やしつくそうとする。


 対抗するモエギは氷塊をスズノのほうへと体全体を使って押し出した。

 氷はその大きさにもかかわらずスムーズに床の上を滑っていく。

 

 スズノは火勢を弱めることなく、迫る氷塊に向けて炎を浴びせ続ける。

 その最中もこの機に乗じて仕掛けてくるであろうモエギの動向を見逃すまいとする。


 氷に隠れて接近してくるのか、それならば左に姿を現すか、右へと駆け出すか、それとも意表をつくカタチで上へと飛び出すか。

 熱が視界の先を揺らめかせる中、神経をとがらせていたスズノの耳は撃鉄を起こす音、それに続く拳銃の発射音をとらえていた。

 

 炎があげる轟音の中でたしかに聞こえたその音は一度かぎりではなく、短い時間のうちに連続で4回。

 だが、モエギの姿はおろか銃口すら氷塊の外には見受けられない。


 では『撃ち出された銃弾は?』というと、モエギは床の上を滑り行く氷塊へと銃弾を連続で撃ち込んでいた。

 それは氷塊の勢いを後押しするためではなく、氷塊を目くらまし兼、弾丸の通り道として利用するためだった。


 1発目の銃弾が氷塊に穴を穿うがち、貫通したトンネルをつくると連続で撃ち出された銃弾がそれに続いていく。

 

 ワンホールショット。まったくブレのない人間離れした精度、まさに神業かみわざというレベルで放たれた4発の弾丸はただ一直線にアイスロードを抜けただけではなく、周囲の氷を取り込んだ冷気のカタマリと化して、炎を裂くように突き進む。


 スズノの放つ火炎はそのままモエギの銃弾を飲み込んでいくと思われたが、火の勢いは誰の目にも分かるほどおとろえていく。

 モエギの神力が勝っているというよりは、スズノが龍星から奪った火の気力が弱くなっているのだ。


 それでも炎はひとつ、ふたつ、みっつと飛んでくる弾丸を自身の勢いと引き換えに消し去っていく。

 だが、4発目の銃弾を消すことはできなかった。


 もうパペットの口からは炎は出てこない。

 火炎を放出し続けたせいで、スズノの中には火の気が残っていなかった。


 スズノは空いている手を床につけると、妖力を使い、タイルを隆起させて即席の盾とする。

 冷気の弾丸がそこにぶつかり、青い火花をあげた。

  

 モエギはそのかんに、弾を撃ち尽くしたリボルバーの弾倉を引き出して、中に残っていた薬莢を下へと落としていく。

 空薬莢が床を跳ね転がるのには目もくれず、素早い動作でベルトから新たな銃弾を装填し、手首のスナップだけで元のポジションへ戻すとシリンダーを左腕に沿って滑らせ、すぐさま次の射撃に移れるように身構える。



 一連の息もつかせぬ攻防に、皆が言葉を失っている中、陽樹はなにかを思いついたようで、

「リュウちゃん、炎天えんてんの勾玉を出せる?」

 龍星にそっと声をかけた。


「出せるけど、なにをする気だ?」

氷天ひょうてんに神力を注ぎ込んだのと同じやり方で、リュウちゃんを回復することができるかもしれない」


「なるほど」

「ソラちゃんもチカラを貸してくれる?」

「いいわよ」


 陽樹と空子は龍星が差し出した炎天の勾玉へと手を重ねる。

 炎天がほのかに熱を発し、それは手のひらを通して龍星の体内に活力を流し込んでいく。


「すまない、ふたりとも」

 龍星は弱々しい笑みを浮かべながら、

「……すっごくどうでもいい話になるんだが『っぽい?』がついてたのを含めて当たってたな、あの占い」

 陽樹に言った。


「なんの話?」

 事情が飲み込めない空子が龍星と陽樹の顔を見ながら尋ねる。


 陽樹が占いカプセルの結果にまつわる話を聞かせると、

「軽口を言うくらいの元気は出てきたみたいね」

「ふたりのおかげでね」


「そうだ、あの妖怪猫にちょっとした仕返しを考えついたんだけど……」

 と、陽樹は龍星に小声で耳打ちする。


「その案乗った」

 龍星の顔にようやく明るい表情が戻ってくる。


「シズカさんにも手伝ってほしい」

 陽樹はシズカにも声をかけ、3人でなにやらこそこそと企みごとを始める。


「かしこまりました。スズノちゃんにはバレないように事を進めましょう」

 シズカが了承し、3人はある仕掛けにとりかかった。

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