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ふく×ふく2 決闘の舞台はあなたのおそば  作者: こっとんこーぼー(琴音工房)


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34/40

34、この武器カワイイねこの武器

「ふふっ、決まった」

 いかにもご満悦といった様子のモエギを見て、


「……鶴さん亀さんに聞いておきたいのだけど、戦ってるときの姫様ってわりとこんな感じなの?」

 空子が疑問を投げかけ、


「わりとこんな感じだね」

「だな」

 ふたりは簡潔に答える。


「ハタオリノモエギヒメ……?」

「聞いたことがあるような、ないような……」

「それは委員長とのレポートになんども名前が出てくるから」

「主任さまとあちらの鶴来どのもなんどか口にしている萌木もえぎ神社に奉られている神様の名前ですな」

「ああ、清長姫キヨナガヒメをはじめ妖怪を退治したっていう服の神様? って、あの神様ってこんな小さな子だったの!?」


 女子たちの感想に、

「小さいは余計じゃ。じゃがチカラを失っているこの身ではいささか信じがたいのも無理はない。というわけで、かつてのわしの輝かしい姿を描いたものを見て、そのゴージャスさ、美麗さに思いをせ、そしてたっとび敬うがよい」

 と言うがはやいか、どこからともなく大きな白布を取り出して宙へと放る。


 白い布は宙に浮かぶ1枚のスクリーンと化し、カラフルな絵を映しだした。

 

 それは優しさと力強さを感じさせる表情、柔らかく波打つ髪を持つ若い娘がアニメやゲームに出てくるような華美な装飾を身に着けたトレーディングカード風のイラストで、かつてモエギが龍星や陽樹に在りし日の天女姿といって出してきたものだった。


 大きな布に映し出された絵は宗教画とはおもむきが違うとはいえ、見る者の目と心を引きつける鮮烈な印象を持っていた。


 とはいえ、それに対する感想は――、

「いやこれは……いくらなんでも……」

「たしかに面影はあるけれど……」

 泉と市子はスクリーンと実際のモエギを見比べて戸惑いを隠せずになんともいえない表情を浮かべる。

 琥珀と瑠璃も同じような反応だった。


「やっぱりああいうリアクションになるんだね」

「俺らもべつに間違ってなかったってことだな」

 陽樹と龍星は納得の表情を浮かべる。


 ただひとり和子だけは反応が違い、

「あ、これ。わたしが神社に奉納したものですなあ。となると、やはりモエギヒメ本人というのは疑いようもないかと」

「おお、あの神絵師はそなたであったか。これまた不思議な巡り合わせよのう」


「世間ってせまいね」

「だな」

 陽樹と龍星が感想をのべる。


 女子たちのほうは、

「こうなってくると、やっぱり福の神さまと縁がないのは瑠璃先輩だけですね」

「厄払いも兼ねて、このさい入信なさっては」

「もう遅いですわよ」


「さて積もる話は後回しとして、福魔ふくまとやらの着想は大目に見たとしても、フクマを解き放ったことや女子おなご妖怪司アヤカシにしたこと、そしてリュウセイへの仕打ち、これらを看過するわけにはいかぬ。それ相応の罰は受けてもらうぞ」

 白布を片付け、モエギが改めてスズノへと向き直る。


「ふふーん、刀気も充分でない姫ちゃまが、ダーリンとの愛でうるおいツヤツヤのボクに勝てるのかニャ?」

 どこか余裕じみた態度で答えるスズノに、

「わかっておらぬようじゃな。お主が整えた『絶好調』の布陣の中では、わしも絶好調になることを」

 モエギは自信ありげに言いかえし、


「シズカ、リュウセイたちを頼んだぞ」

「お任せを」

 シズカに龍星たちの保護を命じて、前へと進み出る。


「やれやれ。ちょっと派手に立ち回るかもしれないから、みんなが巻き添えを食らわないようにしてあげるね」 

 スズノが指を鳴らして、女子たちの前にアメでつくられたような透明の壁をつくりだす。


「でも困ったにゃ。刀気を使いこなせないのはともかくとしても、姫ちゃまに対抗するのに絵になる&華になるようなボクに似合う武器を思いつかないにゃ」

 スズノの愚痴めいた口調に、


「おや、そんなことはないと思いますが。なんといってもメイド服はどんな武器とも相性のいいオールラウンダーの代表格なのですから」

 と応じた和子の言葉に、みんなの表情が(なに言ってるの、この子)となる中、


 陽樹だけは、

「たしかにメイド服はどんな武器を持っても絵になるね。あとセーラー服も」

 と違った反応を見せる。


 彼の言葉に、こんどは和子以外の面々が(おまえは何を言ってるんだ)という表情になるが、

「おー、分かっていただけますか。いやあ、どれみどののご友人は案外話の分かる御仁ごじんですなあ」

 和子はしたり顔でうなずく。


「……どういうことなの?」

 空子が困惑とも呆れ顔とも取れる表情で呟く。


「つまりですな、たとえばメイドさんに日本刀、メイドさんにピストルといったふうに、メイド服は古今東西さまざまな武器を手にしても違和感がないのでござるよ。セーラー服も同様ですな。ただ不思議なことに、これがブレザーとなると異論がでてきてしまうのでござるが」

「たしかに。ブレザーはなんか違う気がするね」

 謎の意気投合っぷりを見せる和子と陽樹だが、


 他の面々は、

「なにを言ってるのかがよく分かりませんわ……」

「いや、なんとなくは分かるんけど鵜呑みにしていいんかどうか」

「でも、姫堂先輩がキャンディ棒みたいなのを振り回してたのは違和感がありませんでしたよ」

「和子先輩もメイド服は戦闘服って言ってたしね」


「なるほどのぅ。面白い考え方もあるもんじゃな」

「ボクとしてはボクに見合ったカワイイ武器しか認めたくないけどね」


 さまざまな反応に空子は顔をしかめながら、

「鶴さんは亀さんの言ってること分かるの?」

 説明を求めるように龍星へ問う。


「ここで俺に話を振られても困るんだが……メイド服はともかくセーラー服に武器が似合うというのはなんとなく分かる」

「……続けて」


「いや……その、セーラー服を着た女の子がカタナ振り回したり、ピストル撃つシーンを見て視聴を決めた洋画があるんで、セーラー服と武器の組み合わせにはグローバルな訴求力というかワールドワイドで一定の需要があるんだと思う」

 龍星の答えに、


「おや、その映画には心当たりがありますな。とりあえず印象的なセリフやシーンをおうかがいしても?」

 和子が反応する。


「ネタバレにならない範囲でなら『それと最後にもうひとつ』ってセリフがあって、少しネタバレになるけど『エンディングはお前が歌うんかい』って感想になるヤツ」

 龍星が答えると、


「こちらが思い浮かべたのと同じ映画ですな。個人的には吹き替えは良かったんですが全体的な造りがちょっと……。まあそれはともかく、メイド服にあらゆる武器が似合うというのと同様にセーラー服にもあらゆる武器が似合うという感覚はグローバルスタンダードかもしれませんなあ」


 和子はそのまま続けて、

「そういえばその映画は黒セーラーでしたな。ふむ、となると白セーラー、黒セーラーともに武器と相性がいいと考えても……これはレポートというか1冊の本としてまとめるべきかもしれませんなあ」


「そうやってまとまった分類とか考察の本があったら読んでみたいかも」

「武器を持ってる女の子を描いておけば普通に売れる気がするな」

 陽樹と龍星が応じる。 


 脱線していくやり取りに、空子は完全に呆れた表情になって、

「ねえ、念のために聞いておきたいんだけど、その頭のよろしくない……は言い過ぎだから言い直して、そのどうしようもない考えって感染力高かったりする? 伝染うつるようだったら、ふたりとは距離を置こうかと思うんだけど」

 龍星と陽樹に向けて冷たく言い放つ。


「あいかわらず委員長はリュウセイとハルキに手厳しいのう」

「委員長って意外と毒舌というか辛辣……」

「思ったより強烈な毒吐くよね。学校じゃまず見られない側面だから、ある意味新鮮というか一定の需要がありそう」

「需要はないんじゃないかな……」


「そもそもなんの話をしていたのでしたっけ?」

「主任さんに似合う可愛い武器の話」

「そうでしたわね。だいぶ脱線したみたいですけれども」

「というか、武器で可愛いというのがまずありえないのでは……」

 女子たちの視線がスズノへと向かう。

 

 スズノは皆の注目を受けながら、 

「実はこれまでの話をヒントに、姫ちゃまとやり合うのにふさわしい武器、というか、可愛いボクにふさわしい可愛い武器を思いついたにゃ」

 と言って、右手にフッと息を吹きかけると、そこにデフォルメ調にスズノ自身を模したハンドパペットが現れる。


 リアルなドール調ではなく、赤いメッシュの入った灰色の髪に猫耳、猫目をしたどことなくとぼけた表情の笑顔にフリル増しの白エプロンにひざ丈の黒いドレスと、可愛らしさに全振りしたぬいぐるみを思わせる二頭身半のパペットだった。


「人形?」

「あれが武器?」

「今までの話に人形なんて出てないよ?」 

「どういうことなの?」

 さすがに空子のみならず女子たちも困惑を口にする。


 スズノはパペットを器用に操って、周囲にぺこりとおじぎさせてからパペットの手を拍手のように打ち合わせた。

 そしてパペットが2,3回ほど口をパクパクさせると、その口の中からニュルリと銃口が姿をのぞかせ、続いて短い銃身が現れる。


「いやあ、話を聞いているうちに気付いたんだけど、可愛いボクに似合う可愛い武器ってなんだろうって考えていたら、ボクの武器はそれこそ『可愛さ』なんだよね。そう考えると可愛いボクに似合う武器は可愛いボクってことになるんだにゃあ」


「なにを言ってるのかがよく分かりませんわ……」

「いや、理屈はなんとなくは分かるんけど……」

「あれだと人形というよりは、人形に見せかけた銃なんじゃ……」

「暗殺者っぽくてよいですな」

「猫耳でメイドで妖怪で暗殺者で……えっとなんだっけ、そうだ、オトコのってのは設定として過積載なのでは」

「本人が良ければそれでいいんじゃないかな」

 

 女子たちの困惑をよそに、

「武器が決まったようじゃが、決闘開始の合図はどうする? 西部劇よろしく背中合わせから3歩進んで撃ち合いか? それとも投げたコインが地面に落ちるのを合図にするのか?」

 モエギはポンチョの片側を後ろへとはね上げ、いつでも銃を抜ける態勢を取る。


「そうだにゃあ……」

 スズノはパペットといっしょに考え込むようなポーズを少し見せたあと、


「ボクの不意打ち先取点でスタートと同時に終わりでいいんじゃないかにゃ!!」

 すばやくパペットに仕掛けられた銃口をモエギへと向ける。


 口火を切るがごとく、パペットが文字通り火を噴いた。

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