第二話 ほかのひととはちがうみたい
王国から逃げてきた龍族の少女ルヴィ セシリア
命からがら森に飛び込み、飢えに苦しみながら食料を探した。するとトラップに引っかかり、横にあった小屋から人間が出てきた。人間はすぐにトラップから切り離し家に連れて帰った。ご飯をあげた後、痛々しい傷が目に入り、医療箱を取り出し治療をしようとした.......
「..............え?」
たしかに他とはなんだか違う人間だと思っていたが、ここまでちがうとは思っていなかった。こんなにも親切な人間もいるのか。そう思った。
「.........けが、なおしてくれるの?」
「ああ。そのままだと痛いだろ。」
心が温かくなった。奴隷として扱われた上仲間はいない。毎日同じことの繰り返し。何年も孤独だった。月日が流れていくうちに、ルヴィは何か大切なものを忘れていってしまった。心は黒い霧で覆われ目には光が宿っていない。そんな中、霧がかった空に一本の光が差した。そんな気がした。
「......るびはりゅーぞく......なんでるびにやさしくするの......?」
「......かわいそうだったからかな。」
「.........それだけ......?」
「ああ。ほかに何か理由がいるか?」
霧に差し込む光はやがてルヴィを照らした。あたたかい。こんな感覚いつぶりだろうか。この光は絶対に逃してはいけない。そんな気がした。
「ほら、こっちにおいで。少し染みるが今だけだ。」
「.......いたい」
「我慢してくれ、僕は医者や僧侶じゃないんだ。」
「..................」
治療が終わった。また包帯が巻かれた。そして楓は立ち上がり、どこかに行こうとしてしまった。また孤独になってしまう。いやだ。そう思った時にはもう体は動いていた。ルヴィの尻尾が楓の足首にまかれた。
「.........ど、どうしたんだ?まだどこか痛むか?」
「.........やだ、いっしょにいて。ひとりは.........やだから」
「いや、やらないといけないことがあってだな......」
「やだ。.........いっしょにいる。」
この人間とは絶対に離れてはいけない。そんな気がした。種族の壁を越えた信頼の芽が、今芽生えたようだった。楓がからだをゆすっても尻尾は依然として巻き付いたままだ。龍族特有の鱗が足に引っかかり、はなさないといわんばかりだった。
「ルヴィ。僕は明日も仕事で王国までいかないといけないんだ、だから寝かせてくれるか?」
「.........!?」
「.........だめ...いっちゃだめ......だめ...だめ...だめ...」
ルヴィがどれだけ苦しい思いをしたのか。見当もつかないが、楓はそれをできるだけ理解しようとした。ふとルヴィの顔を見ると、目に涙を浮かべていた。はじめてルヴィが信頼した人間。永遠とも思えた苦痛に手を差し伸べてくれた張本人。そんな人が離れるのにルヴィは耐えられなかった。
ルヴィはすがるように言った。
「......かえで...いかないで.........ひとりにしないで」
「...............おねがい...かえで......」
楓は大きく息を吐き、歩き出した。
「.........かえで?」
「はやくきなさい」
「.........!!!」
楓の手にはルヴィの手が握られていた。初めて人間に認められた。ルヴィの心に幸せの色をした薄ピンク色の花が咲いた。その花は光に照らされ、より一層綺麗に咲き誇っていた。永遠の苦しみから解放され、感じた幸せ。この気持ちは一生忘れない。ルヴィはそう心に誓った。そのまま楓に連れられ歩いていると、薄暗い空間にやってきた。大きな物の横には小さく輝くライトがあった。
「ルヴィ。寝るぞ。」
そう言って布団にもぐり、寝ようとすると違和感を覚えた。何かが布団に入ってくる。布団をめくり中を見ると、ルヴィが潜り込んできていた。
「...なにしてんだ?」
「.........?」
ルヴィはきょとんとしていた。横に二人分の布団が用意されているのに、なんで入ってくるのか。楓にはわからなかった。楓は2枚の布団を行き来した。
「.........」
(わしゃ、わしゃ)
「................」
(ずん、ずん)
「........................」
(てく、てく)
「だああもう!なんでついてくるんだ!布団は2枚あるだろう!」
「...............?」
「はぁ......もういい。勝手にしてくれ...」
「...............♪」
楓はあきらめたかのように布団に横たわり、ルヴィに背を向け夢の世界に吸い込まれていった。夢の中では背中に何かを背負っている感覚がした。そのまま知らない道を走る。大きな城が見えた。見慣れた城だが、何か変な感じがした。そんなことを考えながら歩いていたが、今度は背中が痛んだ。どしどしとたたかれるような感覚。
「.........かえで。おきて。」
「.........おまえか、、」
見ていた夢の中で、なぜ背中が重かったのか。なぜたたかれている感覚がしたのかという疑問はすぐに晴れた。
「かえで。おなかすいた」
「......なんか人が変わったみたいな、」
「...まあいい。作ってくるよ。」
「......るびもいく」
まだ寝ていたいという気持ちを振り切り、ずっと後ろをついてくるルヴィを気にしながらそそくさとキッチンへと足を進めた。




