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Best Friend

作者: 神崎羚

嫌いだった、はずなのに―――



これは、私がある中学校で出会った、一人の女の子のお話。


「優美―!一緒に帰ろう!」

その声に振り向くと、やはりあの子がいた。

隣のクラスの山畑みずき。

髪は短く、肌は少し黒い。

ボーイッシュという言葉が一番合うその子は、笑顔で私に駆け寄ってきた。

「――みずき…」

私は彼女のことが嫌いだった。


私がみずきに出会ったのは一年前。父の転勤でこの学校に転校してきたのがきっかけだった。転校したてで友達もいなく、周りから孤立しかけていた時に声をかけてくれたのがみずきだった。

「菊池さん、はじめまして!私、山畑みずきっていうの。よろしくね!」

うれしかった。新しい学校で不安だらけの私に、親切にいろんなことを手取り足取り教えてくれたから。私はみずきと一緒に過ごす時が多くなった。

でも、そのうちにみずきは何かにつけても私にくっついてくるようになった。

私はあまり人付き合いが激しい人ではないから、実際に前の学校でも友達はそこまで多くはなかった。

そんな私からすれば、みずきはうっとうしい存在、だったのだ。


みずきを本当に憎く感じたのは、秋の宿泊学習。

宿泊の班決めのとき、私は初めて隣の席の子から声をかけられた。

「えっと、菊池さん…だよね?私の班一人足りないからさ、一緒に組まない?」

みずき以外の子から声をかけられたのが嬉しくて、私はすぐにうなずいた。

単なる数合わせだっていうのは分かっていたけれど、それだけでも私の存在をみんなに認められたと、そう感じたから。

小学校の修学旅行のときみたいに、女の子たちと夜中まで仲良くおしゃべりができると思うと、顔がほころんだ。

でも、それもつかの間のことにすぎなくて。

「優美―うちら一斑だって!相澤さんと池田さんと、4人になったよ」

みずきは勝手に私を自分の班の一員にしたのだ。

その瞬間、私の夢はガラガラと音を立てて崩れていった。


当日はあいにくの雨。秋雨にしては梅雨みたいにじめじめとしていて気持ち悪い。

宿泊は本当につまらなかった。

おまけに誘ってくれた子達には『裏切り者』と言われる羽目に。

みずきに何もかも壊された――そんな気がした。

宿泊学習のあと、不登校に何度もなろうとした。でも、しなかった。

出来なかった、のかもしれない。

家族に自分のこんな姿を知られたくなかったから。

逃げているみたいでいやだったから。

でも、そんな事思っていたって、結局みずきという存在から逃げていたんだ。


そんな私に、ある日思いがけない知らせが届いた。

それは、2度目の父の転勤だった。


「今年転校したばっかりだし、来年は受験もあるから今優美を転校させるのはかわいそうじゃない?」

母はそう言って、父の単身赴任を提案した。

しかしその時、私は思ってもいない事を口にした。

「転校だったらもう2回目だし大丈夫だよ!それに、お父さんと離れるのはいやだな…」

両親からすればなんて親孝行な娘、と言ったところだろうが、私はそれを『逃げ道』に利用したのだった。

そうして私の転校は決まった。


そして、転校当日。その日の朝は、雲ひとつないきれいな秋空が広がっていた。

私は、もうみずきに会わなくていいという嬉しさと、新しい学校への期待で胸をふくらませていた。最後に散歩でもと思い家の門に手をかけたとき、郵便受けに一通の手紙が入っているのに気がついた。

それは、みずきからだった。

住所が書かれていないところを見ると、大方昨日の夜こっそり家まで来て入れていったのだろう。便箋を開くと、みずきのお世辞にもきれいとは言えない字が並んでいた。


優美へ

今日でお別れだね。優美と過ごした一年は本当に幸せだった。実は私、友達がいなくて学校つまんなくて不登校になってたんだ。でも2学期の始業式に久しぶりに学校に行った時優美が転校してきた。優美を一目見て、この子なら私を受け入れてくれるかもしれないって思った。そんな私の勝手な思いで今まで振り回してきて、ごめんなさい。

でも、優美のおかげで私は学校に行けるようになったし、毎日が楽しく感じられるようになった。本当に感謝してる。ありがとう。

みずきより


ぽつり。

雨は降っていないはずなのに、手紙に一つ、二つと水皺が出来ていた。

どうして?

あんなに嫌いだったみずきからの手紙で、こんなにも涙があふれるなんて。

こんなにも胸が苦しくなるなんて。

そして脳裏に蘇る、自分に向けられた笑顔。

私のなかで、何かが弾けた。


フライトの時間の都合上、みずきにさよならの一言も言えずに、私は離陸直前の飛行機の客席に座っていた。

それまでずっと服のポケットにしまっていた封筒をもう一度取り出す。

その中には、先ほどの手紙と、あともう一つ、あるものが入っていた。

黄色い福寿草を押し花に仕立てた、小さなしおり。

祖母の家で咲いているのを何度か目にしていたのだからだろうか、ふっと花の名前が出てきた。だがこの花をどんな意味をこめて選んだのか、私には分からない。


≪まもなく離陸致します。座席ベルトをもう一度お確かめ下さい…≫

機内アナウンスがかかり、乗客は離陸の準備をし始める。

私は目を閉じ、心の中でそっとつぶやいた。

「元気でね」―――自分の中のみずきの笑顔に微笑み返しながら。


こんな駄話を読んでくださって本当にありがとうございます!


もっとクオリティー上げていい小説書けるように頑張ります。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 題材はいいと思います。 [気になる点] 話の展開が速すぎて読者がついていけないような気がします。もう少しペースダウンしたほうが読みやすく深みのある作品になる気がします。 [一言] 温かい気…
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