35.タコ退治
僕たちは船に乗って大王ダコの出る海域に向かっていた。
みんな初めての船に大興奮だ。船から落ちそうな勢いで身を乗り出している。
オリバーさんのファミリアのナナが船から海の上に旋回すると、クロとミミもそれに続いた。
「ねえ、ミミちゃんあんなに飛べたっけ?」
ローガンさんが不思議そうに聞く。
「ああ、進化したんです」
「進化!?何それ、どういう事!?」
グローリアの皆は固まった。呆然とミミを見つめている。
「簡単に言うと、突然変異したんです。かなり高く飛べるようになりましたし、魔法もかなり強くなりました」
ミミは得意げに空を旋回して戻ってきた。
チャドさんがミミを色々な角度から見て確かめていた。
「お前も進化できないのか?」
ルーカスさんがクロに聞くとクロが困っていた。仕方なしに何かきっかけが必要なのだと説明してやる。
みんなファミリアを進化させたいようだ。僕は今のシュガーで満足している。精霊だから多分しないし、進化。
船でしばらく進むと、大王ダコが出没するという海域についた。
空組は危ないので船に戻ってもらう。
僕達は緊張しながら大王ダコとの戦い方を話し合う。
「いいかみんな、タコの締め方は目と目の間を一突きだ。そうすれば美味しいタコになる」
僕が真剣に言うと、何人かの噴き出す音が聞こえた。
冗談ではなく、海鮮は締め方で味が変わるんだ。ここは譲れない。
「りょーかい!ここはレイン料理長に従いますよ」
ローガンさんが笑いながら言ってくれた。
「眉間を突くのはいいが、先に足をなんとかしないとどうしようも無いぞ」
「足はなるべく氷魔法でお願いします。身が締まるので」
僕が返すとオリバーさんが、そういう話じゃねんだよと笑っていた。
氷魔法と聞いてキャロットがやる気になっている。豹ってタコ食べられるかな?
そんな話をしているうちに船が大王ダコに襲われる。
初めは海面から足だけが出て船を海に引きずり込もうとしていた。
魔法使い組が足を魔法で凍らせる。図らずも氷魔法作戦は有効だったようで、自由に足を使えなくなった大王ダコは焦れて海面から顔を出した。
そこを大剣使いのルーカスさんがタコの足を伝って頭の方まで駆けて行く。そして眉間を思いっきり突き刺した。
大王ダコは少し暴れたが、すぐに動かなくなった。
「うわー、目の間が弱点ってマジだったんだ……前回より圧倒的に簡単に倒せたよ」
出番のなかったローガンさんが目を丸くしている。前回は結構な死闘だったらしい。足から一本ずつ切り離していったそうだ。
「本当に君ら呼んで良かったよ。魔法使い多いと楽だなー」
ジミーさんも楽しそうに笑っていた。
「それより早く回収しましょう!」
僕たちは大王ダコを回収すると、鮮度を保つため氷魔法で全体を覆った。
「すごいな、こんな完全な状態の大王ダコなんて中々見られないぞ」
「絶対どうやって倒したのか聞かれるな」
確かに眉間以外に傷らしい傷のない状態だ。だってルーカスさん以外の剣士は何もしてないからな。タコ足が凍らされるのを見てただけだ。
傷をつけすぎるとストレスで身が固くなるかもしれないから、傷が少ないのは良いことである、多分。
僕たちが船から降りると、港はお祭り騒ぎになった。ほとんど完全な状態のまま凍らされている大王ダコを見て、まるで美術館の彫像を見た時にように感嘆の声をあげていた。漁師たちはやっと漁に出られると嬉しそうだ。
結局、足を1本だけ貰って後は売ることになった。流石に全部は食べれらないからね。1本だけでもものすごいボリュームである。
さすが大王と名がつくだけある。
お前は美味しいたこ焼きになるんだぞ。
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