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3.精霊とは

今日は驚きの連続だった。そのうえ昨日は緊張して眠れなかったから、早めに休むことにした。

 シュガーのために籠にブランケットを敷き詰めたベッドをつくり、自分のベッドの端に置く。シュガーは魔法で浮遊してベッドの上に乗り上げると、籠の中を確かめた。 

「うん、ふわふわでなかなかいい感じだわ!」

 シュガーはブランケットの中に潜り込んだ。僕は眠かったけど、シュガーを見ていたら聞きたいことが溢れ出てしまい、結局明かりを消さないままシュガーのそばに横になった。

「ねえシュガー、精霊って寝るの?」

「寝なくてもいいけど寝ることもできるわ。寝るのを趣味にしてる奇特な精霊も居るくらいよ」

 精霊も色々らしい。僕は今日気になったことを聞いてみることにした。

「シュガーは僕の好きそうな姿になったって言ってたよね。僕の記憶を見られるの?」

 シュガーに問うと、シュガーは少し気まずそうな顔をして言った。

「全部見れるわけじゃないの!記憶を覗くのって大変だから、あんたが可愛いと思うものの記憶だけ見せてもらって、私が一番気に入ったやつの姿をもらったのよ」

 シュガーは怒られると思ったのか段々と声が小さくなっていって、しまいには俯いてしまった。

「怒ってないよ、シュガーは僕の相棒なんだから信用してる」

 そう言ってシュガーの頭を撫でると途端にホッとしたような顔をした。口調は偉そうだけどやはりシュガーはいい子だと思う。僕の手に顔をすり寄せてくるシュガーが可愛くて、しばらく撫で回してしまった。

 

「シュガーは僕が前世の記憶を持っているって知ってるんだよね?」

 僕はそのことを誰にも話したことはない、親友にも両親にも。お陰で両親からの僕の評価は天才児だ。貴族である父が妾である母の元に頻繁に顔を出すのも、僕の将来を楽しみにしているからだ。お陰で平民でありながら貴族と同等の教育を受けられている。

「当たり前よ。むしろだからこそ、精霊であるあたしがファミリアになることを女神に許されたんだから」

 どういう事だろう。転生者を監視でもしているのだろうか。

 

「要するに、精霊ってデバッガーなのよ、レインはバグね」

 あんまりな言いようにしばらく絶句してしまった。まあ、前世の記憶が有る時点で普通じゃないのは分かる。しかし精霊を付けなければならないほどの異常だったのだろうか。

「精霊は世界のあらゆる不具合を修正する役割を、女神に与えられてるの。本当なら、レインの魂を治療するのに姿を現す必要は無いんだけど、女神様が精霊の気分転換に要治療者のファミリアになることを許してくださったのよ」

 精霊は思っていたより重要な存在のようだ。そして僕は要治療者らしい、僕は大丈夫なのだろうか。

「まあ、レインのバグは今世の寿命なんかに影響するものでは無いから、怖がらなくても大丈夫よ。死後来世に行く時に、今度こそ記憶がちゃんと消えるようにサポートするだけだから、今世にはなんの影響もないわ」

 

 今世に影響がないのなら、シュガーが僕のファミリアになる必要があったのだろうか。

「言ったでしょ、気分転換だって。精霊って同種以外の誰にも認識されずにバグ取りするだけだから、ストレスたまるのよ。だから皆ファミリアになって遊びたいわけ。魂に不具合がある子を見つけたら、争奪戦になるのよ」

 ファミリアは思ったより人気職らしい。シュガーは三歳の頃から僕に目をつけていたと言っていた。シュガーがファミリアになってくれたから、この前世の記憶もそう悪いものでは無いように思える。でもそうか、きっとシュガーは……

「寂しかったんだね」

 シュガーは大きな目を更にまん丸にしてこちらを見た。そして瞳をうるませ、堪えるような顔をして言った。

「そうね、寂しかったの」

「僕もずっと寂しかった、両親がいて親友がいても、前世の記憶のせいで、誰とも分かり合えない気がしてたんだ」

 シュガーは心配そうな顔をして僕に近づくと、大丈夫だと笑った。

「あたしがずっとそばに居るわ、他の人に話せない前世の話もあたしが聞いてあげる。その代わり、レインもあたしのそばに居てね」

「もちろん!シュガーは僕の無二の相棒なんだから!……ありがとう、シュガー」

 

 それから僕たちは色んなことを話した、疲れ切っていたはずなのに、口が止まらなかった。明日は朝からアイヴァンと冒険者ギルドに行って、初の討伐依頼を受ける約束をしていたのに。きっと明日も寝不足だ。

 僕はいつの間にか寝入っていたらしい。朝になると部屋の明かりは消されていて、かけたはずのない布団が体にかかっていた。きっとシュガーがやってくれたんだろう。

 目覚ましも、いつもは母の声なのに、今日はシュガーの声だった。


 ファミリア召喚から色々なことがありすぎて、不安を感じていたけれど、これからはこれが日常だ。

 こんな日常も悪くないと、確かにそう思った。

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