希という少女
以前掲載した短編を再編集しております
宇佐美希は生まれてから男性に困ったことはなかった。
幼稚園では年少の頃から、上の子や同い年の園児も先生も「美少女」と褒めたたえてくれた。自分が可愛いとわかっているから、少しあざといくらいのアピールもする。
皆メロメロになり、男子からの告白ラッシュは幼稚園~中学生まで途絶えることがなかった。
しかし、ハザマ学園に入学するとそれは変わった。魔法少女になってしまったがために、生徒からは一目おかれることはあるがモテなくなった。
皆、魔法少女のことは公言できないように謎の黒服集団から圧力をかけられているのだが、それが一番の原因だと希は考えていた。ヤクザの親戚の娘には手を出さない感覚に似ているのだろう。
「これ、持つよ」
男子生徒が希の荷物を持ってくれた時、
「ありがとう」
うさぎのような瞳で上目遣いをする。男は心を鷲掴みにされるのだが、
(でも、この子、魔法少女だからな)
と敬遠される。
「私はずっとモテないといけないの」
ある日、悔しくて自宅で地団駄を踏んでいると、たまたまそれを久しぶりに帰ってきた兄の宇野誠に見られた。親の離婚後、兄と妹で苗字は異なっていた。
「ぷっ」
誠はクスクスと笑った。兄も妹と同じように美形なのでモテる。希よりも異性関係が激しい。
「このー」
希はカプセルを嚥下した。魔法少女に変身できるカプセルだ。
「いけー」
彼女はネズミを召喚し、誠に突撃させた。
「ば、ばか。やめろ」
彼は逃げる。
「男とチューしたいからって、チューと鳴くネズミをだすんじゃなーーい」
誠は叫びながら家を出て行った。