第九号「決着」
今回で、あの幼馴染のストーリーにひとまず決着が付きます。
嘘じゃないです。
ですので、しっかりと二人のラブコメを見届けてください!
「あのさ、その、ありがと。私に最後まで付き合ってくれて」
「気にするな。俺も割と容赦のないことを言ったしな」
「確かに。遠慮のないっていう言葉は、まさにああいうことを説明するんでしょうね。でも、あのお陰で覚悟を決めることが出来たわ」
「そうか。そう言ってくれると助かる」
「私たち今まで関わりはなかったけど、案外合うのかもね」
まともに話したのは今日が初めてだが、確かに居心地は悪くない。
まさか今日、こんな出会いが生まれるとは想像もしていなかったな。
だが今、空崎遥が向き合うべきは他でもない小野友也だ。最後に俺に出来ることがあるとするならば、念押しをしておくことだけだろうな。
「しっかり向き合ってこいよ。お前の幼馴染みと」
「分かってる。もう逃げも隠れもせずに立ち向かってくるわ」
数十分前とはとても同一人物に思えないほどに、たくましくなったな。まったく、想いというものは恐ろしいと言わざるを得ないな。
「ほんと、ありがとね!」
「......あぁ」
高校に入ってから約一ヶ月。同級生では小野以外の人間とはほとんど話していないが、それは俺の無関心が引き起こしたものだ。実際、一人でいることに孤立を感じたりなんてことは一切なかった。
しかし、空崎遥と話したことで少し俺の意識が変わり始めたのかもしれない。
「他人と関わることも悪くはない、と」
「俺の心を読むな」
「そう言うな。今のは、君の表情がいつもより数段柔らかくなっていたのが原因だ。幸せをかみしめるなら、もう少し人目のないところでしたまえ」
「はぁ......。次から気を付ける」
「それにしてもお見事だな。十四時五十分、しっかりと空崎遥を広場まで送ってきてくれたね。まぁ、本当だったらもう少し早く完了していたはずなんだがね。あのメッセージには驚かされたね。広場のあたりからしばらく離れておいてくれ、だったかな。十四時過ぎに送られてきたけど、一体何が目的だったんだい」
「言わなくても、どうせ知っているんだろ」
「私は、君が空崎遥とフードコートでご飯を食べていたことしか知らないぞ」
「それが全てなんだよ。それで、何で不機嫌な顔つきをしているんだよ」
「さぁ。私が一生懸命働いている間、君はクラスメートの女子と仲良く食事をしていたことに不機嫌になったかもしれないな」
「どうせ部長も昼飯食べてるだろ」
「何だ、予想が付いていたのか」
大方、小野の相談に乗りながら昼飯を食べたんだろう。
それでも流石というべきか。今俺たちは、二人から見えない物陰で様子を窺っている。ここからは当然小野の様子も見えるが、小野の精神状態が不安定なようには見えない。
それはつまり、部長がうまく小野のケアをしていたということだろう。
「どうやら始まるぞ」
空崎遥が小野のもとに到着し、小野が覚悟を決めたよう表情で口を開いた。
「すまなかった! 嘘をついて」
「本当よ。その嘘のせいで、どれほど大変だったか」
「あれ、あんまり怒ってない?」
「怒ってるに決まってるでしょ! あんたのおかげで本当に大変だったんだから」
「悪い、悪かったって。だから蹴るのはやめてくれ!」
「まぁいいわ。それより、いい加減本当の理由を教えなさい。今日、私を誘った理由を」
「お、おう。お前を誘った理由な」
「何よ。まさかここにきて、まだ誤魔化し続ける気?」
「いや違う! 違うんだ、俺がお前を誘った理由は......」
「ちょっと、いい加減にしないとまた蹴るわよ」
「あぁ、分かってる。......なぁ、今から俺が言うこと、信じてくれるか?」
「私はあんたの幼馴染なのよ。チキンになったりはしても、ここで嘘をつくほどの人間だとは思ってないわよ」
「そうか、ありがとな」
すると彼は、片膝をつき小箱を彼女に向かい差し出した。
「これが俺の答えだ」
開かれた小箱に入っているのは、きらきらと輝いている花のキーホルダー。
「ちょ、ちょっとどういうことよ」
「これが俺の答えだ。今日、どうしてお前を誘ったのかの」
「本気なの?」
「もちろん。いつからか空崎遥が魅力あふれる女性だというふうに、そう感じていた。ただの幼馴染みとしては見れなくなっていた。そして今、俺はその想いを伝えるためにお前とこうして向き合っている」
「今日は最悪の一日だったわ。とにかくストレスが溜まったし、全然自分の感情をコントロール出来なかった」
「それは俺のせい、だな」
「えぇそうよ。でも、今日があったことで気付けたことがあったのよ。というより認めなければならなかった、という方が正しいわね。私はいつからか、あんたの一挙手一投足がずっと気になってたのよ。あんたのことが、頭から離れなくなってたのよ」
「それって」
彼女はこれまでよりも更に力強い瞳をして、口を開いた。
「私、空崎遥は、幼馴染みの小野友也に
そこで一度止まると、彼の目をしっかりと捉えて再び声を出した。
恋をしている」
「え」
「え、じゃないわよ! これが私の本心よ。」
彼はしばらく固まっていたが、やがて理解が追い付き彼女にイベリスのキーホルダーを贈った。
その直後、彼は片膝をついた状態から倒れてしまった。
「ちょっと、大丈夫!?」
「いや~、一気に気が抜けちまってな」
「は~。心配かけさせないでよね」
「悪い悪い」
彼女が彼を起こそうとしていると、赤い花びらが降ってきた。
二人はあっけにとられていたが、やがてお互いの顔を見て笑い出した。
今日を区切りに、二人は新たな物語を綴り始めるのであった。
「変なナレーションを入れるな」
「変とは失礼な。彼、彼女という表現をして客観的に見せる、そういった工夫をしているじゃないか」
「それが変なんだよ」
「感受性には個人差があるからな、君が文句を言おうと私のナレーションの魅力は変わらないよ」
「まぁいい。それにしても、あのキーホルダーといい、今の花びらといい全部部長の仕業なのか?」
「確かにプレゼントを渡すようには言ったが、何を贈るかは彼自身が決めたことだよ」
「なるほど。そこに関しては、小野の誠意が通じたということか」
「結局今回で言えば、ラブコメを生み出す主人公たちは小野友也と空崎遥の二人なわけだからな。さて、我々はここらでお暇するか」
ゴールデンウィーク最終日。
波乱もあったが結果的に丸く収まり幸せが生まれた、そんな一日だったな。
初めてSMITについての説明を聞いた時には疑惑しかなかったが、案外いいものなのかもとも思っている。
この部長も全力で挑んでいたし、少しは見方を変えてもいいのかな、と......。
「今何を送った?」
「ん? 新聞の構成、その最終案を送っただけだが」
すっかり忘れていた。
俺はSMITの一員であると同時に、新聞部の部員でもある。
そして、新聞を貼りだす日は明日。つまり、今日中に作業を完了させる必要がある。
「どうした、どこか気になるところがあったか?」
「俺は部長を甘く見ていたようだ」
「それは誉め言葉として受け取らせてもらうとしよう」
「あぁ、もうそれでいい」
高校に入ってから一ヶ月。
俺の高校生活の周りには青春というものが存在している。
ただ残念なことに、俺自身には青春が訪れないようだ。
「高校生、コワい......」
はい、無事一つの決着が付きましたね。
一度は終わる詐欺をしてしまったので、ほっとしています。
一応言っておきますが、この作品自体はまだまだ続きますからね! 勝手に終わりにしないでくださいね。
文化祭、あれも青春ですよね。と、分かりやすい伏線をはっておきます。
それではまた、次回お会いしましょう!




