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第六号「ラブコメ開幕」

お待たせしました。

いよいよラブコメが始まります。

期待に胸を膨らませご覧ください!

「眠い......」


「しゃっきとしないか、もう少しで二人のデートが始まるんだぞ」


「あと一時間経ったらな!」


「落ち着くんだ。いくら今は人がいないといっても、ここは駅の中にあるカフェなんだから」


 今日はゴールデンウィーク最終日の前日であり、小野と空崎遥のデート(仮)当日。

 二人は家が近いため、一緒にショッピングモールに来ることになっている。開店時間の午前十時三十分に合わせて来る予定だ。

 しかし今、ショッピングモールの最寄り駅内のカフェにある時計は九時三十分を示している。

 そう、一時間前なのだ。

 俺が起きたのは八時。学校がある日よりも一時間遅く起きる、本来であれば何ら無理もない起床時間だ。

 だがそこに無理を生じさせたのが、今俺の目の前に座って優雅に紅茶を飲んでいる、この部長だ。

 そしてそこに絡んできたのは、やはり新聞であった。


 ゴールデンウィーク二日前。気合と根性で何とか新聞を完成させ、数日間かなり無気力な状態でいた。

 ゴールデンウィークに入り何も気にすることなく燃え尽きていた中、俺のスマホにメッセージが届いた。送り主は部長。

 この時点で既に嫌な予感がしていたが、気付いたうえでスルーをしていたことがバレたらそれこそ厄介なことになりそうなので、大人しくメッセージを開いた。内容はこうだ。


 次の新聞の締め切りはゴールデンウィークが終わったその次の日だろ。

 だが我々はゴールデンウィーク中、改装作業があるため学校に入ることができない。

 となると、新聞作成もできなくなってしまう。

 そこで、部室にある新聞作成用のノートパソコンを教師の許可をもらって、君の家に送っておいた。

 うっかりゴールデンウィークに入る前に渡しておくことを忘れていたため、しょうがないことだ。

 そのパソコンの中には既にいくつか私のアイディアが入っているから、よく見て作成に取り掛かるように。


 こんなメッセージがポンポンと届いてきたのだ。まさかゴールデンウィーク中に冷や汗をかくとは思わなかった。

 というか絶対わざとだろ、休みに入ってから渡すのは。俺が全力で拒否することを予見したうえで、強硬策を取りやがった。

 なんて恨んでも、作業から逃げることなどできなかったわけでメッセージが届いた二、三時間後にはパソコンが届き、中にはご丁寧にアイディアが記録されていた。

 百歩譲ってこれがゴールデンウィークに入った直後なら、まだ許せた。

 だが、これらが送られてきたのはつい昨日。しかも午後三時。

 作業できる日は、送られてきた当日と最終日のみ。

 結局、昨日は冷や汗をかきまくった後、ひたすらに作成に打ち込んだ。

 加えて新聞作成以外にも俺にはやらなければならないことがあったため、徹夜ルートに突入した。


「部長、昨日はよくもやりやがったな......」


「過去は変えることができないんだから、そう過去についてうじうじ言うのはあまりお勧めしないぞ」


 いつもなら絶対に文句を言いまくるところだが、いかんせん眠い。

 あー、これはいよいよきたな。さすがに時間になれば起こしてくれるだろうし、ここらで睡眠をとらせてもおう。起こして、くれるよな......。



「やれやれ、デートが行われる当日だというのに本当に寝てしまうとは。だが、ずいぶんと新鮮なものだな。君の寝顔は」




「う~ん......」


「おっと。時間ピッタリのお目覚めだな」


「このまま寝たままでいるのは良くないって、俺の細胞が叫んでた気がしてな」


「そうか、それは悪い細胞だな」


「待て、それは何かしようとしてたってことか?」


「さぁ、どうだろうな」


 あぶね~。絶対何かを狙ってただろ。ありがとう俺の細胞、おかげで得体のしれない危険から救われたようだ。

 ていうか、寝起きすぎて視界がぼやけまくってる。うん、きっとそのせいだろ。でなきゃ、あんなことを思うはずがない。流石に黒歴史って言葉が似合いすぎて、もう思い返したくもない。絶対言わんからな。


「さてと、それじゃ行くとするか」


「それで、小野から何か送られてきたのか?」


「あぁ。ついさっき駅に到着してこれからショッピングモールに向かう、と」


「ってことは、今のところ問題はないってことだな」

 

「今の時刻は十時二十七分。今から向かえば、ちょうど我々が着くころには二人が入っていくのを見ることができるだろう」


「大事なのはそれから、か」


 軽く最終確認をしながら、歩くこと数分。

 部長の読み通り、二人が開店と同時に入店したところを少し後ろから確認することができた。

 そして、いよいよSMITの仕事の時間となった。


 最初は予定通り、二人が見て回っているのところはアクセサリー売り場。

 俺と部長は、その向かい側にある店から様子を見守っている。


「なぁ、なんとなくだが二人の距離、地味に遠くないか」


 同じ店に入ってはいるが、少し離れて行動しているというか。もちろん、それが合意あってのものであれば心配ないんだが。

 そんなことを考えていると、部長が口を開いた。


「しばらくは様子見だな」


「いつもより消極的な意見じゃないか?」


「それは私が普段、もっと強引な手段を取っていると言いたいのか」


「いや、別にそんなつもりはないが。それに、特に様子見することに異議はないし俺としても構わないが」


 小野と空崎遥の距離感、そして部長の態度にも何となく違和感はあるが、今のところ予定通り順調にきているし、良しとするか。

 続いて二人が向かったのは、服屋。

 ここで俺と部長は一度別れ、俺はイヤホンを片耳にはめスマホを通話状態にし、二人の様子を遠くから窺う。


「いや、さっきよりも距離が遠くなってないか?」


「そんなにか?」


「あぁ。二人の振る舞い方はいつもどおりっぽいが、何か気になる」


「今のところ、振る舞い方に変化はあまりなさそうなんだね?」


「普通に話しているみたいだし、特に変わったところはなさそうだぞ。けど、どこか二人に違和感があるっていうか。特に、空崎遥の方に」


「そうかそうか」



「おい、部長? 何かあったのか、急に話をやめて」


「小野友也と空崎遥の二人をよく見ていろ。もしかしたら、何かが起こるかもしれないぞ」


 この瞬間、俺は昨日に引き続き冷や汗をかいた。

 理由は単純。

 電話越しに伝わってきたからだ。

 部長がまた、小野が部室に入ってきた時と同じ笑みを浮かべていることが。



 



 


 




今回でようやくこの作品のラブコメを見せることができたと思っています。

次回も多分ちゃんとラブコメです。

それと、いよいよ投稿頻度が多少落ちます。ですが、何とか期間を空けすぎないよう努めます。

それではまた、次回お会いしましょう!


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