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第五号「ラブコメ下準備」

いよいよ、ラブコメへ本腰が入ってきます。

とくと、ラブコメ、その下ごしらえ編をご覧あれ!


 ゴールデンウィークまであと二日、新聞の締め切りまであと一日に迫った今日。

 放課後の新聞部の部室では、新聞作成をしている者は一人もおらず、ゴールデンウィーク中に行われる予定のデートについて、その説明会が行われている。

 説明をしているのは新聞部の部長にして、ラブコメを成就させる「SMIT」のリーダー。

 その説明を熱心に聞いているのは俺の、部長を除いたこの学校内での唯一の話し相手、小野友也である。

 そしてあらかじめしおりを読んでいた俺は、説明の最中は他のことはするなと言われていたため、新聞作成の絶望的な見通しに対して頭を悩まし、机に突っ伏していた。


 説明が始まってから十分ほどで、デート当日の大まかな流れの説明は終わった。

 しかし、その後が長い。当日の注意事項や質疑応答など進路の説明でもしてるのかよ、と突っ込みたくなるほどの細かい説明がなされた。

 結局、説明は十六時から十七時までの一時間、みっちり行われた。


 本来であればこの後は新聞に取り組むべきだ。だが、この後にはデートで使われるショッピングモール、そこの下見に行かなければならない。

 抵抗の一つでもしたいものだが、小野が部室から退出した直後に部長に腕を掴まれて部室から引っ張り出されたため、明日一日で新聞を完成させるという真っ暗な未来が確定したのである。


「ほら、着いたぞ」


「ここか」


「あぁ。ここで当日、一つのラブコメが成就するんだ。君ももう少しテンションを上げたらどうだ?」


「新聞作成にもっと余裕があれば、もう少しテンションは高かっただろうよ」


「いいかい。我々は新聞部とSMITの二刀流なんだ。二刀流では、どちらもおろそかにせず取り組むことが必要とされる。そして今、我々はSMITとしての役割を全うしなければならない。それを、新聞を言い訳にしておろそかにするのは実に嘆かわしいことなんだぞ」


 新聞をおろそかにしているのはどこのどいつだよ、と言ってやりたかったが、もう既にショッピングモールに足を踏み入れた以上、時すでに遅しということで一切の抵抗を諦めざるを得ないだろう。

 まさか、高校に入ってこんなにも自由が失われるとは思っていなかった......。


「さて、まずどこに行くか覚えているか?」


「確か、アクセサリー売り場、だったか」


「その通り。文句は色々言うが何だかんだちゃんとしているところは、君の好ましいところだな」


「はいはい、そりゃどうも」


「誉め言葉を素直に受け取ることができないのは、君の好ましくないところだな。まぁ、君に対する不満は今後言っていくことにして、ここで我々がすべきことは何だ?」


 喧嘩を売られてしかいないのは気のせいじゃないよな。

 だがこの辺りに長く留まるのはちょっとばかし、きついものがあるな。

 せっかく比較的近くて、アクセスもいいところが選ばれたんだ。家に早く帰りたいという気持ちもかなりあるし、やっぱりちゃちゃっと終わらせるのが一番か。


「向かい側の店からの監視、だな。割と距離があるが大丈夫か?」


「そのあたりは気にするな。あくまで当日、我々がすることは空崎遥に見つからないよう二人の様子を見守ることだ」


「なるほど。何か困ったことが起こらない限り、二人の自主的な行動が全てってわけか。


「あぁ。ラブコメで大事なのは、当人たちで紡いでいくということだと、私はそう思っているからな」


 今の台詞、ひょっとしてわざとか。いや、流石にそれは......。

 いかんいかん、部長の言動に気を取られるな。


「それで、この後は服屋だったな」


「そうだ。アクセサリー売り場から服屋までの距離はかなり短いため、我々は変わらず向かい側から見守る。ただし服屋から次の本屋に移動する際、我々は一度別行動をとることになる」


「それは、見つかるリスクを考えてのことか?」


「それも一つの理由だ。だが他に大切な理由がある」


「大切な?」


「では、ここで一つ質問だ。二人の行動予定に何らかの変更が生まれた場合、何が原因になりやすいと思う? ヒントはゴールデンウィークということだ」


 ゴールデンウィーク中に発生することが特徴ということか?

 行動予定に変更が生まれる場合、その原因として考えられることといえば、いづれかの店の休業、空崎遥の何らかの思いつき、小野のミス。

 だがそれらは考えればきりがないし、何よりゴールデンウィークということにほとんど関連がない。

 ゴールデンウィークといえば、休み、混雑......。マズイ、あまりにもゴールデンウィークからの発想が乏しい。その上、あまりにもありきたり。


 待てよ。今俺がいて、デート当日にも使われるここはショッピングモール。客層を絞ることは難しいが、まず間違いなく高校生もここに来るし混雑の一因でもある。


「なるほど。確かにゴールデンウィーク中、というより休日では避けがたいことであり避けたいことだな」


「どうやら、思いついたようだな」


「ゴールデンウィーク中のショッピングモールともなれば、近くに住んでいる高校生たちが押し寄せても何ら不思議はない。それはうちの高校に通う生徒たちも、変わらない。そして、押し寄せることはたとえデートが行われている日でも関係がない。すると、ある可能性が高まる。小野と空崎遥が、同じ学校に通う生徒、何ならクラスメートと偶然遭遇する可能性だ。もちろん、遭遇したところで何も起こらないことだってある。しかし、空崎遥については知らないが小野は顔が広いからな。話し込んだり、はたまた一緒に行動することにでもなれば、いよいよもたらされるは混乱だ。だからこそ、別行動をして周囲の状況を確認しておこうかってことか」


「お見事、大正解だ」


「ただ、そうなると一つ気になることがある。自分で言うのもなんだがクラスメートにすらあまり関心を抱いていない俺には、少し荷が重すぎるぞ」


「その通り。君には荷が重い。そこで役割分担をする。私がショッピングモール内を軽く見回り、君は二人の周囲をよく観察し、逐一私に知らせてくれ。既に連絡先は交換しているから、イヤホンを装着し常に通話状態にしてくれればそれでいい」


「なるほど。今ようやくイヤホン必須の意味が分かった。部長が広い範囲を見回り、俺が二人の周囲を監視し情報を部長に伝えることで、なるべくエンカウントを減らそうってわけか」


「君はこういうことへの頭の回転が、何故だか速いな」


 今のは絶対わざとだろ。


 こんな風に時々気になることを言われながらも、何とか無事に下見は終わり今日は解散となった。


「十八時過ぎか......」


 時間をかけて十分な下見はできたものの、それで新聞の作成状況が良くなる訳でもない。


「今日もこの後やんなきゃいけないことがあるってのに、明日は早起きして学校に行かねばならない。もう高校生活の春に青さは求めないから、せめて労働環境はホワイトにしてくれ......」



下ごしらえはいかがでしたでしょうか?

ちなみになんですが、この話数から再投稿ではなくなっています。

つまり、完全新作なわけです。

そのため、投稿頻度においては一日二作なんてことは出来なくなるのでその辺ご容赦を。

ただ、なるべく期間を開けすぎないよう努めます。努めたいです。

それではまた、次回お会いしましょう!

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