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第三号「ようこそSMITへ」

初見さん大歓迎です

なぜなら、ようやく今回からラブコメのラブパートが出現するからです。

この作品で初めて出てくるのでとくと目に焼き付けてください!


「小野!?」


 ガラッと開かれた扉から現れたのは、クラスメートとであり俺の席の隣でもある、小野友哉であった。

 コミュ力が高く、いつも明るい。その性格ゆに入学してからまだ一週間も経っていないが、クラス内のほとんどの人間と仲良くなっている。

 かくいう俺も、隣の席同士ということもありそれなりに仲良くさせてもらっている。

 ごめんなさい。彼は俺の唯一の話し相手です。それなりとか言って、見栄をはっていました。


 ん? お前とは正反対だなってか、やかましいわ。


 覚えたからな、今俺に失礼な考えを持った奴の顔と名前。


「お〜、新聞部に入ってたのか。お前がいるなら安心だわ!」


「さて、それでは始めようか」


 理解の追い付いていない俺を気にせず、話を進めながら椅子を移動させていく部長。


「ドアの鍵を締めて、この紙で目張りを頼むよ」


 一切説明はしないが命令はしてくるあたりこの部長の性格がよく出ているとしか思えないな。

 まぁ、この理不尽な状況でせっせと手を動かしている俺も俺なんだが。


 ドアの鍵は締まり目張りもされさらに窓からの光もカーテンによって遮られた結果、いよいよ部室内で何が起こっているのかは外から分からなくなった。

 今から何が起きるのかは皆目見当がつかないが、部長に促されるがままに部長が座っている隣の椅子に座る。


「彼女は、小さい頃からの幼馴染なんです」


 向かい側に座る小野の訳の分からない台詞をきっかけに、遂に何かが始まった。何かは分からんが。


「家が近いってことで家族ぐるみの関係だったんです。幼稚園、小学校、中学校と同じ学校に通って高校でも同じ学校になったんです。しかも同じクラスに!」


「なるほどなるほど。それで?」


「今までも同じクラスになったことはあったんですけど......」

 ちょ待てよ。


 思わず例の「待てよ」が出ちまったじゃねぇか。だがしょうがないじゃないか。

 どんな話が始まるのか、少しドキドキしながら耳を傾けていたんだが、小野が今話していることって......。


「今年はずば抜けて嬉しかったんです! 同じクラスになれたのが!」

「恋バナじゃねーーか!」


「まぁまぁ、少し落ち着きたまえ。後で説明するから」


 落ち着けるかい! 邪魔しないように大人しくしているつもりだったのに、思わず大声を出すぐらいには動揺してるわ。

 小野よ、お前は一体どうしてここに来た。ここは新聞部の部室。恋の話に花を咲かせる場所じゃないんだぞ......。


「すまなかったね。彼は今回が初めてなんだ」


「いや、大丈夫っす。俺も同じ体験をしたら、同じ反応をすると思いますし」


「そう言ってくれて助かるよ。さて、そろそろ聞いてもいいか? その幼馴染の名前を」


「はい。彼女の名前は......空崎遙っていいます」


 ん? そらさきはるか。 どっかで聞いたことのあるような......。


「なんだ、もしかして君は覚えていないのか? 空崎遙は君のクラスメート、君と同じ一年二組の生徒だぞ。ピンク、そしてツインテ。忘れるほうが難しいと思うが」


「い、いやちゃんと覚えてるぞ。自己紹介の時に聞いたし見た記憶もあるな、うん」


「はぁ、君の他人への無関心さは困ったものだよ。まぁこれから先、それをうまく活用できるかもしれないのだが」


「あの~、続けてもいいですか?」


「あ~すまない。それでは君の望みを聞かせてもらおうか」


 いや、もう答えは出ているだろ。


 話の中で異性の幼馴染が出てきて、高校で同じクラスになれたのが滅茶苦茶に嬉しいと。そのことを相談しに来た上で、求めることといえば。


「俺は、遥に、今の俺の素直な気持ちを伝えたいんです! だけど、あんまそういうきっかけもなくて」

「告白したいんだな!」


「ま、まぁそういうことになるよな。そういうことになっちまうよな~」


「なんで最後まで言い切った人間が、ここにきていきなりビビりだすんだよ」


「だってよ~、告白して振られようもんならこれまでの関係じゃいられなくなっちまうんだぞ。簡単に度胸は決めらんね~よ」


「そうだぞ。君は無関心である上に、人の気持ちを理解できないのだから余計にたちが悪い」


「おい、このタイミングでしれっと悪口をぶち込むな」


「悪口ではない。私は事実を述べたままだ」


「あの~、それで俺はどうすればいいのかってことなんですけど......」


「何も心配しなくていい。その代わり、明後日もう一度ここに来てくれればいい」


「分かりました! それじゃあ、よろしくお願いいたします」


「あぁ、任せておけ。ほら、君はお見送りをしてこい。くれぐれも彼が誰にも見つからないようにな」


 この部長! 


 色々と言いたいことはあるが他人には聞かせられないような内容まで口走るかもしれないし、ひとまず小野のことを丁重にお見送りするしかないか。


「頼むな。俺も何か手伝えることがあったらすぐ協力するから」


「お、おう分かった」


 何も分からんわ。唯一分かっていることがあるとすれば、俺は何も分かってないことだな。


 俺が無知の知に目覚めながら小野のことを送り出すと、部室の中には再び俺と部長の二人だけとなった。


「なぁ部長、これは一体どういうことなんだ。もちろん包み隠さず教えてくれるよな」


「もちろんだとも」


 何でさっきまで一方通行を強いてた人間が、こんなにさっぱりと答えることができるのか。


「この部活は君も知っての通り、新聞部だ。だが、それはあくまで表向き。我々の真の名前は」


「真の名前は?」


「SMITだ!」


「サミット?」


「違う。SMITだと言っただろ」


 何だそれ? なんて思っている間に、部長はあたりに散らばっている紙に何かを書き始めた。


「見たまえ」


「ん? Sその、M曲がり角、Iイベント、T手伝います! 略してSMIT!」

 は?

 紙に書かれていることをそのまま読んだが、一切意味が分からない。


「これで何が分かるんだよ」


「紙に書いたそのままじゃないか」


「それが分からないと言ってるんだが」


「もしかして君は、曲がり角イベントを知らないのか? よくラブコメとかで出てくるやつだぞ」


「ひょっとして、遅刻しそうだからパンをくわえたまま走っていたら曲がり角で人とぶつかる。学校に着いたらぶつかった人間が転校生として紹介されるって、あれか?」


「なんだ、知っているじゃないか。君の言った通りその曲がり角イベントは、ラブコメの定番だ。では、その後に手伝うという言葉がついた場合は?」


 嘘だろ。俺が入った部活は新聞部のはずだ。

 だがこの部長が説明していたことを踏まえると、全く別の顔を持っていることになる。


「まさか」

 呆気にとられている俺を見下ろしながら、目の前にいるこの部長が笑って口に出した言葉。それは、


「ようこそSMITへ。我々はラブコメの成就を助ける存在だ」


「unbelievable」




皆さん、ラブコメのラブ要素は堪能できたでしょうか。

どうも、シリーズの四話目以降は閲覧数が下がる傾向があるとかないとか言われているようです。

私は皆さんが、ようやくラブコメを見ることができそれで満足してはいおしまい、にはしないと信じています。

それではまた、次回お会いしましょう!

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