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第十四号「NEW STAGE?」

前回同様のんびりとしたお話、だと思っていたら足元救われます。

これまでとは、少し味付けが変わっている重要な部分があります。

見落とさぬように。

「フゴッ!」


「朝から何変な声出してんの」


 朝から切れ味絶好調なのは、俺のおなかの上にボディプレスをした栗色の髪の女子中学生。そう、俺の妹である。


「何、ジロジロ見て?」


「妹よ、その髪質を俺にも少し分けてくれないか」


「......」


「ごめんなさい。朝から気持ち悪いことを言ってしまいました」


「分かればよろしい。それより、早く顔洗ってきて。もう朝ごはん出来上がるから」



「うわ、やっぱ寝癖が豪快なことになっていやがる」


 妹もまだ起きてからそう経ってないはずなのに、髪はつやつやしていて見るからに絶好調。この残酷な差は何だろうか。


「ちょっと~、顔洗うだけなんだから、早くしてくんない。ごはん、冷めちゃうんだけど~」


「サー! イェッサー」



「「いただきます」」


「にしても、珍しいこともあるのね。兄貴が早起きするなんて」


「まぁ、高校生にもなれば色々あるんだよ。たとえ自らが望まないことだとしても、時として強制的に特訓を行わなければならないとか。そして、そのために早起きしなければいけない時とかもあるんだよ」


「ふ~ん、ま、別にいいんだけどさ。けど、せめていつ帰ってくるのかの連絡はしてよね。こっちも料理の都合があるんだから」


「あぁ、今日から絶対忘れないようにする」


「そうそう、昨日電話でお父さんに言われたんだけどさ~」


「! へ、へ~、なんて言ってた」


「健康にはくれぐれも気を付けてくれ、だって」


「そ、そうか。それ以外には何か言ってなかったか?」


「いや、特に何にも。けど、」


「けど?」


「もし禁忌に触れたら、どうなるか分かってるね、だって」


「......マジで頑張ります、いや、今もしっかり頑張ってます、って今度伝えておいてくれ」


「りょ~かい」


「「ごちそうさまでした」」



「じゃあ行ってくる」


「行ってらっしゃ~い」


 昨日の放課後、俺と部長と先輩の三人以外の生徒が下校しきった後、つまり昨日の特訓が終わった後、二人から衝撃的なことを告げられる。


 明日の朝八時、遅れることなく学校に来るように、と。

 正直、本当に行きたくない。いつも通りにのんびり家を出たかった。

 だが、部長の笑顔を見てしまったのだ。それならば言われたとおりに行くしかないだろう。少なくとも俺は、あの部長の笑顔を裏切ることなど出来ない。

 あの、顔は笑っているのに目は一切笑っていない、あの笑顔を。


 それにしても、家から高校までが遠いというのはやはり不便だな。一時間を超える登校時間はそれだけで、学校に行く意欲を削がせる。まぁ、遠いところにある高校をあえて選んだのは他でもない俺なんだが。それには大事な理由がある訳なんだが、どうしてあの部長はそのことを知っているのか、一切見当がつかない。本当に、どうしてバレているんだ?


「くしゅん」


「風邪でも引いたかい?」


「いや、そういうんじゃ。ただ、誰かが私の噂をしていたような」


「もしかしたらそれは、君の大切な部員かもしれないぞ」


「くだらないことを言うな。それより、君の目から見て彼はどうだい」


「そうだな。一言で言うなれば、やはり面白い人間だったな。昨日の特訓、結局青年は一度も当てることはできなかった。が、注目すべきは彼の態度だ。自分で言うのもなんだが、昨日の青年の扱いは青年から理不尽と文句を言われても仕方のないものであった。しかし、青年は最後まで真剣に特訓に取り組んだ。あの精神力には目を見張るものがあった。流石というべきか、やはりと言うべきか」


「君から前向きな意見が出るなら一安心だ。まったく、普段からその対応を続けてくれればこっちも無駄に疲れずに済むんだがな」


「おや、昨日の続きをご所望か? それなら徹底的に美しさについて言わせてもらうとしよう」


「朝からそれは勘弁してくれ。私の堪忍袋の緒が切れてしまうかもしれないからな」


「言うじゃないか。それは、私の意見が間違っていると言っているようなものだぞ」


「そう言ったつもりだが」


「ま、まぁ私は君よりも大人なわけだし、今はここで引いておくとしよう。それより、昨日から一つ君に聞きたいことがあったんだ」


「聞きたいこと?」


「あぁ。君はまだ、青年に君のことを話していないのかい?」


「......まだ早い。そう思っているだけだ。そもそも今、私と彼は全く釣り合っていない」


「だから、まだ話していない、と」


「そうだ。なんだその顔は、言いたいことがあるならはっきり言え」


「いや別に。だが、いつまでもそんなことを言っているといつの間にか横取りされてしまうかもしれないぞ」


「お、おい待て。それはどういう」


「さぁ、学校が見えてきたぞ。確か、新聞部の部室で待ち合わせだったな」


「ことだ、って逃げたな」


「分かっている、いつか言わねばならないことは。ただ、今の私には無理だ。釣り合っていないのだよ、私と彼では」




「私は、いつになったら彼に追いつけるのだろうな」




「さて、今の時刻は八時ちょうど。君も分かっていると思うが、これから朝の特訓を始める」


「一つ質問をいいか」


「何だい」


「昨日の放課後で、全部とは言わないがかなり多くのカップリングを見た。そのカップリングについて全てを記憶しているわけではないが、多少印象に残っているペアもいる。昨日と同じことを続ければ、やがてそれは見抜くではなく、暗記問題になってしまう気がするん、だ、が......。もしかして、それも目的の一つ、なのか?」


「素晴らしいぞ青年。自分の疑問を素直に口に出しているうちに、思いがけず答えに辿り着くとは」


 嘘だろ、自分の思っていたことを吐き出していった結果、間違いなく面倒くさくなる結末を思い浮かべることができてしまった。なにこれ残酷。


「あぁ、そうだ、一つ君に伝え忘れていたことがある。今日の放課後、小野友也が再びこの部室に来る」


「は?」


「遅れずに来るように」


「いやいや、ちょっと待て。小野は無事空崎とくっついただろ。さらに頼みたいことなんてもうないだろ」


「いいかい、ラブコメというのはくっついて終わりなんていうものじゃない。むしろくっついてからが始まりだ」


「......その理屈は分からんでもないな。ちなみに部長は、小野がどんなことを依頼してくるか見当は付いているのか?」


「あぁ、少なくともどの出来事に関係している事柄なのかは、見当がついている」


「なら、ぜひ教えてもらいたいとこだな。持っている情報がゼロかイチかで俺の気持ちも大きく変わるだろうし」


「答えを教えるだけでは何のためにもならないだろう。その代わり、ヒントは与えよう。来月六月、君たちにとって文化祭以外の大きなイベントといえば?」


「文化祭以外で大きなイベント、か?」


「え、青年、まさか分からないのかい」


「どうやら冗談でもなんでもなく浮かばないようだな」


 部長はともかくとして、この部活の部員でもない奴にまで心配されるのは何か腹が立つ。というか、間違いなく煽ってきているだろ。

 どうにか止めさせたいが、本当に分からない。


「君もこの学校の生徒なら、もう少し学校に興味を持ちたまえ」


「そうそう。青年は他のことにも関心を持つべきだ」


「お、おい、どこに行くんだ?」


「答えを出せない君を残念に思いつつ、特訓のために正門に行くだけだ」


「結局答えは何なんだよ、てかその憐みの目をやめろ」


「特訓が終わって教室に戻ったら掲示物をよく見ることだな。そうすれば、君はそのことを知らなかった君自身にびっくりするだろうさ」



「......これか」


 時刻は午前八時三十一分。部長に言われたように教室の前にある掲示物を見てみると、すぐに答えに辿り着いた。それと同時に、部長の予想が的中したことを実感した。



「校外学習、か。これが来月あることを俺は、ほんの十秒前まで知らなかったわけだ」


「それは、びっくりだな」








しっかりと、見つけてあげることができたでしょうか。

さて、最近の後書きでは文化祭文化祭言っていたかもしれませんが、校外学習のターンに入ります。

投稿頻度、努力します。広告下の星マークをいじってくれると、もっと努力したくなるかもしれません。

それではまた、次回お会いしましょう!

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