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第十三号「特訓、からの謝罪」

人間関係を見極める術が載っています。

期待してご覧ください。

「あの二人は?」


「友達、か?」


「いや、あの二人は同じ委員会の二人、といったところだな」


「では、あの二人は?」


「ん~、部活仲間か?」


「いや、あの二人は去年同じクラスで席が複数回隣同士になったことがある二人、といったところだな」



「......それ、本当か? 一目見ただけで、一切知らない二人の関係性を当てるとかやっぱりまったく信じられないんだが」


「いや、彼女の考察は全て正解だぞ。私が情報を持っている生徒たちをターゲットにしているから間違いない」


 ツッコミどころしかないこの状況を、簡単に説明しよう。

 文化祭では写真撮影とラブコメ予備軍を探す、その二つの仕事について部室で説明された後、俺と部長、そして先輩の三人は学校の正門に移動し二人で下校している、その生徒たちの関係性を一目見て当てる、ということをしている。

 十分ほど前から関係性を当てる特訓をしているが、一切当たらない。この二択のうちのどちらか、にすら辿り着かない。

 そんな風に苦しみながら答えを絞り出している俺とは対照的に、隣にいる先輩はあらかじめ答えを知っているんじゃないかと思うほどに、あっさりと答える。加えて、部長による答え合わせではすべての回答で丸をもらっている。

 こんな恐ろしい能力を持っている先輩のせいでつい見落としてしまいそうだが、正確な関係性を把握している部長もやはり恐ろしい。

 情報を持っている生徒たちをターゲットにしていると言っていたが、今のところ校門を通った全ての二人組を問題として出している。


 というか、このまま外し続けるとこの三人を除いた全ての生徒が下校するまで特訓が続く可能性がある。

 流石にそれは避けたい。新聞の次の締め切りは六月の中旬で今はまだ五月の上旬のため、それには余裕があるが俺にだって他にもやらねばならないことだってある。録画しているアニメを観たいし、ゲームだってイベントを走りたいし、学校からの課題だってある。


「何かコツはないんですか、関係性を見極めるための」


「コツか。そうだな、まずはとにかく多くの人を見て、その正確な関係を知ることだな。そうすることで、この二人はこれくらいの距離間である、ということを一目見て判断できるようになる」


「経験、ですか」


「その通りだ。それ以上具体的な説明をするのは難しい。もちろん、いくつかのところに注目することで関係性が見えてくることもある。だが、それは完全なものではない。例えば、カップルの関係性にある二人がもつ特徴を、二人の物理的な距離が近い、としよう。さて、ここで青年に質問だ。青年はこれまでに物理的に距離が近い二人を見たことがあるかい?」


「それはもちろん。教室にいるだけで、たくさん見かけますね」


「では、その二人は必ずカップルである、と言い切るかい?」


「いや、それはできませんね。本人たちに聞いたことはありませんが、全員が全員カップルだとはとても考えられません」


「その通り。たとえ、たった一つの特徴であっても、それが全ての人に適用されるということはあまり無いのだよ。それなら、決まった特徴で判断したり、特徴をまとめ上げるよりも、たくさんの人を見て自らの感覚を磨いていった方がよっぽど良いと思わないか。それに、直に見る方がよっぽど楽しい方法だと、私はそう考えている」


 なるほど。先輩が言うことは最もだ。自らの中に多様な人間の関係性を蓄積させること、それこそが一番の学習方法なのだろう。


 はぁ~。どうやら、俺たち以外の生徒が下校するまで帰ることはできない、ということが確定してしまったようだな。



「いや~、疲れた。一日の大半の記憶が不明瞭なままだが、疲労だけは確実にこの身体に蓄積されているって理不尽にもほどがあるだろ」


「あ、やっと帰ってきたの。てか、ソファを独占すんな」

 ボフッ


「おぉ、妹よ。帰ってきたばかりの兄に対して背中に全体重を乗っけてくるとは、なかなかにつらいものがあるぞ」


「何? もしかして、私のことが重いって言いたい訳?」

「滅相もありません。いつも料理を作ってくることなどに感謝することはあれど、そんな失礼なことを思うはずがないではありませんか」


「あっそ。なら、いい加減ソファに寝そべった状態から動け」


「......はい」


「それで、今日はどうして遅くなったの?」


「それはだな、って待ってくれ、妹よ。今、お食べになっているのはひょっとして俺が買っておいたアイスでは」


「ん? そうだけど」


「それは、どうせ帰るのが遅くなるだろうからせめて自分にご褒美を、と思って買っておいたものなんだが。それを食べられるというのは、少し、いやかなり耐え難いぞ」


「あっそう。ご褒美ねぇ」


「い、妹よ、目のハイライトがなくなっているぞ」


「今日は何時に帰ってくるのかな~って考えてて、一人で食べるのも可哀そうだから待っててあげよっかな~なんていう風に配慮したりなんかしてたの。だから、私、まだ夕食食べてないの。最後にご飯を食べたのは、大体六時間前の給食かな~」


「あ、あの」


「夕食を作っているときに少しつまみ食いしよっかな~なんて考えたりもしたけど、どうにか我慢したりもしたんだよね~」


「そ、それは」


「ねえ、お兄ちゃん。私、今、何かいけないこと、してる?」


「は、配膳させていただきます!」


 

「「いただきます」」


 怖かった、素直にそう思う。

 いつの間にか正座をして、いつの間にか土下座していた後は特に何もなかったが、むしろそれが怖かった。だがどうやらこれ以上の爆発はなさそうだったため、今は安心して温かい料理をいただいている。


「そういえば、今日クラスメートに褒められてたぞ。おいしそうな弁当だ、って」


「ふ~ん。それは良かったわ、ちゃんと作ってる甲斐があったのね」


「あぁ。それで、こうも言われたよ。ちゃんと感謝しとけって。という訳で、いつも早起きして弁当を作ってくださりありがとうございます」



「......別にいいわよ。私がやりたくてやってることだから」


 平和な時間というものは実に素晴らしい。だからこそ、次からは絶対に地雷を踏まないようにしよう、そう覚悟を決めた夕食の時間を過ごした。


「「ごちそうさまでした」」


「さてと、ちゃちゃっと洗うとするか」


「あ、ごめん。ちょっとトイレ」


「分かった。じゃあ先に洗ってるぞ」


「よろしく」

 バタン


「も~、どうして急にあんなこと言うかな~! ほんっと、心臓に悪い!」


 ん? 何か聞こえた気がするが、気のせいか。どうせこの洗い物してて出た音だろ。














あまりに抽象的すぎると言われても困ります。

さて、またまた新キャラが出てきましたね。果たして、今後どのような立ち回りを見せるのか、ご期待ください。

それではまた、次回お会いしましょう!

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