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第十二号「俺と部長と先輩と」

前回から出てきた新キャラを、とくと堪能してください。

「文化祭が、来る!」


 部長からお許しを頂いた俺と先輩が部室に入ると部長ではなく、先輩の方が演説をいきなり始めた。

 いや、名前も知らないんだが、なんてツッコミをする間もなくどんどんと先輩には火が点いてきた。 

 半ば呆れながら隣を見てみると、恐らく俺以上に呆れた顔をしている部長が、そこにはいた。


「ちょっと、君たち〜! 私が今から大事な説明をするっていうのに、何だその表情は」


「呆れ顔、というのが正解かな」


「まぁ、そんな感じだろうな」


「君たち、私に対する扱いがひどくないか? そもそも、今日私を呼んだのは君だろ!」


「そうなのか?」


「そうだとも。忙しい中でも、青年の部長に頼まれたからこそ私は今ここにいるんだ」


「別に先輩に聞いたわけじゃないんですが。それより、本当なのか部長」


「確かに言っていることは事実だ。だが、これほどまでに面倒臭い態度をとってくるとは思ってなかった」


「私、いつもこのテンションだが!」


「二人は一体どういう関係なんだ?」


「親友だ!」


「知り合いだ」


 見事に揃わなかったな。

 一見すると、二人のタイプは対照的だが、だからこそ引き合うとも考えられる。

 それにしては、部長が冷め過ぎてるようにも見えるが。


「そういえば、さっきは何で言い争ってたんだ?」


「「えっ!」」


「いや、それはまた今度話すとしよう。そうだな?」


「あ、あぁそうだとも! それはまたの機会にすべきだ。まずは文化祭についての話をしよう!」


「そこまで今話したくないことなら、別に構わないが。それより、何故一ヶ月先の文化祭の話をするんですか?」


「甘い、青年のその考え方は実に甘いよ。文化祭までの一ヶ月なんて、あっという間に過ぎてしまうものなんだ! なら、どうすればいいのか。今日この日に、説明を徹底的に行い不測の事態に備える、これこそが答えだ」


 ふ〜ん、熱が入っているな〜、とは思うが全然惹き込まれない。

 その理由の一つは、文化祭に関して俺が何をすべきなのか一切語られないからだ。

 よく分からないことをよく分からない人に説明されても、よく分からないという感想くらいしか出てこないのは当然だろう。


「それで、その文化祭に新聞部はどんな風に関わることになるんですか」


「よくぞ聞いてくれた! 文化祭における新聞部の役割、それは!」


「私から説明しよう」


 もう少し遠慮はできなかったのかよ。

 見てみろよ、先輩を。さっきまで一人でものすごく盛り上がっていたのに、今じゃお株を奪われて体育座りしてるじゃないか。


「部長、もう少し遠慮してやったらどうだ。結構がっかりしてるぞ」


「大丈夫だ。どうせすぐ回復する。それじゃあ、今から君に文化祭における新聞部の役割を説明しよう。だがその前に、君はドアの鍵を締めて目張りをしてきてくれないか」


 それと同じことを、つい最近やった記憶がある。

 そう、小野がこの部室に来てSMITとして活動することになったときだ。


「また何か依頼でも入ったのか?」


「今のところ依頼は入っていない。ただ、君の予想している通り、ラブコメ成就に向けた働きをする。まぁ、今回は間接的なものになる」


「間接的?」


「今回我々がSMITとして行うことはずばり、ラブコメ予備軍を探す、これになる」


「ラブコメ予備軍? それはいわゆる、友達以上恋人未満の仲の二人をターゲットにするってことか?」


「その通りだ。文化祭というのは学生に特別なイベントだ。それゆえ、二人きりでいる生徒たちの仲には何か特別なものがある可能性がある。そこで文化祭において、我々は次にラブコメを生み出しそうな二人を見つけ、目星をつけておくということをする。ここまでで何か質問はあるかい」


「どうしてそんなに私を無視できるんだい」


「......特に無いようなら、新聞部の役割の説明に移るとしよう」


「あるよ! ひどくないか! 君が、私のことを、呼んだんだぞ。それでこの扱いはいくらなんでも残酷すぎないか!?」


「分かった分かった。確かにそっちの言うことにも一理ある。では、新聞部の役割については君から話してくれ」


「任せておけ! いいかい、青年。青年が文化祭で新聞部員としてやること、それは! 写真撮影だ!」


「へ~、そうなんですね」


「反応薄くない!」


「いや、その~、何となく分かっていたというか。先輩が首から下げているカメラを見れば、正解はすぐ出るというか」


「ふ、ふ~ん、私のヒントに気づいていたとは青年もなかなかに見どころがあるぞ、うん」


「なぁ、部長。どうして部長が自分で説明をしたがったのか、よく分かった気がする」


「そうだろ。これは優秀なくせにこうなるから面倒なんだ」


「あの〜、青年? 青年の心の声が漏れちゃってる気がするんだけど、大丈夫?」


「安心してください。ちゃんと分かってますから」


「新聞部、なんて恐ろしい子たち!」


「じゃあもう、説明は終わりにするか? それなら私が代わりに説明しよう」


「待った〜! 分かった。ちゃんと説明するから、私にチャンスを!」


「次、調子乗ったら分かってるな」


「はい。と、いうことで新聞部は文化祭で写真撮影をする! ただ、本当にそれが全てかどうか疑わしい、と思っているな、青年」


「まぁ、確かにただの写真撮影だとは思えませんね。それこそ、SMITの活動に結び付くのでは、という考えは過ぎりました」


「なかなかに良い勘をしているぞ、青年。新聞部は確かに写真撮影の役割を担っている、が、重要なのはその被写体にある。もちろん準備段階を含めて、様々な種類の写真を撮ることが求められる。しかし、青年が真に集中すべきとき、それすなはち!」


「ラブコメを生み出しそうな仲の二人を見つけたとき、ですかね」


「......その通りだよ。けど、もう少し先輩を立ててくれてもいいんじゃないか? 今、青年は私の見せ場を思いっ切り奪ったぞ」


「どうやら説明は終わりのようだな。それなら、続きは私から話すとしよう」


「え、ちょっとま」


「さて、我々の新聞部としての任務は写真撮影だということは分かったな。加えて、特にラブコメを生み出しそうな仲の二人に焦点を合わせる、ということも理解しているな」


「あぁ。それ以外にも何かすべきことがあるのか? 話を聞いた限り、準備期間からひたすらカメラを持って身構えていればそれで済むようなんだが」


「確かにその通りだ。では、一つ君に問おう。君はラブコメを生み出しそうな仲の二人、それを見極めることができるかい?」


 それは盲点だった。

 気付いていてもおかしくないようなことだが、あの先輩の説明を聞いているとどうにも簡単で楽な仕事に聞こえてきたせいだな。

 となると、当然部長は、俺に見極めの練習をさせようとする。

 そして、この部室には俺と部長以外にもう一人、部長に呼ばれたという先輩が来ている。


「もしかして、あの先輩を呼んだ訳っていうのは......」


「君の予想通りだ。彼女は、人間関係の見極めをする、そのプロだ」


 何だそのプロ。怖そうで怖くなさそうな微妙なプロだな。


「君がそう思うのも無理はない。あまりそのことに秀でた人間の話など聞かないからな。それに今、再び体育座りをしている先輩ほど頼りないものはないだろうしな」


 いや、そこまでは思ってない。......まぁ、少しだけその感想は抱いていたかもしれないが。


「けど、今日ここに呼んだっていうことは、実力は間違いないってことですよね」


「そうだ。色々と問題はあるが、彼女は優秀だ。それは私が保証しよう」


 この二人の関係について知っていることはほとんどないが、その部長の台詞はまがい物でも何でもない。

 相手のことをよく理解しているからこそ生まれた、そんな発言に不思議と思えた。


「だがまずは、いじけているこれを何とかしないとな。甘いものでも食べさせれば大丈夫だろう」


 ......相手のことをよく理解しているからこそ生まれた、そんな発言だな。




 


 










 


  

投稿頻度、頑張りますので今回は勘弁してください。

必ず、そう必ず次回はより早く投稿します。

それではまた、次回お会いしましょう!

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