第十一号「同志」
新キャラが、出ます。
個性的です。
そんな新キャラにも注目しながら、今回もお楽しみください。
一旦落ち着こう。
俺は部室のドアを開け、そしたら部長が一人の女子高生と言い合いをしていた。
「さてと、帰るとするか」
「ちょっと待ちたまえよ、青年」
え〜、肩掴まれた、しかも結構な力で。しかも、部長じゃないもう一人の生徒に。
ていうか、本当に女子生徒か?
声で性別を判断したが、外見だけでは全く判断できない。
青髪ロングで、切れ目。背が高くてスタイルがいい。
これは所謂、カッコいい、というやつだ。
「安心したまえ。私は君の予想通り女子だ。まぁ、そんな性別のことなど些細なことに過ぎないと私は思うが」
最近しばしば心を読まれるのだが、何か有効な手はないだろうか。
「諦めることだな。時にはどうしようもないことだってある」
初対面なのに随分と言ってくるじゃないか。この感じ、見てくれはよくてもどうにも魅力的だと思えない内面が垣間見えるところを含めて、どこかで経験したことがある。
これはあれだな。類は友を呼ぶっていうやつだろう。
「お二人の時間に水を差すのもあれなので、今日のところは帰らせていただこうかと。だから、そんなに強く肩を掴まないでもらえると助かります。ていうか、掴まないでください。痛いです」
「分かった分かった。君が帰らないで部室にいてくれるなら、この手は離そう」
「何も分かってないですよね、それ」
「いい加減、彼を放せ。このまま続けるようだと、私はこの状況を写真に撮って職員室に行くことにするが」
おお、ナイスだ部長。初めて部長がいてくれて心強いと思ったぞ。
敵には絶対に回したくはないが、味方にするとこの上なく頼りがいがある。何せ、もう既にスマホを手に取って俺たちの方に向けている。
「じょ、冗談に決まっているだろう。ほら、こうして解放してあげるし」
もしかしたら、この生徒も部長の恐ろしい面を知っているのだろうか。やると言ったら本当にやるといったようなところを。
そうでなきゃ、スマホが取り出されたときに顔色が一気に青白くはなったりしない気がする。
「大丈夫かい、どこも痛くないかい。うん、どこも痛くないよな!」
間違いなく知っているな。そして、よく察している。
ここで俺にマイナスなことを言われれば、自身に災いが降りかかってくるということを理解している。
......いくら肩をしっかりつかまれたとはいえ、今痛いというのはなんだかかわいそうに思えてくる。実際、特に痛いところはないし。
「大丈夫ですよ。特に痛いところはないです」
「本当かい。嘘をついたりはしていないだろうね?」
「そこで俺を疑うなよ。後、そろそろそのスマホは引っ込めろ」
「それもそうだな。今日のところは不問ということにしておこう」
助けてもらってなんだが、すごく偉そうな態度だな。
今、俺の隣でほっと一息吐いたのはおそらく先輩だぞ。
今年の学年の色は、一年生が青、二年生が緑、そして三年生が赤となっている。その色は上履きの色などに使われているが、もちろん俺が履いている上履きには青色が使われていて部長のものには緑色が。
では、隣にいる生徒が履いている上履きの色に何色が使われているかといえば、赤色である。
それはつまり、部長がさっき脅したのは先輩だ、ということになる。
傍から見れば、むしろ先輩後輩の立場は実際とは反対にしか見えないのだが。
「それで、この先輩は一体どうして部室にいるんだ?」
「よくぞ聞いてくれた! それはだね」
「いや、部長に聞いたんですが」
「文化祭が来るからだ!」
聞いちゃいねぇな。
てか、今なんて言った? 文化祭?
確かにこの学校にも文化祭はあるが。
「文化祭まで、まだ一ヶ月もありますよ?」
「甘い! それじゃあ甘いのだよ、青年!」
恐らくだが、このままこの人に話を続けさせたらより面倒臭い態度を取ることになるだろう。
それならば、協力者によって話を続けられる前に続きを封じさせる。
今、俺と同様に「うわ、面倒臭くなりそ〜」と思っている表情を全面に押し出している、部長によって。
方法は簡単。部長とアイコンタクトをとる、たったそれだけだ。
「では、そこから先は私が説明するとしよう」
「えぇ〜!」
見事、作戦は成功したようだ。
ただ、一つだけ誤算があるとすれば、説明を遮られたこの人が不満を漏らしながらも、若干笑いながら俺の腕をホールドしてきたことだ。
「おい、何してるんですか」
「さっき、青年は一度帰ろうとしていたからな。再発防止のためだ!」
「訳の分からないことを言ってないでさっさと入れ。まぁ、これ以上私の部員に迷惑を掛けるようなら出禁にさせてもらうが」
おお、今日の部長は一味違う。
何か、ちゃんと部長してるって感じだ。
実際、俺の腕は無事に解放されたことだし、感謝感謝だな。
「懲りずに余計なことを考えるなら、これ以上君を助けることは出来ないな」
感謝した自分をぶっ飛ばしたくなるな。
部長は、聖母は聖母でも悪魔が皮を被っているといったところか。
「そうそう、あれは実に恐ろしい。悪魔もびっくりするんじゃないか」
「心を読まないでください」
「君たちは、二人とも頭を冷やした方が良さそうだな」
ガラッ
「「あっ」」
「これは、青年のせいじゃないかい?」
「違う、と言いたいとこだが、実際に余計なことを考えてしまいましたしね。確かに俺にも責任はあります。けど、わざわざその余計な考えに声を出して同意しなくても良かったのでは」
「......そう言われると、私にも過失があったことを認めるしかないな。だが結局のところ、一番の問題は彼女だと私は思う」
「というと?」
「どうして私達が彼女の言うような、余計なことを考えてしまったと思う? 私は彼女の性格に困ったところがあるからこそだと考える」
「確かに、余計なことを考えられたのは部長の自業自得と考えることも出来ますね」
「そうだろう!」
「けど、その結論に行き着いたところで現状に変化は生まれませんよ」
「それも、そうだね。となると、私達がすべきことは」
「謝罪、それ一択ですね」
「では、せ〜ので合わせるか」
「了解です」
「せ〜の」
「「すいませんでした」」
ガラッ
「君たち、変な方向で仲良くなってないか......」
サブタイトルの意味が分かったでしょうか。
いよいよ作品は文化祭編に突入します。
もちろんラブコメという言葉を裏切らない展開も待ち構えています。
それではまた、次回お会いしましょう!




