第十号「平凡な一日」
「睡眠の大切さ」
今回はその重要性を伝える作品となっています。
騙されたと思って読んでみて下さい。
「お〜い、大丈夫か〜」
「大丈夫じゃないみたいだ〜」
「一体何があったら、そんな死にそうな顔になるのよ」
「すこしはやく、ブラックな労働体制の下で働く社会勉強をしただけだ〜」
「いや、意味分かんないんだけど」
「とりあえず飯食おうぜ。そしたら元気出るかもしんないし。食ってないんだろ、朝飯」
「そ〜いや、食べてないな。ていうか、もう昼か〜」
「まさか、それすら気付いてなかったの?」
「四時間目まで隣でぐっすり眠ってたからな〜。あれだけ熟睡してれば、時間が分かんなくなっても無理はないか」
「確かにずっと寝てたわね。先生に当てられてるのに起きないのは、流石にヤバかったけど」
「ん? 当てられてたのか?」
「もう気にしなくていいわ。それより机、動かして」
「どうやら今日は、自分の机の向きを変えることも出来なさそうだな。ほら、一旦机に突っ伏すのをやめてくれ」
「う〜い」
「これで何とか三人で食べれるようになったわね」
「助かる〜」
「今日は本当に駄目、って感じね」
「おぉ、今日の弁当も美味そうだな。前から気になってたんだが、それは誰が作ってるんだ? お母さんか?」
「いや〜。妹が作ってくれてる」
「へ〜、妹さんがいたのね。それにしても美味しそうね」
「妹ってことは中学生とかか?」
「あぁ、中学生三年生だ」
「いい妹さんね。栄養バランスが考えられてて、見た目もいい。まさに理想的なお弁当じゃない」
「そういえば、遙も得意だよな、料理」
「よく手伝いをしているからね。それで自然と身についたのよ」
「俺も料理の勉強をしてみたいと思ったことはあるけどどうにもな〜、っておいおい! 弁当を食べながら寝るな!」
「すまんすまん、ついうっかり」
「いくらうっかりしてても、お昼御飯中に寝ないでしょ。ほんと、どうして徹夜をすることになったのよ」
「ん〜? 徹夜したって言ったっけか?」
「今のあんたの状態を見れば、誰でも分かるわよ」
「ひょっとして、新聞か?」
「新聞?」
「そうそう、新聞部に入っているから多分それでじゃないか」
「へ〜、新聞部に入ってるのね。そういえば、朝に見かけたわね新しい新聞。もしかして、あれ?」
「ま〜、そんな感じだ」
「新聞部も大変なのね。にしても、って感じだけど」
「ま〜、いろいろあったんだよ」
「なぁなぁ、その卵焼き、一個もらっていいか? 代わりに俺の卵焼きをあげるからさ」
「あ、それなら私も食べてみたいかも。私はタコさんウインナーあげるから」
「いいぞ〜」
「「うまっ!!」」
「これは、想像以上ね」
「見た目も味も文句なし、いい妹を持ったもんだな〜」
「そうだな~、いい妹を持ったな~」
「いや雑! このレベルのお弁当を作ってくれる人もそうそういないんだから、ちゃんと感謝しときなさいよ」
「分かった~」
「本当に今日は調子が狂うわね」
「珍しいよな~。今までも疲れてるな~って見えることはあったけど、今日は次元が違う。よっぽどスケジュールが厳しかったのか?」
「ま~、二日連続で徹夜して~、印刷、貼り出しのために仮眠もまともに取れないほどには、ヤバかったかな~」
「とんでもない過ごし方をしてきたのは分かったけど、その気の抜けたしゃべり方のせいで薄く聞こえるわね」
「いつもはもっと、しっかりしゃべってるもんな。ところで、遥がショッピングモールであの日話したときはどんな感じだったんだ?」
「えっ! いや、そのことは今はいいじゃない」
「え~、気になるんだけどな~」
「絶対に話さないわよ。......少しでも口が滑れば、私の情緒不安定だった一面を知られることになるかもしれないし」
「何か言ったか?」
「何でもない! とにかく私は絶対言わないから」
「まぁ、そこまで言われたら聞かないけどさ。あれ?」
「どうしたの?」
「ひょっとしてもう少しで昼休み終わりじゃないか?」
「うわ! ほんとだ。ほら、舟をこぐ前にまずは妹さんが作ってくれたお弁当を、って」
「いつの間にか食べ終わって、もう寝てるね」
「一瞬でいいから、机から離れなさい。元に戻してあげるから」
「う~い」
「それじゃあ私は席に戻るけど......」
「分かってる。俺が隣の席として、そして何より友人として、サポートしてみせるさ」
「頼むわよ。私は見たくないからね、昨日新しくできた友達が先生から雷を落とされるのは」
「新しくできた友達、か~。きっと喜ぶよ、今みたいに寝ずに、ちゃんと起きてたら」
「うっさい! いい、私が今言ったことは言わないでね」
「はいはい。分かってるよ」
「何とか雷は回避できてよかったな。まぁ五、六時間目は結構な生徒が寝てるから、それもデカかったか」
「そういう友也も寝てたでしょ」
「バレてたか」
「何なら、誰よりも気持ち良さそうに寝てたんじゃない? あんたの隣人を除いて」
「確かに、あの熟睡っぷりには勝てないな。結局、六時間分の睡眠をきちんと学校でとってたし」
「部活〜、行ってくる」
「徹夜までしてだいぶ働いてたみたいだけど、今日も部活あんの?」
「お~」
「じゃあせめて、家に帰ったら今日は早く寝なさいよ」
「何だかお母さんみたいなアドバイスだな」
「うるさい!」
「でも、確かに今日は早く寝たほうが良いぞ」
「りょ~かい」
ようやく頭が働きだした気がする。
そんな中でまず驚いたことといえば、いつの間にか六時間が過ぎていたことだ。
昼飯を食べた記憶は何となくあるが、それ以外の時間の記憶がほとんどない。
流石に二日連続徹夜プラス新聞の印刷、貼りだしのために仮眠の時間も削った代償は小さくなかったか。
「反省しないとな。徹夜だめ絶対、と」
何故だろう。これと同じことを約一週間前、ゴールデンウィークの始めにも肝に銘じた気がする。
......気のせいだとしておくか。
それにしても、今日の俺の生活はだいぶひどかったんじゃなかろうか。記憶がないため、どんな風にひどいかすら言うことはできないが。
もし万が一、今日だけをそのまま物語にでもしようものなら、その作者はよほど無謀だと言わざるを得ないな。
さてと、今日も部活を頑張るぞ〜、と。
ガラッ
「だから、これじゃあ美しさは伝わらないと言っている!」
「それはあんたの目がおかしいんじゃない!? このシチュエーションでは、これこそが美になる!」
ガラッ
よくわからんが、部室のドアを開けたら、部長ともうひとりの女子生徒が言い合ってた。
これでは、さっきのことは撤回せざるをえないな。
もし俺の今日の一日を物語にしたら、最後に全員ハテナマークが頭に浮かぶ展開が待ち受けている。
「つまり、物語にしてみたら案外面白いかもしれない。そういうことになるな」
大切さが伝わったでしょうか。
今回のような形式も好きですが、次回からは再び波乱を巻き起こしていきたいと思います。
それではまた、次回お会いしましょう!




