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82.手を繋ぎたいけど、いい?

 お薬を作る部屋は暗いところにあった。一番下のお部屋なんだよ。お薬は光が当たるとダメになる種類があって、暗いお部屋がいいの。ちゃんとプルソンとお勉強する前に、パパに教えてもらった。


 昨日の夜は図鑑を見ながら、パパに薬草のことを聞いたの。膝に乗せて説明するパパは機嫌が良くて、僕も嬉しかった。たくさんお話しして、質問して、いつの間にか寝てたけど。


 今日はパパもアガレスもお仕事で、僕とプルソンだけでお勉強だよ。プルソンの隣を歩くけど、僕は両手をじっと見つめる。手を繋いでもいい? と聞いたら、プルソンは嫌かな。パパなら僕が声にしなくても聞いてくれるけど、他の人は話しかけないと伝わらない。ぎゅっと拳を握って解いた。


 うん、僕はちゃんと聞けるよ。悪いこと聞いたら、ごめんなさいも言える。


「プルソン」


「どうしました?」


「あのね、パパみたいにお手手を繋いで欲しい。いい?」


 驚いた顔をした後、プルソンは自分の手を見つめた。まだお返事がないから待ってる僕に、そっと手を差し出す。嬉しくなって手を乗せて、それからしっかり握った。温かい。


「カリス様は私と手を繋ぐことが、嫌ではないですか」


「嫌なら、僕は言わないよ。プルソンと手を繋いで歩きたい。パパも、アガレスも、アモンも、マルバスだって。皆と繋ぎたいのに、手はふたつしかないの」


 いっぱい手が生えてたら、色んな人と一度に手を繋げるのにな。そう話したら、プルソンは泣きそうな顔なのに笑った。でも繋いだ手は温かくて、解こうとしない。だから僕のことを嫌じゃないと思う。


「ありがとうございます」


 お礼を言われて首を傾げた。そういえば、パパが「蹄のお手手の人は、虐められたことがあるんだ」と悲しそうに教えてくれた。最初にプルソンに触った時も、今みたいな顔をしてたね。プルソンは僕に触るのが嫌なんじゃなくて、僕が嫌がるかもって考えたの? 僕から手を伸ばしたのに。


 虐められるのは怖いし、痛い。僕も知ってる。だからプルソンが僕を怖がらないで手を繋いでくれたら嬉しい。


「僕ね、プルソンのこと好き。いろいろ知ってて、優しくて。僕にお勉強教えてくれるのが、プルソンでよかった」


「……っ、こちらこそ」


 声がちょっと震えてた。この廊下は寒いのかも。僕はパパにいっぱい服を着せられたけど、プルソンは毛皮あるし。どっちが寒いのかな。再び歩き出したプルソンの手は温かくて、その分だけ寒く感じてるのかもしれないと思った。だから両手でプルソンの手を包む。


「どうしました?」


「プルソンが温かいといいなと思ったの」


「カリス様のお陰で、とても温かいですよ」


 微笑むプルソンが幸せそうで、僕も嬉しくなって笑った。今日覚える薬草の話のことを教えてもらう。切れて傷になった時に塗るお薬を作ってるんだって。白い塗薬は、茶色い草から作るみたい。途中で色はどこへ行っちゃうんだろう?


「たくさんの種類を混ぜて、煮て、汁だけ絞って粉にして練ります。お土産に少しもらって帰りましょう」


「うん!」


 こないだパパが書類の紙で指先をケガしたの。血は出なかったけど、そこに塗ったら早く治りそう。僕からちゃんとお願いして分けてもらわなくちゃ。

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