表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

81/214

80.僕の持ってるお金で足りる?

 今日は蜜柑と同じ色のスカートだった。プルソンがお昼から来るので、それまで僕は絵を描く。パパの隣にある僕用の机で、ペタペタと色を塗った。


 絵の具という道具なの。パパが買ったお店の道具に入ってて、使い方はマルバスが知ってた。お水をつけた筆で、塗るんだけど……難しいから指でやる。水の入った器で濡らした指を使い、ペタペタと音をさせながら色を伸ばした。水をいっぱいにすると薄くなるし、たくさん絵の具を付けると色が濃くなる。


「楽しいか?」


「うん!」


 頷いた僕は、アガレスに面白い使い方を教えてもらった。パパの仕事の印章に絵の具を付けると、違う色のスタンプが出来る。でもお仕事用だから我慢だね。


「明日にでもカリス様のスタンプを用意しましょう」


「本当?」


「何のマークがお好きですか?」


「パパの! パパのツノの形がいい!!」


 僕にも生えてきたらいいのに。カッコいいよね。人を指差すのはダメだから、パパの腕に抱き着いた。頭の上にぽんと置かれた手が、優しく撫でてくれる。昔は僕の頭に触れるのは、痛い手ばかりだった。でも今は優しい手がいっぱい。


 嬉しくて笑うと、可愛いと言って笑ってくれる。僕が好きと言ったら、同じように好きだと返す人がいるなんて。とても幸せだった。


「なるほど。すぐに手配しましょうね」


 アガレスは紙にさらさらと絵を描いた。びっくりする。アガレスは絵が上手なんだね。ツノの形を描いた絵を、書類を取りに来た人に預けた。注文したら作るお店があるんだ。


「パパ、お金……僕の持ってるお金で足りる?」


 銀と茶色の、まだ残ってるけど。あれでスタンプを作ってくれるかな。足りなかったら困るな。そう思った僕を膝の上に乗せて、パパは髪の毛にキスをした。ちゅっと音がする。


「お金は俺が出すから、心配しないでいいぞ」


「いつもパパが出してるよ?」


「大切な我が子にかかるお金を払うのは、親の喜びだ」


「ぎむ、じゃないの」


 仕方ないから出してやる、義務だから。そんな言葉は聞いたことがあるけど、喜びは意味が違う。嬉しいのと同じだよね。パパが言葉を間違えたのかな。


「カリスがいっぱいお金を持っていて、俺は持ってなかった。俺に欲しい物があったらどうする?」


「僕がお金を持ってたらパパにあげるよ」


「ふふっ、ありがとう。カリスは優しいな。俺とカリスを入れ替えたら分かるか? 俺はお金を持っていて、カリスの欲しい物を買ってあげたい。受け取ってくれ」


「わかった! ありがとう、パパ。僕、スタンプ大切にするね」


 パパが僕に買ってくれるスタンプは、新しい宝物になると思う。出来上がりが楽しみだ。いつもご飯を運ぶ猫のお姉さんが来た。もうお昼なのかも。これを食べたら、プルソンとお勉強の時間だ。昨日は数えるのを覚えたから、今日は何を教えてくれるんだろう。わくわくする。


「カリスは勉強が好きか?」


「好き! いっぱい覚えるから大変だけど、楽しい」


 両手を広げて身振り手振りで示したら、パパがぎゅっと抱き締めて頬擦りした。アガレスが変な顔をしてるけど、どうしたのかな。手を伸ばしたら握ったから、気分は悪くないみたい。一緒にお昼を食べたら元気になるかも。


「さあ、お昼を食べよう」


 長くて細い麺がつるつるするご飯は、パスタという名前だった。僕は白いスープで、パパは赤くて汁が少ない。両方半分こして食べた。アガレスも一緒に半分こしようとしたのに、パパが邪魔するの。仲良くしないとダメなんだからね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ