76.僕はお友達が欲しかったの
視察は大成功だったと聞いた。パパは机に向かって報告書を書いていて、僕はその隣でクッションに座って絵を描く。これも報告書に付けると聞いたから、色もいっぱい使った。
パパが買ってくれたお絵描きの道具は、まだ少ししか使ってない。色鉛筆とクレヨン、それから光る粉くらい。粉は指につけて擦るの。騎士や兵士の人を描いて、戦ってるから剣は銀色なんだよ。そこへ粉をつけていく。
僕とパパ、アガレスも描いた。アモンは騎士と戦ってるところ。いっぱい描いたから、紙が足りなくてもう1枚並べた。もう少しかな。きらきらが足りない。全部描いたので、確認した。皆揃ってるよね。
「あ、これはいい資料ですね」
マルバスが絵を見ながら手を叩いた。
「これなら視察の風景がよく分かります。とても助かりますよ」
アガレスも褒めてくれた。ほっとする。僕の絵で大丈夫だった。視察の絵は両方とも報告書につけて保管するんだって。パパが書き終えた書類と一緒に、僕の絵はファイルの間に挟まれた。あれは書類を運ぶ時に使うやつだ。僕の絵も書類と同じ扱いだね。
「カリス様の教育ですが、家庭教師を呼びますか?」
「そうだな。だが、友達も必要だろう」
「今の学校に友達はいませんよ」
難しい話なの? パパとアガレスを交互に見ていると、抱っこでお膝に乗せてもらう。学校という場所は子どもがいるけど、今の僕と同じくらいの子はほとんどいない。だからここで勉強しようと言われた。
「僕はパパの近くがいい。知らない人ばかりの場所は怖いし、アガレスやマルバスはお友達だよ」
僕のお友達は嫌じゃない? 首を傾げたら、アガレスもマルバスも笑って「嬉しい」と答えた。ほっとする。僕はお友達いないから、お友達になって欲しかったの。アガレスは厳しい時もあるけど、すごく優しい。マルバスだって、僕の話をちゃんと聞いて答えてくれる。だからお友達になれたら、ずっと仲良しでいられる気がした。
「教育といえば……プルソンでしょうか」
知らない人の名前だ。しばらく話し合った結果、僕の勉強はプルソンという悪魔の人に相談することになった。いろんな知識を持ってる凄い人みたい。早速夕方に会えると聞いて、どきどきした。
お勉強できるのは凄い人だから、嫌われないようにしなくちゃ。捲れそうなスカートを直したりしてたら、笑ったパパが着替えようかと言った。皺のない綺麗な服に着替えるため、僕はパパとお部屋に戻る。一緒にお風呂に入って綺麗に洗い、いい匂いのするお湯に浸かった。それから髪や体に香りのいい油を塗っていく。
「これは油なの?」
「香油だ。髪や肌が艶々になる」
「いい匂い」
塗ってもらった腕をくんくん嗅いだら、瓶を見せてくれた。草が入ってて、これはハーブだと教えてもらう。お料理の時に嗅いだ匂いがする。僕、美味しそうになったかな。
「ふふっ、カリスはいつも面白いことを考える。とても美味しそうで可愛いぞ」
「ありがとう、パパ」
美味しそうなら、きっとプルソンも僕を嫌いにならないね。新しいことをたくさん覚えて、早くパパやアガレスのお手伝いがしたい。アモンに戦う方法も教えてくれるようお願いしなくちゃね。




