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72.お魚を飼う池を作るんだって

 お土産のお魚を届けたら、セーレが珍しいと喜んだ。話を聞いたら、この辺ではお魚を食べる人が少ないんだって。でもお店のお魚は全部売れたんだよ? 首を傾げていると、パパが笑った。


「あれはカリスが食べて、美味しいと喜んだのを見て買ったんだ。皆も魚は滅多に食べないからな。あんな片隅で売っていたし、あのままなら売れなかっただろう」


「お魚、美味しいのに」


 普段は食べないの? お城でもお肉は出るけど、お魚は少ししかない。スープに入ってたりするくらい。


「お魚はとれないの?」


「人間がいる場所から持ってくるから、この辺にはないな」


 お魚は水の中に棲んでるから、川があればいるんだと思ってた。ゲーティアにお魚はいないんだね。僕が食べてたスープの魚は、外から連れてきたみたい。


「魚は好きかい?」


 セーレが尋ねた。僕は大きく頷く。お魚は好き、白いのも赤いのも美味しい。一生懸命伝えた結果、パパが僕とセーレを連れて部屋に戻った。お仕事の部屋にいたアガレスとマルバスが驚いた顔をするけど、パパは気にせず説明する。


「魚を連れてきて、池を作って放す」


「育てるのですか?」


「突然どうしました?」


 不思議そうな顔をする二人へ、パパとセーレが説明を始める。魚を常に放しておける池を作れば、食事が豊かになる。それは民の為になると言い切った後、僕を抱き上げてこう続けた。


「何より、カリスは魚が好きだ」


「承知しました。すぐに池を作りましょう」


「魚を飼うしかないですね」


 すぐに納得しちゃった。きょとんとした顔の僕に、セーレが笑いながら魚の仕入れに同行すると申し出る。食べられる魚と食べられない魚がいるんだって。食べられない魚は、どんな色をしてるんだろう。


 お魚を飼う話を決める横で、僕は魚の絵を描いた。今日食べた細長い魚だ。細くて長くて、銀色の皮がついてた。この魚も飼うのかな。


「そういえば、あの少女はどこで魚を仕入れたのか」


 パパが首を傾げる。この辺で魚が獲れないなら、どこかから持ってきたんだと思う。遠くから運んだなら大変だっただろうな。僕より少しお姉さんだけど、偉い。ちゃんとお金も数えてた。


「その辺も調べさせましょう」


 マルバスがすぐに出て行った。僕はたくさんのお魚を描いた紙をパパに見せる。褒められた後で、新しい絵本を一緒に読んだ。お魚が出てくる話で、海の底にお城があるんだよ。そこは平べったい魚や大きい魚もいっぱいいる。絵の魚は僕が見たことのない形をしていた。


「こういうお魚も池に入れるの?」


「……いずれは」


 いずれっていつ? パパが難しい顔をしたから、聞いちゃいけないのかも。口を閉ざして、僕は本を捲った。丸くて平べったいところから手足と首が生えた生き物が出てきて、目を見開いた。なにこれ、お魚じゃなさそう。形が全然違う。じっと見ていると、アガレスが教えてくれた。亀、これは池で飼えるみたい。


 池の中にいろんな生き物が棲んだら、きっとこの絵本みたいになるね。素敵だと思う。楽しみだね、パパ。

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