表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

66/214

65.悪夢はまだ付いてくる

 眩しくて目を開けたら、パパの後ろから日が差してた。もう朝なの? ちょっとしか寝てない気がする。ごしごしと目を擦ったら、パパに止められた。


「目を傷にするぞ。おはよう、カリス」


 ちゅっと額にキスをくれる。だから僕も手を突いて起き上がり、パパのほっぺにキスをした。お返しだよ。


「おはよ、パパ」


「いい夢は見れたか」


「うんとね、何も見なかったの」


 怖い夢もいい夢も、何もなかった。ちょっと目を閉じて開いたら朝だった感じ。身振り手振りを交えて説明する間に、パパは指を鳴らして着替えた。早いね。僕はパパが並べたお洋服を選ぶところから。


 昨日は羊さんだったけど、今日は縞模様の猫さんにした。耳が丸いから猫さんだと思う。黄色と黒の縞々を撫でていると「虎」という名前を教えてもらった。


「虎さん?」


「そうだ。カリスより大きいぞ」


 一緒に絵本で確認する約束をして、虎さんを着る。尻尾も細いし、やっぱり猫さんだよ。お手手のふかふかを楽しんでいると、パパが僕を抱き上げた。ぬいぐるみは狼さんじゃなくて、兎さんに変わる。よくわからないけど、アモンがそう決めたみたい。狼さんはベッドでお留守番になった。


 一緒にご飯を食べて、果物を噛みながら窓の外へ目を向けた。灰色の空は寒そう。ぶるりと身を震わせた瞬間、何かが頭の中に出てきた。


 怖い顔の人が僕を叩こうとした。僕はパパに捨てられたって言われて、あれ? 違う? そうじゃない。僕じゃない僕が言ったんだ。もうパパは僕を捨てた……?


「落ち着け、カリス。俺を見ろ……わかるか? バエルだ。パパだぞ」


 繰り返される言葉を、同じように繰り返す。僕に触れているのはバエル、僕のパパで僕を抱っこしてる。


「賢いいい子だ。俺とカリスはひとつだ。カリスがいないと俺は死んでしまう。わかるか? ずっと一緒だ」


 僕とパパは一緒。ずっとずっと一緒で、ひとつ。だからパパの側にいてもいい? 僕のこと邪魔で捨てたりしないよね。


「大切な我が子の手を離す親はいない。カリスには父親の俺だけ。わかるか?」


 そう、昔の名前がない僕には母親がいたけど、今のカリスにはパパがいる。パパは僕を大切にして、ご飯をくれて、一緒に寝る。よかった、僕はパパの子だ。


「そう、カリスは俺の子だ。ずっと一緒にいる」


 繰り返される言葉に安心して、にっこり笑った。パパも笑ってくれたけど、綺麗なハンカチで僕の目を押さえる。あれ? いつ泣いてたんだろう。頬も濡れてる。優しく拭いたパパが、濡れていた頬にキスをくれた。


「怖くなくなるまで、ずっとパパにくっついているか?」


「邪魔じゃない?」


 お前は邪魔だってよく言われたけど。


「カリスならいつでも歓迎だ。嬉しいぞ、全然邪魔じゃない。むしろいつでも抱っこしていたい」


 パパは僕に嘘を言わない。だからぎゅっと腕に力をこめて抱き着いた。あったかい。パパに抱っこされて今日は一日過ごすと決めた。パパの腕は僕の宝物だよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ