57.肩車とブランコ、すごく楽しい
お城に着いたら、入り口でアガレスが待っててくれた。嬉しくて遠くから手を振る。パパが笑いながら、僕を肩に乗せた。落ちるかと思ったけど、魔法で支えてるから大丈夫みたい。ふわふわしながらパパの肩に両足を出して、首を挟むみたいに座った。
「高い! 遠くまで見えるよ、パパ」
目の前にあるパパの頭を抱っこする。黒い髪がきらきらして、銀のツノがカッコいい。パパの肩の上は楽しかった。僕の両足をがっちり掴んでるパパが歩くと揺れる。それが面白かった。
「すごい! すごいや。僕が大きくなったみたい」
「カリスは大きな存在だからな、ぴったりだろう」
アガレスの前まで来て、下されちゃった。このまま行くとダメなのかな。
「城内での肩車は危険ですね」
危険は危ないことだよね。
「さすがに城の扉枠にぶつかるぞ」
扉のところにある縁のこと? パパの上に僕が乗ったら、届いちゃうのかも。危ないならやめよう。肩車という名前はしっかり覚えた。またお願いするときに必要だから。それにパパとアガレスと両方の手を繋いで歩きたい。
「パパはこっち」
右手を繋ぐ。左手をアガレスに出して、にっこり笑顔を向けた。
「アガレスも」
「おや、私も混ぜてもらえるのですか? 嬉しいですね」
アガレスもパパと同じ。僕と手を繋ぐのを嫌だって言わない。嬉しくて両手を揺らしながら歩いた。僕が遅いから合わせて歩いていたパパが、頭の上でアガレスに何か言ったみたい。途端に僕が浮き上がった。両手が上に上がって、僕の足が浮いてる!
「なに? これ、楽しい」
「楽しいのが一番だ。カリス」
「ブランコで通じますよ」
「ぶらんこ? 初めて! 僕がゆらゆらしてる」
足が届かないけど、パパとアガレスは僕を離したりしないよ。だからぶら下がっても平気。
「重くなったら言ってね」
「軽すぎて怖いくらいだ」
「そうですね、もっと食べて重くなったら言いますよ」
僕が重くないなら良かった。二人でゆらゆら前後に揺らしてくれる。お城の廊下ですれ違った鱗のある人が「楽しそうですね」って言った。大きく頷いて「楽しいよ」って返す。
このお城の人はいろんな姿をしてるから、僕が変でも許してるんだと思う。僕はツノも翼もないし、パパみたいに綺麗じゃない。それにアガレスみたいな毛皮もなかった。何にも持ってないけど、鱗の人も毛皮の人も優しい。僕はこのお城が大好き。
「カリス、後でお土産を配るか」
「うん! アガレスにも買ったんだ」
「それは楽しみです」
階段もそのまま登って、僕はいつものお部屋に戻った。着ていたシャツを脱いで、ズボンも脱いで、お城用の服に着替える。襟に刺したお花は、花瓶に入れた。くるんと回るお花はお水があるから、何日も元気でいられるんだって。パパが選んだ服は、長い尻尾と大きな三角耳の動物だった。
「狐も似合うな」
これが狐さん? 三角の茶色いクッションを抱っこして、パパのお仕事の部屋に移動した。待っていたアガレスがお茶を淹れて、パパの前に置く。僕は赤いジュースだった。両手でコップを持って飲んでみたら、甘くて酸っぱくて、でも美味しい。
「美味しい、ありがとう」
お礼を言って、また一口飲んだ。




