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54.自分の分を忘れているぞ

 綿飴を買って、次のお店でキラキラ光る紙に包まれたチョコを買った。荷物がいっぱいになったところで、パパが何もない場所へ放り込んでいく。空中で浮いた穴に入れると、ぱっと消えた。


「どこへ行ったの?」


「いつも寝ている部屋だ」


「僕も入ったら、着く?」


「俺を置いて帰っちゃうのか」


 パパに言われて、慌てて首を横に振った。僕はパパと一緒だよ、勝手に帰ったりしない。ぐりぐりと強めに頭を撫でたパパが笑った。よかった。


「次はお菓子じゃない土産を探すぞ」


「わかった!」


 お菓子じゃないお土産は、何があるんだろう。僕は外でお買い物したことないから、何がお外で売ってる物か分からない。パパが入ったお店は、屋台じゃなかった。お家みたいに玄関がある建物で、中にいっぱい光る物が並んでる。


「いっぱい、きらきらだね」


「ああ、カリスも見たことあるはずだ。部屋に花を飾った花瓶があっただろう」


 この店の商品だと言われて、よく見ると細長い首で下がぽっちゃりした入れ物があった。お水を入れて花を刺す花瓶だ。下ろしてもらい、パパと手を繋いだ。触ったら壊しちゃいそうで怖い。


「壊しても構わん、気になる物があるか?」


 壊したらお店の人は困ると思うけど。パパが買って帰るのかな。うろうろと歩いて見回す。お水やジュースを飲むときに使うコップ、平べったいお皿もあった。奥に棚があって、小さな物が並んでる。こっちのコップより、キラキラしてるね。


「あれか? 上も見えるように抱き上げてやろう」


「ありがとう! すごいきらきらだよ」


 お店の人は後ろについてくるけど、にこにこしてて何も言わない。自由に選んでいいみたい。見つけた棚は、小さなお人形があった。後ろに羽の生えた人や、動物の人、動物だけもある。絵本みたいだ。いろんな物が並んでる。小さいけどそっくりに作ってた。


「僕、これがいい」


 パパに似た羽のついた人を指差す。パパみたいだから、これをいつも見える場所に置きたいの。そうしたら、パパが他にはいいのか? と尋ねた。アガレスっぽい狼、マルバスみたいな猫、アモンやセーレは兎と鳥にした。牛はなかったの。


「自分の分を忘れているぞ」


「えっと……僕のはパパが選んで」


「なるほど。そうきたか」


 笑いながらパパが選んだのは、他のより小さい動物だった。後ろの足で立ってて、大きな尻尾がついてる。


「これなに?」


「リスという。小さいがすばしっこくて賢い、カリスにぴったりだ」


 パパには僕がいい子に見えてるの? 嬉しい。選んでもらったリスを手のひらに乗せて、揺らすとリスが輝いた。下ろしてもらった床の上を歩いて、もっと光が当たる場所を探す。


「僕、リス?」


「今夜はリスが出てくる絵本を読むとするか」


「ありがとう」


 お礼を言うと心がぽかぽかする。パパにありがとうを言えるのが楽しいし、言われても嬉しい。ありがとうが言える時は、幸せなんだと思う。僕が泣いたり苦しくないから出てくる言葉、大切な一言だった。


「リスの出る絵本を選びに行こう」


 そう言ったパパだけど、お店の人に何かお話をしてた。いっぱい買ったから、お金なくなったのかも。しょんぼりしながらリスを返そうとしたら、僕はリスと一緒に抱っこされる。選んだ光る動物達を箱に入れてしまうので、僕もリスを渡した。お部屋に帰ったら、すぐに出してあげなくちゃ。

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