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47.甘いジャムはきらきらしてる

 パパもアガレスも、難しい言葉をいっぱい知ってる。朝からベランダで失敗した僕だけど、ご飯を食べた後はお勉強をするんだ。ちゃんと言葉を覚えて、パパのお仕事を手伝いたかった。


 テーブルに並んだパンの近くに、赤と黄色の瓶がある。きらきらしてて、色が透き通った感じ。ジャムって言うの。パパがパンのお皿に乗せてくれた。銀の匙で掬って置いたジャムは、どこから見ても綺麗だった。


「パパ、これどうするの?」


「パンに塗って食べてみろ、お茶に入れても美味しいぞ」


 パパはアガレスに怒られてから、うまいと言わなくなった。品が良くないお言葉だって聞いたけど、僕はうまいの方がパパに似合ってると思う。


 パパがお茶に赤い方を入れてくれた。匙を受け取って、パパを真似てぐるぐる回す。どんどん赤いのが小さくなって、底の方に丸い粒だけ残った。


「それは苺か」


 ジャムは苺味で、中に入ってた苺は溶けないと説明される。口を近づけたら、甘い匂いがした。熱いからゆっくり飲む。お茶の味がいつもと違うよ! 甘くて、少しだけ酸っぱくて、初めて飲んだ味だ。最後まで飲むと、苺が僕の口に飛び込んだ。噛むと温かくて柔らかい。じゅわっと甘いのと酸っぱいのが広がった。


「美味しいね」


「よかった。パンに塗って食べてみるか」


 パンに塗るの? 言葉通り、パパは匙で掬ったジャムをぺたぺたと伸ばした。パンの上が赤と黄色になる。両方試してみろと言われて、まずは黄色い方を齧った。これ、レモンやオレンジの飴と同じ味だ。細い紐みたいなのが入ってた。


「それは柑橘の皮だ。甘く煮てあるから透き通っているだろう」


「うん、きらきらしてる」


 赤いのは苺で甘かった。お茶の時は少し酸っぱかったけど、パンに塗ると味が甘いだけ。不思議だな。両方食べていたら、サラダやお肉を差し出された。


「あーん」


 口に入れてよく噛む。僕は噛んでる時間が長いから、その間は静かになっちゃう。パパはスープを飲みながら、時々僕の食べた具合を見てる。食べ終わったのを待ってたパパにスープをもらい、いつもと違う味に驚いた。色が茶色で透き通ってて、ふわっと魚の匂いがする。スープには白いお魚が入ってた。魚の身も一緒に口に入れて、噛みながら飲むと忙しいね。


「今日は仕事だ、隣で勉強を頑張れ」


「わかった」


「お昼の後は絵を描いてもらおう。皆がカリスの絵を楽しみにしている」


「皆って誰?」


 僕の絵を見たい人がいるの? 驚いて尋ねたら、僕の知ってる人の名前が並んだ。アガレス、マルバス、アモン、セーレ、ウヴァル……パパもだって。お勉強の後、何の絵を描こうかな。


 わくわくしながら、甘いジャムのパンを口いっぱいに押し込んだ。

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