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37.名前が書けたよ

「出来た!」


 寝る前に最後に書いた文字は曲がってない。僕の名前がちゃんと並んでいた。見本のアガレスの書いた文字と同じ。僕の名前だよ。


「おお、綺麗に書けている。さすがは我が息子だ」


 パパがいっぱい喜んでくれた。僕も嬉しい。何かできるたびにパパもアガレス達も喜ぶ。同じ気持ちになるのは、気持ちがいいし楽しかった。もっと頑張る。


「明日は俺の名を覚えてくれ」


「うん!」


 明日はパパの名前、次はアガレス達の名前も。それからご飯を運んでくれる人や、庭の案内してくれる人も。いっぱい覚えたいんだ。時間はたくさんあるから、ゆっくり覚えなさいと言われた。


 僕の体は悪魔になる。それはパパ達と同じになること。体はゆっくり変わるから、時々調子が悪くなる。その時は我慢しないように言われた。隠してもパパにはバレちゃうと思う。でも自分でちゃんと言う約束をした。約束がいっぱいあると、その間は安心だから。


「ほら寝よう」


 パパが横になって僕を待ってる。お仕事したから疲れたのかな。パパの隣に寝転がると、ぎゅっと抱き締められた。暖かいね。足の先からお腹も胸も顔も、全部パパにくっついてる。じわじわと温かいのが伝わって、僕もパパと同じ温度になるの。この時間が好き。


 最近好きなものが増えていく。お風呂の泡だったり、餌じゃないご飯だったり、飴もそう。チョコは明日のおやつに約束した。約束も好きだし、パパ達も大好き。楽しいし嬉しいことがいっぱい。


「まだ起きてるのか」


 くすくす笑うパパに抱き着いた。僕の手はまだ小さくて、パパの背中に届かない。翼がある背中を撫でたいけど無理。いつか届くようになったら、寝る時のパパを今の僕みたいに抱っこしたいな。


 ふわふわした気持ちでそう思ったのが最後、ゆっくりと眠る。もう悪い人は夢に出てこないと思うよ。パパが見張っていてくれるんだ。僕の夢に勝手に出てきて叩いたりしないように、パパが守ってくれるんだって。だからぎゅっとして、隙間なくくっつく。それがなくても、僕はパパとくっつくの大好きだけど言わない。


 とんとんと背中を叩く手を合図に目を閉じる。痛くない叩くは初めてだった。最初は驚いたけど、パパは僕に痛いことしないから平気。明日もその先も、一緒にいようね。

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