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31.ちゃんとパパの子に見えるかな

 お風呂に一緒に入るのも慣れた。いつもは夜寝る前に入るのに、今日は朝からお風呂で洗ってもらう。初めてのお風呂は泡がすぐ消えてたけど、今はすぐに泡が出るの。僕の体が慣れて来たのかな。


「流すから目を閉じろ」


 パパの声を合図に目を閉じる。上からお湯を掛けて泡を流すんだよ。中に入らないように耳を両手で塞いで、ちょっとだけ下を向く。そうすると息が簡単なの。これもパパに教えてもらった。


 さっと泡が流れ、いつもと同じもう一回。それから最後に一回。これで泡が取れる。パパが僕を抱っこして膝に乗せたら、僕は顔をあげるの。柔らかい、タオルって名前の布で顔を拭いてもらう。ここでやっと目を開けてもいい。お膝に座る僕は、パパが泡立てた石鹸で、体も綺麗に洗われた。魔法でもいいけど、気持ちいいからお風呂の方が好きなの。


「よし、出るぞ」


「お湯に入らないの?」


 びっくりした。いつもお湯に入って指で数えるのに、そのまま出るのは初めてだね。僕を抱っこしたパパが大きいタオルで僕を包んで、髪や体に残った水を乾かしてくれた。魔法の風だからすぐ乾く。


「朝だからな、これから着替えて皆に顔を見せる仕事がある」


「パパはお仕事?」


「カリスも一緒だ」


 僕も一緒のお仕事なんだ! どきどきする。パパの息子ですって知らせるお仕事だから、一緒に挨拶するみたい。僕、ちゃんとパパの子に見えるかな。パパに似合わないと言われたらどうしよう。


「安心しろ、変なこと言う奴がいたら、アガレスが許さない」


 アガレスは怖くない人なのに、許さないこともあるんだね。そう言ったら、パパが変な顔をして頷いた。もしかしたら、アガレスも怖い顔することある?


「袖を通して」


 言われるまま、シャツに手を通した。いっぱいひらひらが付いて、ボタンが金色に光ってる。全部留めたら、首にリボンを飾った。今日は赤じゃなくて青。紺色のズボンを履いたら、上に布が被ってた。スカートみたいだね。靴下は黒、爪先が丸い青い靴を履いた。これ、リボンと同じ青だ。


「どれ、見せてみろ」


 絨毯の上でくるりと回る。いつも新しい服を着た時にやると、パパが喜んでくれるから。今日もちゃんと回れた。小さい帽子を頭に乗せて、あとは上着も着た。紺色で金のボタンがいっぱい、黄色い糸で縁に飾りが入ってる。


「ああ、よく似合う。可愛いな」


「可愛い? 僕、可愛い?」


 そんなの、パパに出会う前は言われたことないよ。すごく嬉しい。口の中に「あーん」で飴を貰った。からころ転がる音がして、甘い香りがする。味は昨日のと違う。ベルトに小さなバッグが付いているけど、パパが飴を入れてくれた。


「食べたいときに食べろ。なくなる心配はしなくていい」


 僕知ってる。なくなったら、パパがまたくれるんだよ。昨日もそうだった。最後の一個だから舐めないでいたら、食べなさいって口に入れて、その後バッグに入れてくれたの。甘いのがいつもあって、僕が勝手に食べてもいいなんて。いつもお腹空いてた頃の僕に、教えてあげたいな。パパに出会ってから、僕はずっと幸せでお腹いっぱいなんだよ、って。

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