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27.食べさせてもらった

 起きあがろうとしたら、抱き締められていた。動けなくてもじもじ動いたら、額にキスされる。これはバエル……じゃなくて、パパだ!


「おはよう、カリス。よく眠れたか?」


「うん」


「もう悪い夢は見なかったようだな」


 僕が夢で泣いたから、パパは心配してくれたみたい。ぐっすり寝たけど、変な夢も怖い夢も見なかったよ。


「平気」


 先に起きたパパが僕を膝の上に座らせて、少し跳ねた髪を撫でてくれる。優しい手で、僕はパパの手が好き。叩いたり殴ったりしないし、とても綺麗だから。


「まだ綺麗に見えるか?」


 変なことを聞くパパ。笑ってるのに、泣きそうな顔だった。だから大きく頷く。本当に綺麗なのに、どうしていつも悲しそうになっちゃうのかな。


「よし、食事にしよう。今日はアモンが新しい服を持ってくる」


 食事はご飯を食べること。餌は食事じゃない。僕はもう餌を食べなくていいんだって。美味しいご飯を食べて、ふっくらしないといけないの。パパの手は大きくて指もしっかり太い。僕は細くて骨と皮だけ。きっと抱っこしても硬いのかも。


「カリスは妙な心配ばかりする」


 くすくす笑いながら、パパがまたキスをくれた。今度は左の頬、それから右の頬と鼻の頭も。擽ったくて笑ったら、パパが嬉しそうだった。前は僕が笑うと奥様が怒ったけど、今はパパが喜んでくれる。だからたくさん笑えたらいいな。


 着替えはパパが手伝ってくれた。この羊を脱いで、次は猫だ。尻尾と耳が付いた服を着たら、手が出なかった。足は出たけど……変なぶかぶかの靴を履く。あ、この靴猫の足みたい。ぬいぐるみに似た柔らかい靴はふかふかだ。手もふかふかのぬいぐるみが付いてた。


「ぬいぐるみ……近いが少し違う」


 うん、狼は羊の服にくっついてなかったけど、この手は付いてる。指を握るとふかふかも動いて面白い。抱っこされてご飯を食べる部屋に移動した。長い机があるの。広い部屋の端から端まで届く、長い机の先にパパが座った。僕は膝の上だ。


「今日はアガレス、いないの?」


 こないだは一緒に食べた。マルバスもいないね。きょろきょろしたら、机の反対の方に知らない人がいた。


「初めまして、カリス様。ウァサゴと申します」


「カリスです」


 優しい声だ。近づいて挨拶してくれたのは、背中に白と黒の翼があった。鳥みたいな羽で、僕から右側は白、反対は黒。同じ色じゃないんだね。カッコいい。


「白と黒の羽、すごい」


「褒めてくれてありがとうございます」


 にっこり笑ったウァサゴは一礼して離れた。メガネをしてるの。黒と赤を混ぜたような色の目と髪で、吸い込まれそうだった。先に食べ終わってたのか、ウァサゴは紅茶を飲みながら本を読む。僕が挨拶している間に、ご飯が運ばれて並んでいた。


「きちんと挨拶出来て偉いぞ。さあ、今日はどれから食べたい?」


「僕が選んでいいの?」


「もちろんだ」


 黄色い卵とスープ、それからあの白いパンも! 指差して選んだ物を小さなお皿に取ってもらった。でも僕、この服だとご飯食べられないね。


「安心しろ。ほら、あーんだ」


「あーん」


 言われるまま繰り返して口を開けたら、卵を挟んだパンをパパが差し出す。齧ると、スープを銀の道具で運んでくれた。飲んで食べて、また飲んで。用意されたご飯を食べ終わった。パパは僕の食べてる間に、ぱくっと口に入れる。早いし、上手だし、僕と違って溢さない。僕も早く上手になりたいな。


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