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22.羊と狼とぬいぐるみ

 いろいろ選んでくれたアモンだけど、靴はなかった。理由を聞いたら、陛下に聞いてごらんって笑ってる。陛下はバエルで、今日からパパ。いっぱい名前があるのは、バエルが綺麗で優しいからだね。あ、パパって呼ばなくちゃ。


「しばらくは抱いて歩くから、カリスの靴はゆっくり選ぼう」


「うん、僕重いよ?」


 その途端、全員で首を横に振られた。めちゃくちゃ軽いとか、羽根みたいって言われる。そんなに軽くないよ。でも重くないならよかった。パパが疲れると困るから。


 僕を抱っこしたパパが、動物の姿をした人形を掴んだ。灰色で、牙がある動物。犬?


「これは狼よ。羊を食べてしまうのに、逆に抱っこしちゃうカリスって可愛いでしょ」


 興奮したアモンの言葉に「わかります」とマルバスが同意する。アガレスも頷いた。よくわからないけど、狼を抱っこしてる僕がいいみたい。ちゃんと抱っこしてるね。動物の人形は「ぬいぐるみ」で、この動物は「狼」僕が着てるのは「羊」。新しい言葉がいっぱい。


「カリスちゃんの情緒教育の為に、絵本をたくさん読んであげてね」


 まだ服を作り足りないと言い置いて、アモンは帰っていった。機嫌よく踊るみたいに帰る後ろ姿に手を振って、僕は狼のぬいぐるみを抱っこする。ふわふわで柔らかくて、いい匂いがした。何の匂い? くんくんと鼻を動かす僕の横から、パパが顔を寄せた。


「ふむ、匂い袋が入っているのだろう」


 いい匂いがするのは、アモンが夜によく眠れるようにって御呪いしてくれたから。それが嬉しくて、もっと抱き締めた。狼は牙があるけど、ツノはないね。犬に似てるかも。黒い目もつるんとした石で出来てる。これを抱っこして寝ると気持ちいいかも。


「他の服を着たカリスも楽しみですね」


 微笑んだアガレスが、机の服を隣の部屋に運んでくれた。お礼を言うと喜ぶ。僕もお礼は嬉しいから、やっぱり「ありがとう」はいい言葉だと思う。パパも褒めてキスをくれた。


 パパはまだお仕事がある。僕も手伝う気でいたけど、なんか眠くなっちゃった。目をゴシゴシ擦る手を掴んで、傷になると止められる。優しく拭いてくれる。パパの手はいつも優しくて、爪が長いけど綺麗なの。鋭い爪は奥様も同じだったけど、いつも僕を傷つけた。でもパパはそんなことない。僕を撫でる時、ふわっと柔らかいんだよ。


「カリスは膝でお昼寝が仕事だ。いいな? ちゃんと寝るんだぞ」


 そんなお仕事もあるの? こてりと首を傾け、そのまま眠くなって欠伸が出て……パパの大きな手が僕の顔を包んだ。温かくて気持ちいい。この手が大好き、ぬいぐるみを抱いた手を伸ばしたら触れる。僕は指の先をきゅっと掴んだ。解かれないことが嬉しい。汚いと罵って蹴らないのもパパだからだよね。


 うとうとする僕は、寝ちゃう直前に誰かの声を聞いた。たぶん、僕が知らない人。起きる頃には忘れちゃいそう。

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