表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/214

20.皆で食べるとうまいね

 手を拭いた布は、お花の匂いがした。だから食べ物を掴んでも、平気だと思う。皆も手で食べるのかな。不安になって顔を上げると、アガレスも手で掴んだ。隣でマルバスが黄色い卵を間に挟む。その時、手を使ったの。


 僕は安心して頬が緩む。これなら僕の食べ方がおかしくて、バエルが恥ずかしいことないね。バエルが先に食べたから、僕も同じように齧った。まん丸いパンの真ん中を切って、野菜とハムが入ったご飯はうまい。


「うまいね。バエル」


「そうか、よかった。卵も入れるか?」


 頷いた僕は卵を掴んで入れてみる。乗せ方が悪いのか、落ちそうになったらバエルが直してくれた。よかった。落ちたらバエルが恥ずかしいから。


「恥ずかしくないぞ、ほら。マルバスが落とした」


 大慌てでマルバスが齧ったら反対側から卵が出てきた。お皿に落ちる前に手で押さえたけど、あれは僕には無理。絶対に落ちちゃうもん。


「カリスの方が上手に食べるな。うまいだろ」


「うん」


 頷いた僕の正面に座るアガレスが、がくりと肩を落とす。それからバエルに「うまいではなく、美味しいと言ってください。カリスに言葉遣いが移ります」と言った。怒ってるのかと思ったけど、顔は笑ってるから平気みたい。気にせず、残ったパンも齧る。


 マルバスは今度は上手に食べてた。ハムの間に卵を乗せたんだけど、ハムを齧ると卵が奥へ滑る。このまま食べていくと、マルバスみたいに反対から出ちゃう。そうだ! 反対から食べたら平気かも。


 逆方向から齧ったら、卵がお皿に落ちちゃった。バエルがひょいっと拾って、自分の口に放り込む。え? いいの? 


「一緒だと言ったであろう?」


 そういって片方だけ目を瞑った。すごくカッコいい。真似してみようと目を瞑ったら、両方閉じた。もう一度やったけど、やっぱり出来ない。これは綺麗な人限定かも知れないから、僕は出来ないのかな。


「大人になればウィンクも出来るぞ」


 バエルに言われて、僕が子どもだからだと分かった。バエルみたいに大きくなったら、出来るようになるんだね。ウィンクって名前も覚えておかなきゃ。大きくなったらバエルに教えてもらおう。残ったパンを全部食べて、卵が落ちそうになったら手で押さえた。


 最後は全部口に放り込んだの。頬がぱんぱんに膨らんだけど、痛いよりうまいが一杯で嬉しい。何度もよく噛んで、きちんと飲み込んだ。待っていたバエルが渡してくれたコップの中身は、果物の匂いがする。甘い匂いだった。


 初めて見るピンクの液体を流し込んだら、甘くて口が溶けそう。こんなうまい飲み物があるなんて、僕知らなかったよ。バエルと出会ってから、いろんなことを見たり聞いたり。


「ア、アガレス様……あれ、本当に陛下ですよね?」


「間違いなく本物の陛下です。先程はよくやりました」


「いきなりの指示はびっくりしましたけど、うまく落ちてくれてよかったです」


 ひそひそと話すアガレスとマルバスに首を傾げ、僕は納得した。あの2人、仲がいいんだね。お友達なんだ! 僕とバエルはもっと仲良しなんだから、分からない話してても平気だよ。


「そうだな。カリスは賢いぞ」


 ご飯を食べただけなのに、たくさん褒めてくれた。汚れた手を拭いたところで、ノックの音がする。もしかして、アモンがお洋服持ってきてくれた? わくわくした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ