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外伝7−4.ケンカは仲直りで終わり

 パパはタブリスとセーレに怒鳴った。


「幼子の前でケンカするなど、愚かにも程がある! カリスの気持ちを考えろ」


 僕の気持ち? まだ潤んだ目で二人を見ると、バツが悪そうな顔で俯いてしまった。僕を見ない。やっぱり僕が悪いんだ。肩を落として唇を尖らせる。泣きそうなのを必死で我慢するけど、鼻水出ちゃうし。拭いても涙が落ちた。


「ごめんね、カリス様が悪いんじゃないから」


「そうだよ、僕とセーレはその……ちょっと、その……仲が良すぎてケンカしちゃうんだ」


 セーレが謝ってくれて、タブリスはよくわからないことを言った。仲が良すぎるとケンカするの? 僕とパパはしないよ。でも、アガレスとアモンはケンカしてた。


 混乱して首を傾げた僕は、駆け寄ったベロに顔を舐められた。鼻水も全部。それをみて顔を引き攣らせたニィが変な声を出す。唸るみたいな感じで、うぎゃぁって。


「仲直り、する?」


 しゃくり上げながら尋ねると、二人はお互いを見てから頷いた。


「じゃあ、お手手をっ、繋いで……っく。それでごめんね、して」


 変なところでしゃっくり出ちゃった。伝わったかな? パパは僕を抱き上げて、ベロに舐められた顔を拭いてくれる。このハンカチ、ピンク色のお花が入ってるね。


「気に入ったならカリスにやろう」


「ほんと? ピンクの、お花……ひっく」


 またしゃっくりがでる。これ、続くと苦しいのに。パパが僕の背中をとんとんと叩いてくれて、少ししたら落ち着いてきた。涙も止まったし、しゃっくりも減ってくる。パパの手は魔法みたい。


 落ち着いた僕は、パパの腕の中で眠くなる。そこで思い出したのは、作る途中のゼリーだった。


「あ、セーレ! ゼリーにイチゴ入ってない!!」


 入れる前にケンカが始まって、おろおろしてる間に固まっちゃったの。ごめんなさいして、待つ。セーレはじっと見た後、にっこり笑ってゼリーの上にイチゴを並べた。そこへクリームも絞る。


 赤いゼリーに白いクリームは綺麗だね。上に乗せたイチゴもツヤツヤで美味しそう。


「これでいいですよ。食べたら一緒ですから」


 お腹に入れば一緒と笑うセーレにお礼を言って、僕達の分だけもらう。残りはお城で働く人が食べるんだって。パパの腕から降りて、手を繋ぐ。それからベロの背中に乗ったニィを撫でた。


「もうケンカしないでね。僕はケンカ好きじゃないの」


「ええ、大丈夫ですよ」


「そうだよ、もうケンカしないから」


 二人が約束してくれたから、僕は笑顔で手を振った。泣いた後は頬が変な感じで、目が痛くなる。鼻も出るし、僕は泣くのは好きじゃないの。


「俺もカリスが泣くのは嫌だ」


「パパも? じゃあ、泣かない」


 並んで階段を登る。お部屋に戻って話を聞いて、マルバスが無言で立ち上がった。けどゼリーを食べるから、お出かけは後にしてもらう。そこへミカエルが来て、ゼリーをセーレのところへ取りに行ってもらった。僕達の分だけ持ってきたから足りないの。


 ミカエルが戻ったところで、パパのお膝で口を開ける。


「あーん」


 パパのスプーンで食べると、いつも美味しいよ。僕もパパに「あーん」をして、仲良く食べた。夫婦になるとケンカする人が多いから、僕はパパと夫婦にならない。そうしたらケンカしないよね。


 ぶっとパパが吹き出して、びっくりした。さっきのハンカチでパパの顔を拭いたよ。何にそんなびっくりしたんだろう?

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