外伝6-3.ありがとうとごめんなさい
起きてすぐ、パパに抱っこされてると気づいた。毛布を巻いた僕をパパが抱っこして、ベッドに座っている。見るとベロやニィもベッドの上にいた。僕を抱いたパパの腕の隙間から、ベロもニィも僕に張り付いてるんだ。温かくて嬉しくなる。
「パパ」
「起きたか……まだ痛い場所はあるか?」
「わかんない」
正直に答えた。パパの腕の中にいる今は、背中も痛くない。昨日は大きく息をすると痛かったけど、平気になってた。治してくれたんだと思う。毛布の中でもぞもぞ動いて、パパが手伝ってくれたから抜け出た。シーツに転がったら、ベロが僕の顔を舐める。
「きゃぁ! ベロ、ニィまで」
顔中舐めるベロを押しのけてたら、ニィに手を舐められた。ベロは柔らかくてぬるっとしてるけど、ニィはざらざらしてる。転がって逃げても追って来る二匹に舐められ、僕はずっと笑ってた。擽ったいんだよ。疲れてきた頃、パパが僕を抱っこしてベッドを降りた。これでベロもニィも届かないね。
笑い疲れた僕を抱いて、パパはソファに移動した。ベロとニィが慌てて付いて来る。ソファに下りた僕の足は、またベロに舐め回されてしまった。
「っ、パパ、足ちょっと痛い」
「ああ、治しておこう」
ふわりと温かな感じがして、パパが手を当てた場所が痛くなくなった。その後パパに教えてもらったのは、ゲーティアで雨が降る日はお出かけ出来ないこと。濡れると具合が悪くなるんだって。お店も皆お休みになるんだよ。
今回は僕が落ちた後で雨が降ったから、パパや探してくれた皆も魔法が使えなかったみたい。どうやって帰ったのかと聞いたら、羽を出したと言われた。飛んで帰ってきたら、パパが隠してた羽が皆にバレちゃう。
「バレてもいい。カリスが痛くないのが一番だ」
優しく言われて、鼻の奥がつんとした。涙が出そう。僕ね、言いたいことがいっぱいあったの。
「パパ、ありがとう。それとごめんなさい」
「ああ、謝ることはない。俺が雨に気づいていたら良かったんだが」
普段魔法が使えるから油断した、と眉尻を下げて悲しそうな顔をする。そんなパパの顔に手を伸ばして、下がった眉を上に引っ張った。悲しい顔をしないで。僕が悪かったの。
「あのね、いっぱいごめんなさいしたら元気になる?」
「いや。もう元気になりそうだ」
パパが笑いながら僕を抱っこした。さっきより強くぎゅっとされて、僕は嬉しくなる。僕も手を回してぎゅっとした。
「おや……邪魔をしてしまいました」
困ったような声に顔を上げたら、アガレスとアモンがいて。後ろでマルバスがくすくす笑ってる。皆にも「ありがとう」と「ごめんなさい」をした。セーレが用意してくれた温かいプリンを食べて、プルソンと一緒にお手紙を書いた。
騎士の人にも書いたから二日もかかったけど、喜んでくれるかな。僕は悪魔になってから、すごく幸せだよ。パパの子でよかった。




