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外伝6−1.我慢するよ、泣いたりしない

 薄暗くて怖くて、涙が溢れた。パパはどこ? 擦りむいた膝を抱えて蹲った。僕がいけないんだ。パパが手を繋ごうって言ったのに、一人で歩けると思ったの。はしゃいで、足元の根っこに躓いて……転がり落ちちゃった。


「カリスっ!?」


 叫んだパパの焦った声と、伸びた手。僕は掴めなくて、そのまま落ちた。打った背中が痛いし、よく見たら片方の足が変な方を向いてる。痛い足を抱っこするみたいに丸くなって、しゃくり上げた。


 僕が悪いの。パパは注意してくれたのに、嬉しくて聞いてなかった。いつも大切なことを教えてくれるパパは、心配してるかな。落ちたところは真っ直ぐな岩で、全然掴めるところがない。僕は登れないし、お空も飛べなかった。


 どうしてすぐ助けに来てくれないんだろう。もう僕なんていらないのかな。言うこと聞かないから、嫌いになった? 痛いのと悲しいのでぐしゃぐしゃの僕に、冷たい雨が降ってきた。冷たい、寒い。でも動けない。寝転がったまま自分を抱っこして、そのままで待つ。


 僕はパパの息子だから。我慢できるよ、泣いたりしない。頬を流れてるのは雨だもん。


「いたっ! いたぞ!!」


 叫ぶ声がして、すぐにパパの声も聞こえた。


「カリス! 無事か? ああ、痛かっただろう」


 パパの方が痛そうな顔で、僕の上に上着を掛けてくれた。パパが着てた服はまだあったかくて、僕は鼻水と目から溢れる雨を擦りながら謝る。


「ごめ、なさぃ。僕、パパの、聞いてなくて……」


 黙って聞いたパパは雨で濡れていく。上着を僕にくれたから、パパが濡れちゃうよ。返そうとしたら、ぐるっと上着で巻かれちゃった。手と足も全部一緒に動かない。


「治療は上でする。帰還するぞ」


 パパがそう言って背中に翼を出した。ずっと隠してて、人に言ったらいけないよと言ったのに?


「カリスが風邪を引く方が嫌だからな」


 困ったような顔でそう言ったパパは、ふわりと空を飛んだ。そのままお城まで飛んで帰るみたい。いつもみたいに、えいっと移動しなかった。冷たいはずの雨も、パパと一緒なら平気だ。


 さっき駆けつけて僕を見つけたのは、騎士の人だった。たぶん、アモン達も僕を探してくれた。悪いことをしたから、ちゃんと謝らなくちゃ。考えてる内容がぐるぐると同じになってきて、僕は熱くてはふぅと息を吐いた。


「熱か。すぐに治してやるからな」


 パパの手が額に触れて、冷たく感じる。いつもはパパの方が温かいのにね。でも今は冷たい方が気持ちいい。


 お城が見えて、上の塔に降りたパパはすぐにお部屋に向かった。濡れたお洋服を脱いで、体をよく乾かしたら傷の手当て。言葉通り、パパが手を当てると痛みが消える。傷と腫れた紫の色は薬を塗ってもらう。魔法で治してもいいけど、僕が疲れちゃうんだって。


 うとうとしながら目を閉じて、暗くなったら怖い。慌てて目を開ける。パパの顔を見て安心した。そうしたらパパが隣に一緒に寝転ぶ。


「こうやって抱いているから、離れないぞ」


 ぎゅっと苦しいくらい抱っこしてくれた。ありがとうとお礼を言って、お水でお薬を飲んで寝る。苦いお薬だけど我慢したよ。僕が悪いんだもん。目を閉じても、パパの腕がわかる。だから僕もパパの腕を抱っこし返した。


 明日、いっぱい「ごめんなさい」と「ありがとう」をするからここにいてね。

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