表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

194/214

外伝2−3.今の生活も悪くない

 幼い主カリスが神だった猫ニィを連れ帰って半月、最近は散歩にも奴がついてくる。いい加減慣れて、同行に不満も感じなくなった。問題はニィはすぐへばること。歩けないと甘えた声を出し、カリスに抱っこされようとするのだ。


『くそっ、そこは俺の特等席だぞ』


『ふん、可愛い者勝ちだ』


 意味不明な理論を振り翳されたが、可愛さなら仔犬姿の俺も負けていない。普段は大きなニ頭の犬で過ごすが、散歩の時は仔犬になるべきか。真剣に悩む俺の頭上で、バエルが溜め息を吐いた。


「神とケルベロス、真剣に考える内容がそれか」


『何が悪い』


『いいじゃん』


 ニィと被った声に、カリスが首を傾げた。この子は悪魔になったというのに、未だ人間だった頃の意識が抜けていない。そのため犬や猫と会話が出来ると知らないのだ。知らない能力は、素質があっても使えないのが道理だ。教える気のないバエルを睨みながら、カリスの足に頬擦りした。


「ベロは大きくなっても可愛いね」


 同意を求められ、バエルは困ったような笑みを浮かべ曖昧に返事をする。にこにこと機嫌がいいカリスは、手を伸ばした。怖がる気配もなく、信じきった眼差し。以前なら、その信頼を裏切って噛み付くことに喜びを覚えたが、今は違う。カリスに信じてもらえることが誇らしかった。


 ふふんと自慢げに振り返ると、ニィは不満そうに顔を歪める。本性が出ておるぞ。鼻であしらい、カリスの小さな手に身を委ねた。優しく撫でて擽り、最後にもう一度丁寧に頭の上を撫でる。乱れた毛並みを直す指先が、耳に触れた。


 本来なら不快なはずの、耳への接触が心地よい。カリスが触れるなら、どこでも構わない。禁断の尻尾や腹も許そう。


「ベロ、ニィを運んでくれる?」


 頼まれたら主に従うのが、飼い犬の務めだ。いろいろ不満はある。自分で歩けよ、神なんだからと思わなくもない。だが右の頭でまず咥え、左の頭で手伝う。両方を撫でてくれたカリスの笑顔を見ながら、両方の口でしっかり捕まえた。これなら落とさず運べるだろう。


 大きい姿で散歩するようになってから、首輪は付くが紐は外された。というのも、魔族も天使も話が通じるのだ。人間の感覚を捨てれば、カリスとも話が出来る。いつか来るその日を楽しみにしながら、ペットとして愛されるのも悪くない。


『咥え方が気に入らん』


 頭と尻を噛んだ我らの頭に、いま文句を言うとはいい度胸だ。脅しを込めてぐっと力を加えた。びくりと揺れた後、じたばた暴れ始めニィ。


「ニィ、運んでもらってるんだから大人しくしてて」


 カリスに叱られ、がーんと顔に書いたニィが大人しくなる。というか完全に脱力した。ざまぁみろと思うより、同情が先に立った。


『それほど落ち込むな、強く噛まぬから大人しくしていろ』


『お、おまえの優しさなんて信じないんだからな』


 憎まれ口を叩くニィに笑いながら、俺は大きく尻尾を振った。ああ、そうだ。悪くない。俺は今の生活にとても満足していた。












*********************宣伝

『獅子の威を借る子猫は爪を研ぐ』


可愛い幼女は最弱皇帝陛下! 強過ぎる周囲を守られて、すくすくと成長中。ほのぼの系です_( _*´ ꒳ `*)_


https://ncode.syosetu.com/n1791hm/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ