187.ずっと僕のパパだと約束してね(本編完結)
神の座が空いて3年――僕は少し大きくなった。前より身長が、親指3本の長さ分も大きくなったよ。
「カリス様、こちらでしたか」
「どうしたの?」
「天使達との話し合いが終わりました。カリス様のご提案の通りです。良かったですね」
アガレスが知らせてくれた。パパはまだ天使と挨拶してるみたい。僕が大人なら隣に座れたんだけど、子どもだからダメだったの。早く大人になりたいけど、パパはゆっくりでいいと言った。悪魔は人間より成長が遅いんだ。僕は子どものうちに悪魔になったから、余計に遅いの。
「うん、良かった。ありがとう」
お礼を言ってアガレスと手を繋ぐ。お部屋に向かう僕の空いた左手を、ベロが舐めた。だからベロの頭を撫でる。その背中でニィはお昼寝中。べろんと伸びた形で落ちそうなのに、いつも大丈夫だった。ベロがちゃんと支えてるのかな?
二匹は仲が良くて、ずっと一緒だった。ベロも大きい姿で過ごすようになったけど、頭はひとつのまま。僕は二つでも平気だよ。平等に撫でてあげるのに。階段を登ってお部屋の前でパパに会った。
「パパ!」
「カリス、おいで」
抱き上げてもらう。僕が大きくなったから重いんだけど、パパはまだ軽いと笑った。もっともっと太って大きくなれって。僕が重くなったら、パパが抱っこできなくなるのにいいのかな? 大人になると抱っこしてもらえないと知ったのは、先日のこと。それから迷ってるの。僕はずっと子どもでいたい。
パパに抱っこしてもらって、一緒に眠って、ご飯やお風呂もずっと一緒。そのためには大きくならず、子どもの方がいいみたい。アガレスにもお礼を言って手を振り、お部屋のソファに座った。パパが隣に座ると、すぐお膝に乗せてくれる。
「カリスの言う通り、全員が承諾した。これで天界とゲーティアは同じだ」
「やった!」
天使が住んでる天界は上、僕達悪魔がいるゲーティアは下。その考えを消してほしいとお願いしたんだ。だって、ゲーティアはいいところだよ。優しい人がいっぱい住んでて、最近は緑もたくさんで砂漠も減っていた。
お互いにケンカしたり、いがみ合うのもやめて欲しいと伝えた。仲良くしたらいいと思う。ミカエル達も協力してくれて、天使と悪魔に交換で住んでもらったりした。全部がいい方向へ向かってる。
僕だけの考えじゃなくて、ベロやニィ、パパと話し合った。アガレス達も最初は嫌そうな顔だったけど、今はちゃんと意見を出してくれるし。セーレは天使の一人と結婚するの。
もういい年だからって言ったけど、花嫁のお洋服はアモンが作る。戦うことが減ったから、お洋服を作る時間がたくさん出来て喜んでた。僕の服もいっぱい増えたよ。大きくなると、服が入らなくなる。だから成長するのは贅沢だよね。
「パパ、僕ね……いつか皆で大きい輪になってカードゲームしたい」
「……カリスの希望なら叶えたいが、最大でも10人くらいにしないと、カードが足りないぞ」
そっか。皆でやったら楽しいと思ったけど、多すぎるとカードが1枚になっちゃうね。
「明日は剣術の稽古だったか?」
「ううん。魔法の練習の方だよ」
僕も少しだけ魔法が使えるようになって、アガレスに教わってる。プルソンは歴史の授業を始めて、アモンが剣術だった。セーレは結婚してもお仕事するから、お城に住むの。僕はお料理も覚えたいから、セーレに教えてと頼む予定だよ。
「楽しいことがいっぱい。僕、このお城でパパと一緒で幸せ」
「そうか。俺もカリスがいて幸せだ。こんなに大切な存在が出来るとは思わなかった」
すっぽりとパパの腕に収まると安心する。大好きなパパ、明日もその次の日も、僕のパパでいて――約束だからね。
The END or……
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半年近くお付き合いいただき、ありがとうございました。本編終了となります。少し外伝などを入れていく予定です。もし読みたいリクエストがあれば、早めにコメントや感想で送ってくださいませ_( _*´ ꒳ `*)_