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180.予言の子でもパパの子だよ

 ごろごろ過ごす僕とパパは、寝転がっておやつを食べた。いつもなら、叱られちゃうんだけど。今日は特別なんだって。誰も叱らないと言ってた。


 お昼の時間に朝のご飯を食べて、ベッドに並んで寝転がる。そこへ届いたおやつは、焼いた芋のお菓子だった。もぐもぐと口を動かす僕の、汚れた手をパパが拭いてくれる。


 ベロは隣の仕事のお部屋にいるの。新しく連れてきた猫と一緒にいるんだ。仲良くしてるといいけど。


「カリス、予言の子について話しておこう」


「うん」


 絵本の代わりに、パパがお話を聞かせてくれるの。僕はわくわくしながら、パパの腕に抱きついた。僕の銀髪を撫でてから、ゆっくり話し出す。


「これは実際にあった話だ」


 神が天使に逆らう者を、悪魔として地の底へ堕とした日。ひとつの予言があった。悪魔を率いて神に叛いた俺の前で、ある天使が告げたのだ。


 ――天使と悪魔の間を繋ぐ子が生まれる。その子は純粋な心で世界を見定め、新たなる扉を開く。その時、神は頂点の座を退くであろう。


「お前のことだ、カリス」


 きょとんとした。だって、僕が予言の子なの? 他にいると思う。僕は何もしてないよ。


「カリスの親は、一人でお前を産んだ。アザゼルという天使で、悪魔だ」


「両方なの?」


「そうだ。神に逆らい悪魔に堕とされたのに、天使であることを望まれた唯一の存在だった。アイツはそんな立場は望まなかったが」


 嫌なのにやってたのなら、悲しそうな顔はそのせいかな。多分ね、僕が起きる前に夢で会った人が、そのアザゼルって人じゃないかと思う。僕に似てた。


「夢で会ったのか」


「僕と同じ髪や瞳の人だけど、顔がよく見えなかったの」


「……間違いないな」


 そう言ってパパは笑った。少し泣きそうな顔だけど、その後で教えてくれた。アザゼルは顔のない天使と呼ばれることもあるんだって。顔はあるんだけど、誰にも見えないの。だから僕もわからなかったんだ。


「優しかっただろう」


「うん。頭を撫でてくれた」


「その人が本当の親だ」


「でも僕のパパは、パパだけだよ」


 パパだけが僕を助けた。産んで会えなくなったアザゼルが優しくても、手を触れて美味しいご飯を一緒に食べて、こうして抱っこするのはパパ。


 パパはくしゃっと顔を歪めた後、僕をぎゅっと強く抱いた。僕もパパの背中に一生懸命手を伸ばす。まだ手が短いし、体も小さいけど、パパを包めるようになりたいんだ。


「大好き」


 すごくすごく好きで、もうどう伝えたらいいのか分からないけど、僕の全部をあげるくらい好きだよ。パパが頷いたけど、今日はいつもより小さく思えた。


 戦った時のパパは黒い翼も白い翼も広げて、大きく見えたんだ。神と呼ばれた人より、ずっと大きかった。でも今は僕の知ってるより小さいパパ。僕が大きくなったのかな。


 後で身長を測ってもらおう。きっと、背が伸びてると思う。腕も少し長くなって。もっとパパを抱っこできるようになる。パパが僕を大切にするみたいに、僕もパパを大好きでいっぱいにしたい。


 明日はお仕事なのかな? 何もなかったら、一緒にお出かけしようね。

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