170.大人の会議は眠くなるの
僕が初めて参加した会議の後、アガレスやアモンの意見を聞きながら3回も会議をした。自分でちゃんと歩いて、一人で座って参加する僕も意見を言う。大人扱いされるときは、ちゃんと大人になるの。それ以外はベロのママで、パパの子どもだからね。
最後の会議はベロも入れてもらえた。大人扱いじゃなくて、ベロが寂しいからだって。会議に行く僕とパパを見送るベロが、すごい鳴くの。大きな声で吠えて、鼻を鳴らす。その騒ぎにパパが根負けしたと言ってた。根っこが負けるのは降参と同じ?
「会議に参加か、立派だな」
今日は天使も参加だった。最後の会議だからだよ。明後日に神を封じる予定だった。
「神は眠って動かない」
「せめて座してと言ってよ」
「どっちでも同じだ。動かないことが重要なんだからな」
「動いたらどうするのさ」
皆がいろんな意見を出すけど、僕はそれを聞きながら首を傾げる。どうして神を封じる話は、誰も否定しなかったんだろう。今だって別の話なら、否定する人が出るのに。うーんと考えながら、足元で丸くなったベロを撫でる。椅子に座る僕が撫でられるように、大きくなってくれた。届くけど、頭が増えたからたくさん撫でないとね。
全部の頭を撫でたら、また会議に戻る。
「神を封じる石は見つかった?」
「これでイケると思う」
「そうじゃなくてさ、前にバエル様を封印しようとした石があったじゃん」
「あれなら仕舞い込んだから、探して間に合うかな」
「見つけてよ!」
ケンカしてるみたい。僕は参加できないから、欠伸をして待つ。パパが僕を引き寄せて、マントで隠してくれた。こっそりお昼寝をする。パパは温かくて、いい香りがしていた。ぎゅっと抱き付いて、うとうとする。
人の声が聞こえるけど、なんて言ってるか分からなかった。でも知ってる声ばかりだと安心するよ。少ししたら声もあまり聞こえなくなって……僕は眠ってしまった。
「じゃあ、それで決まりだ」
「おう!」
誰かが物を落とした音で、慌てて起きた。見上げると、パパが指を唇に当てる。しー、静かにね。指示された通り、口を開かずに起き上がった。いつの間にか横になって寝てたみたい。
パパの合図でこっそり戻る。僕の背が低いから、誰も気づかなかったよね。ほっとしながら、天使の皆を見送った。ばいばいして会議のお部屋に戻ると、皆がにこにこと出ていく。そちらにも手を振った。
「僕、寝てたんだね。いけないと思う」
「俺は逆だ。カリスはお昼寝が必要だったから、自分の仕事をしただけだぞ。食べて寝て育つのが、カリスの一番の大仕事だからな。心配いらん」
そうなの? よかった。でもその後でマルバスから聞いたんだけど、僕が寝てるのは全員知ってたって……本当? 黙って見てるなんて酷いや。でも起こされてもまた寝ちゃったと思う。だから、僕は何も言わない、これも大人だよね。