168.僕の意見を聞いてくれた!
僕は大人の会議に出るのは初めて。ベロは寝る部屋で待っててね、とお願いした。不満そうにうろうろしてたけど、最後は分かってくれたみたい。顔をベッドの枕に突っ込んで、こっちにお尻を向けてた。
パパが言うには、分かったんじゃなくて拗ねたんだって。違いがよく分からないけど、いっぱい撫でてから部屋を移動する。
今日の僕は大人の会議に出るから、大人なの。パパに抱っこされて登場するのはダメだよ。ちゃんと歩くんだ。パパと手を繋いで、お部屋に入る。
「陛下、カリス様は?」
「僕、ここにいるよ」
アガレスが首を傾げたけど、僕は手を振って知らせた。驚いた顔をした後、目を合わせるためにしゃがんだ。
「失礼しました。ご自分で歩いていらしたのですね」
「うん。今日は僕も参加する大人だから」
「ええ、立派な大人です。今日はよろしくお願いしますね」
アガレスがちゃんと僕を認めてくれた。嬉しいな。パパを見上げると、パパも嬉しそう。一緒にお席に向かって、先にパパが座る。伸ばされた手を掴んで、思わずお膝に座りそうになった。
「パパ、違う」
「ああ、いつもの癖で。ここに座れ」
隣に座らせてもらう。登るときにお尻を押してもらった。両手を掛けてよじ登り、足を揃えて座る。くるっと向き直ったら、アガレスもマルバスも両手を僕の方へ伸ばしていた。その手は何をするの? 首を傾げると、咳払いして慌てて座る。
向かいのアモンは何か絵を描いてた。すごい速さで手が動いて「このデザインはいい」と呟く。ちょっと怖いけど、僕の服を作るアイディアみたい。可愛い服を作ってくれるから、僕はアモンが変わってても、苦い大人の味の料理を作っても好きだよ。
今日も僕はアモンが作った服を着てる。大人の会議だから、ちゃんと大人に見える服を選んでもらった。きちっとした騎士のお洋服に似てるけど、色が紺色なの。金色の飾りが揺れるのがお気に入りだった。
「では始める」
パパの宣言で、情報がいっぱい出てくる。こないだミカエル達が来てたのは、このためだね。もう天使と悪魔が戦わないようにするんだって。
「カリスはどう思う?」
身を乗り出して話を聞いていたら、パパに尋ねられた。僕が話をしてもいいの? 頷くパパの動きを見て、口を開いた。
「あのね、戦わないのはいいことだと思う。ケガしないし、痛くないよね。僕は誰も嫌な思いをしないのがいい」
「わかった。カリスの意見を参考にしよう」
嬉しいな。僕の話を皆が聞いてくれた。アガレスもマルバスも、ダンダリオンやアモン……もちろんパパだって。いい形で会議が終わって、皆で幸せになれるといいな。
「意見が出尽くしたので、一度休憩にします」
アガレスの一言で、休憩になる。お茶が運ばれてきて、お菓子も並んだ。僕のお茶の時間みたい。大人の会議でもお菓子やお茶が出るだなんて、初めて知ったよ。あれ? でもそうしたら……会議でお茶を飲んだのに、その後のパパは僕ともお茶を飲んでたの?