167.大人のお話に参加できるの?
パパとたくさんお話をしたミカエル達は「また来るね」と手を振って消える。僕も手を振って見送り、ベロと一緒にお城の階段を登る。後ろからパパが見守ってくれた。僕やベロが転ばないようにだよ。安心するし嬉しい。
お部屋のある階まで上がって、ベロは扉の前へ一気に走った。ご飯を食べたり眠る方のお部屋だ。お腹が空いちゃったかな。くんくんと鼻を動かすから、ご飯が届いたのかも。背伸びして扉のノブを引っ張る。回すやつは大変だから、下に押してから引っ張る形にしてもらったの。
工事はアモンがしてくれたよ。ご飯作るのは苦手だけど、大工は出来るって言ってた。大工って扉を交換する人のことかな。なんでも出来るの、凄いよね。中に入ったら、いろんな匂いがする。
ベロのお肉があって、僕やパパのご飯が机に並んでいた。まずベロの手と足を丁寧に拭く。そうしないと、汚しちゃうからベッドに乗れないの。赤い生のお肉の前に座るベロは、僕の顔とお肉を何度も見る。首が回って取れちゃいそう。いいよと言ったら、尻尾が大きく揺れた。
ベロの牙は立派だから、肉を生で齧っても骨が入ってても平気だった。ばりばりと骨を噛む音がする。可愛いと思って手を伸ばしたけど、パパが途中で止めた。
「ご飯を食べてる時の獣に手を触れてはダメだ。びっくりさせるぞ」
「うん、ごめんね」
そっか、ご飯が取られるかも知れないと吠えるよね。それでも無理に撫でたら、噛んだり怒るかも。ベロのことを考えるなら、ご飯の時は撫でたらダメだ。ちゃんと納得した。次はしない。
用意された布巾で手を拭いて、パパの手も僕が拭く。何度も擦ってやっと綺麗になった。僕の手よりずっと大きいんだ。パパの手がパンを掴んで、ふわふわとお皿が寄ってきた。
「パパ、僕も魔法したい」
「もっと大きくならないと使えないぞ。そうだな、このくらいだ」
パパが僕の頭の上を撫でる。何もない場所だけど、上を向いて確認した。あのくらい? まだ先だね。
ご飯を食べながら、今日の予定を聞いた。お勉強はないけど、お外へ遊びにも行けないの。難しい会議があるんだって。話し合いをするんだよ。大人のお話なら、僕はお絵描きをしてたらいいかな。そう思ったのに、スープを僕に飲ませながらパパは笑った。
「今日の会議はカリスも一緒だ。何しろ、カリスのお陰で決まった話だからな」
「僕? わかった」
大人のお話を聞いてもいいんだね。僕のお陰は分からないけど、パパは楽しそう。今度は切ったお肉をくれた。もぐもぐと食べる僕の手が、お肉を刺したフォークをパパに出す。長くて細い麺もあった。上に茶色いソースが掛かってる。ちゅるちゅると啜って食べた。口の周りがソースだらけになって、ベロに舐められちゃった。