表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

168/214

166.天使を齧ると悪い犬になるよ

 ベロとの朝のお散歩も、いつも通り長く歩けるようになった。戦いがあるから短い道にしてたの。でもお庭をぐるっと回っても良くなって、ベロも嬉しいみたい。朝の早い時間は、紐で繋がなくても平気になった。


 大喜びで走るベロと僕、後ろからパパが付いてくる。いつもの光景だよ。そこへミカエルが現れた。続いて、ラファエルとガブリエル、ウリエルまで。僕は止まりきれなくて、ミカエルにぶつかったけど、後ろでガブリエルが支えてくれた。


「ぶつかってごめんなさい、転ばないようにしてくれてありがとう」


 ごめんなさいとありがとうは、大切な言葉なんだよ。それから挨拶を忘れたと気付いた。


「あと……おはよう」


「あ、ああ。おはよう」


「本当にいい子だよね」


「「おはよう」」


 皆が挨拶を返してくれた。にっこり笑う僕を、そっと撫でる。順番がミカエル、ウリエル、ガブリエル……あれ? ラファエルだけ手を伸ばしたのに引っ込めちゃった。


「撫でないの?」


「撫でていいのか?」


 質問に質問を返すのはダメだよ。そう言いながら、また伸びた手の下に頭を入れる。ゆっくり時間をかけて触って、優しく撫でていた。ほら、僕が言った通りだ。ラファエルも優しい天使だよ。


「現れる時は周囲に気をつけろ。それと……その犬の件は謝らんぞ」


 ん? パパの妙な言葉に振り返ると、ウリエルの服をベロが齧ってた。


「ベロ、ダメ! 噛んだらダメでしょ。悪い犬になっちゃうよ」


「……ケルベロスだけどな」


 ぼそっとミカエルが何か言ったけど、今はベロを叱るのが先。手招きすると、しょんぼりした様子で手が届く手前で止まった。僕が叩くと思ったの? ママだからそんなことしないよ。奥様じゃないもの。


 ベロが近づかないから、僕が近づく。ぺたんと座ったベロを抱きしめて、人を噛んだらいけないと説明した。僕が間違ったことをしたら、パパもこうやって教えてくれるから。噛まれたら痛いし、嫌な気持ちになる。ベロが嫌われちゃうよ。僕は皆に可愛いと言ってもらえるベロが好き。


 わん。そう鳴いたベロは反省したみたい。だから僕がウリエルに「服を噛んでごめんなさい」を伝えた。ベロは話せないから、ママである僕のお仕事だよ。ウリエルは「服だけで体じゃないからいいよ」と答えてくれた。ほっとする。


 振り返ったら、パパとミカエル、ラファエルが真剣にお話をしてる。ウリエルとガブリエルは僕を撫でたり、お菓子を手の上に呼び出したりしていた。気になってパパを見つめる僕に、目線を合わせてしゃがむガブリエルが「知りたい?」と聞いた。


 一回頷いて、すぐに首を横に振る。


「いいの。パパが僕に教えない時は、知らなくていいことだから。僕はまだ子どもで、大人のお話の邪魔はしないんだよ」


 気になるけど、必要なことならパパは隠さないもん。そう言って笑ったら「偉いな」ってお菓子を二つもらった。お礼を言って、ベロと半分こする。もう一つは大事にポーチへ入れた。


「食べないのかい」


「後でパパと食べる」


 にこにこと笑った僕に、ガブリエルとウリエルが声を揃えて叫んだ。


「「ああっ、羨ましい」」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ