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164.天使の人の羽を返したよ

「カリスの心が傷付いた」


 謝りに来たラファエルは、申し訳なさそうに俯いた。パパが怒った声じゃなくて、普通に話すけど……何だか怖い気がする。僕の銀髪を撫でる手は優しくて、パパを見上げてにっこり笑った。大丈夫、僕はパパを怖がったりしないよ。


「申し訳ございません、バエル様。君にも悪いことをした。ごめんね」


 僕は「いいけど、ケガをした人にも謝って」と伝えた。だって、騎士の人は天使と戦ってケガをしたんだ。僕の仔犬ベロが羽を噛んだから、僕も天使に謝らないといけないけど。


「……それはしなくていい」


「どうして?」


「っ、向こうが先に攻撃したからだ」


 ラファエルは変な顔をしてた。困ったような、笑おうとして失敗したみたいな顔。僕は気になって手を伸ばすけど、手前でパパが握り込んじゃった。指を絡めて僕と手を繋ぐパパを見て、納得する。なんだ、パパは僕と手を繋ぎたかったんだね。恥ずかしがらないで、そう言ったら繋いだのに。


 時々パパは恥ずかしがり屋さんなの。にこにこする僕と反対に、パパは首を横に振る。分かってると頷くのは、天使のラファエルだった。


「先に攻撃したら痛くても我慢なの?」


「そうだ。だから先に攻撃してはいけない」


 この部屋は今、僕とパパとベロとラファエルだけ。アガレス達は隣の部屋にいる。ラファエルは一人でここに来たの。ミカエル達は一緒じゃなかった。一人で謝りに来たのに、それでも怒られちゃうのかな。僕だったら怖くて出来ないよ。それなのに、ラファエルは謝りに来た。


 すぐは無理でも、許して欲しいな。勇気があるんだよ。見上げる僕の髪をくしゃくしゃにしたパパが、大きな溜め息を吐いた。それから顔をくしゃっとして笑う。


「わかった。お前には敵わん。カリスの言う通りにしよう」


 お礼を言うラファエルに、僕は用意しておいた袋を差し出した。


「これは?」


「天使の人の羽なの。ママの僕を守ろうとして、ベロが噛んじゃった。ごめんなさい」


 パパの腕から降りて謝りたかったんだけど、アガレスもマルバスもアモンも反対したから、腕の中で頭を下げる。前より長くなった髪がさらさらと滑った。顔を隠すみたいに動く。


「ベロ……ケルベロスのことですね」


「うん。僕がママなの。だから僕がベロの代わりに謝るよ」


 頭を下げた僕に、ラファエルは笑ってくれた。ミカエル達と同じで、本当は優しい天使なのかな。こうやって、皆仲良くできたら嬉しい。


「……分かりました。謝罪は伝えます。羽を回収してくれて助かりました。これなら治すことも可能です」


 羽の入った袋を受け取るラファエルの言葉に驚く。


 治るの? びっくりした。天使の人の羽、体から取れちゃったのに戻るなんて。こないだ図鑑で見たトカゲさんみたい。尻尾が取れるんだよね。途端にパパは大笑いし、ラファエルは渋い顔をした。


「トカゲの尻尾は取れますが、くっつきません」

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