表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

162/214

160.お前なんか怖くない!

 首を横に振ったパパの姿に、約束を思い出す。僕は天使と話をしちゃダメ。両手で口を押さえて、話さないよと示した。パパの目が柔らかくなる。綺麗な銀色のお月様みたいな目は、僕を映して笑った。


「あなた様は誑かされているのです」


「俺もみくびられたものだな。そうだとして、天使のお前には関係あるまい」


 パパは怖い顔で天使に向き直った。他の天使より羽が多くて、キラキラがいっぱい。ミカエルやウリエルが言ってた「ラファエル」と言う名前の天使だよね。綺麗な人だな。でも金髪に黒い色が入ってる。もやもやしてて、前髪が黒く見えた。


 じっと見つめる僕をラファエルが睨む。でも怖くないんだから! 僕のパパはすごく強くて、ベロも大きくて、僕だって頑張れる。お前なんか怖くない。ぎゅっと拳を握って僕はそう唱えた。同じ言葉を何度も繰り返すと、願いが叶うんだ。奥様が昔にそう言ってた。だから僕は何度でも願うよ。


 皆が傷つかないで、パパやベロも無事でいて。僕はパパと一緒にいる約束を守りたい。誰も戦わないで、奪わないで!


 僕が繰り返すたびに、ラファエルは困惑した顔になる。お願いが届いたのかな。僕は金髪の天使の人も嫌いじゃないの。黒いお顔の人は怖いけど……天使も悪魔も優しい人がいっぱいで、僕はただパパと一緒にいられたらいい。ずっとずっと、僕が大人になっても。


 パパやベロ、優しくしてくれる悪魔のアガレス、マルバス、アモン、セーレ、プルソン……あとお店の人や騎士の人も。皆、一緒に笑っていたい。ミカエルやウリエル、ガブリエルは天使だけど、僕に酷いことしなかった。だからラファエルもやめてくれたらいいのに。


 金髪の前髪の黒いもやもやが大きくなって、ぐにゃぐにゃして顔を隠そうとする。でも、ラファエルの手で遠くへ飛ばされた。僕を見る目が優しくなる。青い色なんだね、晴れた日の空みたい。黒いのが消えたら、よく見えるようになった。


「申し訳ありません、目が曇っていたようです」


 何のお話だろう。お空じゃなくて目も曇るの? 拭いたら綺麗になるのかな。自分の目は見えないけど、パパを見上げる。僕を見つめる銀の瞳が綺麗で、パパのお顔も綺麗だった。嬉しくなって飛びつく。パパも僕を抱き返してくれた。


「構わん、連中を引かせろ」


「はい。退却させたら、改めてお詫びをさせてください」


 ばさりと白い羽を動かして、ラファエルは行っちゃった。天使の人が皆ついて行く。僕は我慢できたことに安心した。口を開く前に帰ったから、約束守れたよ。


「よく我慢したな、偉いぞ」


「うん」


 喜んだ僕とパパに、先に下へ降りたアガレスが叫んだ。


「大変です! 陛下、カリス様……ケルベロスが!!」


 ベロが? どうしたの? もしかしたら天使に虐められてケガをしたのかも。慌てる僕を抱っこし直したパパが「落ちるぞ」と注意した。ぎゅっと掴まって、降りるパパにしがみ付く。ベロは大きいまま、僕を見上げて尻尾を振った。ケガしてないよね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] よかった!戦争回避?ですね。(-ω-;) [一言] 戦争回避?でよかったよかった(´▽`) これからも平和が続きますように。(≧▽≦)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ