表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

160/214

158.明日がゆっくり来ますように

 明日の朝、早い時間に天使が攻めてくる。その話は、街の人やお城で働く人に連絡された。忙しそうなパパのお膝で、時々ほっぺにキスして癒すのが僕のお仕事。大事なお仕事って聞いてる。頑張るね。


「東の門は閉鎖します」


「西の森に魔獣を放て!」


 アガレスやマルバスが指示を出す。プルソンやセーレは戦えないから、今夜のうちに逃げるの。僕はパパと一緒の約束があるから、ここでパパを癒すお仕事を頑張ると決めた。僕だってやる時はやるよ。天使が来たら、えいって叩くんだ。


「カリス様、ご無事で」


「これは明日のおやつだからね」


 プルソンが泣きそうな顔で僕の手を握り、セーレはおやつをくれた。ベロはまだ弱い仔犬だけど、ママである僕が守るの。だから元気に挨拶をする。悲しくなんてないよ、すぐに会えるもの。パパが悪い天使をやっつけてくれるんだから。


「ありがと、気をつけて。天使に捕まらないように隠れてね」


 何度も手を振って城のお庭へ行く二人を見送っていたら、池のところに人がたくさん集まってた。ここから纏めて洞窟へ逃げるんだって。ぴかっと光った後、皆が消える。すごい! 一瞬で洞窟へ隠れられるなんて、悪魔は凄いんだな。


「カリスとベロは俺と一緒だ。絶対に離れるな」


 僕だけじゃなくて、ベロもちゃんと話を聞く。お座りして「わん」と返事をした。たくさん撫でてあげるね。


「怖くないよ、ベロ。ママがいるもん」


 わん! また勢いよく鳴くベロは、僕の顔や首をいっぱい舐めた。抱っこしたベロは少し重くなった。これからもっと大きくなると言われたけど、ゆっくりでいいよ。僕のお膝に乗せられなくなっちゃう。


「ベロは大人になることも出来る。危なくなったら守ってくれるぞ」


 そうなの? こっそり教えてくれたパパに尋ねると、笑顔で頷いた。パパより大きくなれるんだって。じゃあ普段は僕が抱っこできるけど、大きくなったら背中に乗せてもらおう。おやつの袋を握り締めて、怖い顔であれこれ指示してるアガレス達を見つめた。


 いいかな……いいよね。ちらっとパパを見上げたら、仕方ないと笑うから。僕はもらったおやつの袋を開けた。飾りのピンクのリボンを解いて、中を覗いた。明日のだけど、僕、明日はおやつがなくても我慢できる。


「部屋から出るな」


「うん」


 パパと約束して、ベロと一緒にアガレスの前に行く。書類を地下室に移動させるアガレスは、黒い毛皮がぼさぼさになるくらい頑張ってた。だから2枚ね。


「どうぞ」


「あっ……ありがとうございます」


 一瞬だけパパの方を向いて、それから笑って受け取ってくれた。でも1枚を僕に返す。


「これは私からカリス様への分です」


「ありがと」


 気持ちを込めた贈り物は受け取るのが、マナーだった。僕はそう習ったから、1枚を受け取る。袋に戻して、マルバスにも2枚だして1枚返ってきた。


 書類を運んでる人にも渡して、ダンダリオンが来たからあげる。皆、1枚でいいみたい。焼き菓子は半分になった。戻ってパパにあーんして、ベロにもあーん。最後に僕が齧る。甘くて美味しい。


「カリスはもう休むか」


「ううん。パパのお膝にいる」


「そうか。なら膝の上で眠るといい」


 皆がいつもと違う顔をしてて、離れるのが怖い。パパは取り出した毛布で僕を包んで、抱き上げた。移動して長椅子に座ったパパのお膝に僕が頭を乗せる。ベロが飛び乗って、僕の横に潜り込んだ。


 暖かいね。明日がゆっくり来ますように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ