155.快適で楽しい地下牢生活
僕がパパのお膝の上でおやつを食べてたら、ミカエルが来た。よく分からないお話をして、僕を褒めたからベロを褒めてとお願いする。でもちゃんと伝わらなかった。僕のお話はまだにじゅく? みたい。
「惜しいな、未熟だ」
パパやアガレスが使う難しい言葉を覚えて、使ってみたけど。少し違ったみたい。ミカエルの後にウリエルが来て、アガレスやアモンに連れられて行った。気になったので、僕はベロと一緒に見に行こうと思ったの。
地下牢って、一番下にあるんでしょ? セーレが使ってる料理のお部屋の下かな。セーレのところまでマルバスに送ってもらい、お願いしてみる。
「セーレ、一緒に行って」
「それは陛下に許可をもらってからにしようね」
頭を撫でられて、おやつの袋をもらう。ベロの分もくれた。中身が違うの! 僕は後でパパと食べると言ったら、ベロも我慢できるって。僕より子どもなのに偉いよね。たくさん抱き締めて、顔を舐められていたら、パパが来てくれた。お仕事してるからマルバスと来たのに、邪魔してごめんね。
「パパ、ミカエル達と遊びたい」
「遊ぶ……まあ、俺がいれば平気か」
地下牢って危ないのかな? 遊ぶ場所がなかったら困るけど。石の階段は滑るから、僕は抱っこされる。後ろからついてくるベロは、元気いっぱいだった。短い手足なのに、転がらない。ちまちまと歩く姿を見下ろして、可愛いと呟いた。
「パパはどうだ?」
「パパはカッコいい」
うーっ、わん! あれ? ベロもカッコいい方がいいの? でもまだ可愛いだからね。お兄ちゃんでママの僕だって、可愛いって言われる。ベロがカッコ良くなるのは、もっと先だよ。説明している声が響いた。
「声がいっぱいになる」
僕の声を真似してる誰かがいて、声が返ってくるの。笑って「そうだな」とパパが頭を撫でる。僕ね、頭に手が触れるの好きになった。前は痛いから怖かったけど、今は大好きだよ。セーレもマルバスもアガレスも、皆優しく触ってくれる。パパの手は怖くないから嬉しい。幸せがいっぱいで、僕から溢れちゃいそうだった。
「さあ、ここだ」
パパに言われて覗いた先は、鉄の細い柱がたくさん。これは僕が奥様に入れられた部屋に似てる。下が石で硬くて、鉄格子という窓があるの。手は出るけど、僕は出られなくて……じわりと涙が出た。
「パパっ、ミカエル可哀想」
「僕がね、自分で入りたいって言ったんだ。ここはここで、楽しめると思うから」
ミカエルは悲しそうじゃない。痛そうな顔もしてないし、平気なの?
「大人だから平気さ。それより、僕に用があったの?」
「うんとね、一緒に遊ぼうと思って」
照れながら説明する。そっか、僕が子どもだからこの部屋が怖いんだ。大人になれば怖くなくなって、ミカエルみたいに楽しくなるかも。恥ずかしいこと言っちゃった。
「いろいろ言いたいことはあるが……俺はカリスの望みが最優先だ」
「ああ、なるほど。ちょっと待ってね、部屋を綺麗にする」
ミカエルはお空から色々取り出した。柔らかい絨毯を敷いて、机を置いて、椅子も。それからベッドにクッションと柔らかい毛布を置いた。僕にもクッションを出してくれる。パパは自分で座る椅子を出したから、僕はクッションを抱いてお膝に座った。
「ありがと」
「使い方が可愛いよねぇ、ほんと、この子と争いたくない」
ミカエルの声に、隣から文句が飛んできた。
「ちょっと! 僕だってその子に会いたいんだけど!?」
ウリエルだ! パパのお膝を降りて、ベロと一緒に見に行ったら、もう絨毯やお布団がいっぱいあった。どっちのお部屋も素敵になったね。これなら楽しくいられそう。