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152.逃げて隠れるのが子どもの仕事

 避難訓練というのを教わる。真剣な顔で、お城に勤めてる人が並んだ。ミカエルが伝えに来た戦いがある時、戦える悪魔は前に出るの。でも戦えない悪魔は逃げるんだよ。隠れる場所が決まってて、そこへ逃げる練習をするんだ。


 プルソンは戦えないの。アモンとアガレスは強くて、マルバスはあまり強くないけど戦えるんだって。僕はパパと戦うつもりでいたら、ベロを守る役目があるから隠れるように言われた。ベロは僕が抱っこできるくらい小さいし、まだ赤ちゃんの犬だから。ママの僕が守らないと。


 しっかり頷いて、ベロを連れて練習に参加した。いつもご飯を運んだり、ベッドを綺麗にしてくれる猫耳のお姉さんもいる。セーレやプルソンと並んで、ダンダリオンと言う人の説明を聞いた。


 避難する道は決まってて、青く光る線を追いかけるの。それは悪魔は見えるけど、人間や天使は見えない線なんだよ。床や地面に現れるんだ。お城の敷地は魔法陣の中だから、魔法で案内してくれるけど、外へ出たら線がなくなるから危ない。


 天使が攻撃してきたら、お城が一番安全だから出ないこと。青く光る線が出たら、それを追いかけて逃げること。逃げる時は知らない人が呼んでもついて行かないこと。いっぱい覚えることがあった。


 ベロも真剣に聞いてる。悪魔にしか見えない線は、仔犬のベロも見えるかな? 悪魔になった僕が飼ってるから平気? 見えないといけないから、必ず一緒にいよう。説明を全部聞いて、皆とバイバイした。


 ダンダリオンとプルソンに連れられて、パパのところへ帰る。


「きちんと覚えられたか?」


「うん! 青い光る線を追いかけるんだよ」


「城の守りは固めるが、何かあればダンダリオンが守ってくれる。顔を覚えて、助けてもらえ」


「うん……でもパパと一緒がいいな」


 逃げるのも、戦うのも。パパとベロと一緒がいい。パパを置いて逃げるのは嫌だった。パパは強いから、戦っても勝てると思う。だけど僕は戦えない。邪魔だよね。


 しょんぼりした僕に、パパが話をしてくれた。


「俺がカリスを邪魔だと思うことはない。戦うのは大人の役割だ。子どものうちは逃げて隠れ、俺を安心させて欲しい。カリスが無事なら、必ずカリスのところへ帰る」


「僕はパパの帰る場所なの?」


「そうだ」


 真っ直ぐに僕の目を見て話すパパは、とても綺麗だった。武器を持って戦う人には見えない。黒い長い髪も、銀の角も。白い肌で、僕を見つめる目は優しいのに。


 虐めに来る人は、天使なんだ。ミカエルもウリエルやガブリエルも天使だけど、パパに酷いことするのかな。泣きたい気分で俯いたら、くしゃりとパパが僕を撫でた。


「心配しなくていい。俺は負けないし、天使の3人もカリスの味方だ。転ばないように逃げる練習をしようか」


「……うん! ベロも一緒にやる」


「そうだな、必ず一緒に逃げろ」


 僕とパパは約束をした。指を絡めて歌う。ベロは指がないから、握手して同じ約束をした。一緒に逃げて、皆でまた会おうね。

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