148.池のお魚を捕まえる勉強
僕の銀食器は、まだ完成しないの。だから今日は街へ行かないで、お庭の魚のお世話をするよ。プルソンと手を繋いで、池のある一番下まで降りる。後ろをベロがついて来た。
「ベロ、池は入ったらダメだよ。お魚の場所だからね」
わん! 勢いよく返事をしたベロは、僕の言葉がわかるみたいなの。僕にも時々だけど、ベロが何を思ってるか伝わった。前に「助けて」って僕を呼んだ時みたいに、聞こえることもある。いつもじゃないけど。
「今日の夕食で食べる魚を釣りましょう。陛下の分とカリス様の分です」
「捕まえるの?」
「そうです。魚釣りが今日の授業です」
魚釣り……ご飯をつけた糸を入れて、ぱくっと食べたら持ち上げるんだって。捕まえたお魚は美味しく食べる。可哀想だと思ったけど、僕が食べた肉や魚はそうやって捕まえたんだよね。
僕が今日魚を食べないと言っても、誰かが代わりに捕まえて、ご飯になっちゃうの。他の人にやらせて、僕がサボるのはいけないと思う。それに……僕はベロのママだもん。ちゃんと出来るところを見せなくちゃ! お座りしてるベロを見て、覚悟を決めた。
「僕、頑張る」
「偉いですね。仔犬に手本を見せましょう」
「うん!」
糸を付けた先に針がついてる。こんなの食べたら、痛いんじゃないかな。その後食べちゃうとしても、痛いのは可哀想。プルソンにそう訴えたら、少し考えて変更になった。釣りじゃなくて、魚掬いだって。
魚を掬う網を持って、近づいた魚を外に出すの。これなら針がないから痛くないよ。スプーンみたいな形だけど、丸い部分が網になってた。ここに魚を入れるんだね。説明をよく聞いて、池の縁にお座りした。
縁は高いから、プルソンに抱っこで座らせてもらう。落ちないようにしながら覗くと……お魚が集まってた。
「カリス様、まずは粉を撒いて魚を集めます」
「うん、もういるよ」
「見える位置でも遠いと危険なので、近くに…………え?」
「すごい近い」
まるで僕の足に集まって来たみたい。僕が覗くと、お魚がさらに近づいた。ぴちぴち跳ねてる。
「掬ってみてください」
「どれがいいの?」
「どれでも構いません」
両手で竿を握って、網を水に近づけた。ぴょんとお魚が跳ねて網の上に落ちる。びっくりした!
「お魚、自分できた」
「え、ええ……あ、この中にどうぞ」
バケツの中にお魚を入れる。お水が入ってるから、くるくる泳ぎ始めた。これで一人だから、あと一人。また網を戻したら、今度は二人飛び込んだ。
「どうしよう、二人も入っちゃった」
「えっと、あの……その。多い分には構いませんが、二匹です」
「二人じゃないの?」
「二匹または二尾ですね」
また数え方が難しいの。にび?
「尻尾の数で数えたんです」
「じゃあ、ベロも一尾?」
「いえ。犬は一匹または一頭です」
なんで今度は頭の数で数えたんだろう。変なの。そういう決まりなら仕方ないけど、頭か尻尾か片方にすればいいのに。