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14.仲が良いと喧嘩するの?

 お菓子を食べたら、アガレスが苦笑いしながら「今度は言葉遣いを直しましょうね」と言った。うまい、は品がないんだって。でもバエルが使ってたよ? そう言ったら、アガレスがバエルを睨んだ。


「またそのような言葉を使っているのですか? 皇帝陛下ともあろう方が……」


「仕方あるまい、誇る生まれではないからな」


 ぼそっと吐き捨てた途端、アガレスはそれ以上何も言わなかった。でも僕の言葉は直すみたい。本を読めるように字を習うときに、一緒に教えてもらうの。上品な言葉じゃないと、バエルの息子としてダメなのかも。


 僕の言葉が変だから、バエルが怒られた。僕のせいだ。しょんぼりした僕を撫でて、アガレスが首を横に振った。


「気にしないでいいです。私とバエル様はよく言い合いをします。仲が良い証拠ですよ、そうですよね?」


 バエルは長く迷った末に「そうだ」と返事をした。すぐお返事しないのは、喉にお菓子が詰まったのかな。


「契約者の告知は、近日中に準備が整います。その前に髪を切って服を用意しなくてはいけません。カリス様をお借りしますよ」


「僕、様じゃない」


 それは偉い人につけるの。だから僕は偉くないから要らない。そう伝えたら、アガレスが許可を求めた。


「カリス、と呼ぶ許しをいただけるのですか?」


 難しいけど、カリスでいいよ。そう思って頷いた。むっとした顔で、バエルが口を挟む。


「我が契約者だぞ!」


「ですが、ご本人様の許可を得ましたので」


 勝ち誇った顔でアガレスがふふんと鼻を鳴らす。なんか獲物を捕まえた猫みたい。あ、猫じゃなくて狼だった。


 ぷっと吹き出したバエルが「カリスには勝てぬ」と笑う。バカにされてる感じはなくて、楽しそう。僕も笑った。バエルが嬉しいと僕も嬉しいよ。


「髪を整えるのはマルバス、服はアモンを呼びましょう。よろしいですか?」


「問題ない。すぐに手配しろ」


 アガレスが部屋を出た。僕はすぐにバエルに抱っこされて、頬を優しく撫でてもらった。気持ちいいね。バエルの手はとても優しい。


「綺麗な目だ。悪魔が好む最上級のサファイアだな」


 サファイア? 青い宝石をそう呼ぶと教えてもらった。宝石にも名前があるんだね。僕は知らないことが多いけど、こうやってひとつずつ覚えていく。ちゃんと覚えて、バエルが恥ずかしくないようにしなくちゃ。


「恥ずかしい? 今でもそんなことは思わぬが……誰に言われたのだ」


「奥様」


 前にお母さんだった人、今は奥様なの。僕は恥ずかしくて、人前に出せないと言って殴った。だから僕は恥ずかしい子で、これからバエルに似合う綺麗な子になりたい。いい子になって、たくさん一緒にいたいんだよ。


「すでに立派な息子だ。これ以上綺麗に賢くなったら、誰かに攫われそうだ」


 バエルは優しい。僕を傷つけないようにしてくれるの。温かい腕に抱かれて、膝の上で背中をトントンされる。目蓋が落ちてきて、我慢できなくなっちゃう……寝たらダメ。バエルはまだお仕事があるのに。


 頑張ったけど、僕は我慢できなくて眠ったみたい。目が覚めたら、バエルのお膝に乗ったままだった。少し先の机でアガレスが仕事をしていて、バエルも僕を抱っこして仕事をしてた。降りないといけないと焦って動いたら、止められた。


「ここにおれ。もうすぐアモンが来るぞ」


 その人、こんな赤ちゃんみたいな僕を見て怒らないかな?

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