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146.朝起きたら、ベロがいないの

 お父さんとパパは同じ。お母さんとママも同じ。バエルは僕のパパで、僕はベロのママだよ。それは結婚とは違うけど、ずっと一緒にいる約束だった。


 なのに、朝起きたらベロがいないの。いつもお散歩の紐を持って走ってくるのに、今日はいなかった。ベロ用の籠にもいないし、おトイレも見たけど……。


「パパ、どうしよう。ベロがいない」


 鼻を啜って泣きながら、ベッドの下を覗く。隙間に入ってるのかも。寝転がったら涙が横に流れた。ベロはいなくて、がっかりしながら起きる。そんな僕をパパが抱っこした。


「トイレも籠も探したのか」


「うん……」


 でもいなかった。パパも一緒に探してくれたけど、扉も開いてないよ。どこへ行ったんだろう。廊下もパパと確認して、窓の下に落ちてないのも見た。もう探すところがないと思いながら部屋に戻ると、ベロは尻尾を振って走って来る。


「ベロ!」


 パパが僕を下ろしてくれた。走るベロを捕まえてぎゅっとする。わんっと鳴くベロを頭から尻尾まで撫でた。どこもケガしてないよね? それから飛びついたベロに顔を舐め回される。普段は擽ったいのに、今日は嬉しいのと安心したので泣いた。


「どこ行ってたの?」


 くーん、わんっ! ベロは何か話すけど、僕は分からないの。パパを見上げると、驚いた顔をしたあと話を聞かせてくれる。床に胡座で座って、ベロを抱いた僕を乗せた。


「ベロはコキュートスに降りていたらしい。どうやら自分だけで行けるみたいだな。心配させて悪かった、起きるまでに戻るつもりだったと言ってるぞ」


 くーん、耳を垂らして謝るベロは、昨日の夜より一回り大きくなった。前より重くて、どっしりしてる。


「もう勝手に行かないで。僕かパパに知らせてね」


 お願いだよ。ベロはわんと返事をした。頭を撫でて、大好きと伝える。今日のお散歩は時間が遅くなったけど、今から出かけることにした。廊下を歩いて階段を降りて、お庭はもうすっかり明るい。


 池のお魚を覗いたら、たくさん寄ってきた。持ってきた細かい粉のご飯をあげる。手に付いた粉の残りを、ベロが舐めちゃった。お魚の匂いがするのかな。


 ベロはくるくると走り回り、嬉しそう。お散歩が本当に好きなんだよ。泣きすぎて目が赤くなった僕だけど、パパがちゅっとキスして直してくれた。痛いのもピリピリするのも消えて、元通りだよ。


「ベロ、離れちゃダメ」


 遠くへ行きそうになって、慌てて呼び戻す。姿が見えなくなると怖いの。またいなくなっちゃうかも知れないから。そんな僕にパパはたくさんキスをくれた。少しだけ安心して、ベロとお散歩を終える。


 一緒にいる誰かがいなくなっちゃうの、怖いね。僕はそういうの嫌い。パパもベロも、皆もずっと一緒がいいな。

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