144.僕の色の首飾りをベロに
ベロは首飾りを喜んでくれるかな。わくわくしながらお城の階段を登る。パパと手を繋いで、左手に首飾りが入った袋を揺らして。
階段の上でまたパパに抱っこされちゃった。頬擦りするパパの頬にキスして、扉を開ければ……ベロが駆け寄ってきた。僕に届かないから、パパの足に手をかけて立ち上がるの。犬は前足だっけ?
「ベロ、いい子にしてた?」
わんっ! くるっと回ってもう一度、わんと鳴く。元気なベロの前に下ろしてもらった。抱き着いて僕の顔を舐め回すベロは、パパに「こらっ」と叱られてる。口を舐めさせるのは良くないんだって。
「次からはここじゃないとこね」
口を示して説明すると、頬や耳まで舐められた。ベロは僕との約束を守ったから、パパはもう叱ったらダメだよ。額を舐められながら、お留守番したベロを褒める。左手の袋から出した首飾りを見せた。
「これは首輪の代わりだよ、これがないと、ベロが僕の子だって分からないから。着けていいよね?」
わんっ! 大きく鳴いて座った。ベロの尻尾が左右に目一杯振られてる。大丈夫みたい。両手を使ってベロの首に回して、後ろをパパに止めてもらった。僕だと無理なの。金具が止まると、ベロは気にしてくるくると回る。でも首の飾りは見えないから、今度は反対に回った。
「パパ、姿見る丸いやつ貸して」
「これでいいか」
鏡という道具をベロの前に出す。銀の鎖が二本並んでて、板に青い石が入ってるの。ベロの名前も入れてもらったし、裏に僕やお城のことが書いてあるんだ。
じっと鏡を見つめた後、ベロはへらっと笑った。パパは違うと思うって言うけど、舌を出して笑ったよ?
「作ってもらうカトラリーは、また別の日に取りに行こう」
出来上がったら連絡が入るみたい。いつになるか分からないから、僕はしばらく大人のを使う。でもいつも握ってるだけで、パパがあーんしてくれるんだけど。
「アガレスがお茶に誘ってるぞ」
「本当!? 僕いく。おいでベロ」
ベロを連れて、パパと手を繋いでお部屋を出た。今日のお茶はお庭で池の近くなの。お魚も見えるし、お天気もいいから楽しそう。お菓子の入った籠を持ったセーレに会った。誘ったら、セーレはお仕事が忙しかった。また次に誘うね。手を振って別れ、もらったお菓子の袋を抱っこして歩く。ベロが後ろから匂いを嗅ぐけど、これは僕のだよ。
お庭に出たら、今までより緑色の葉っぱが増えてた。あと白い葉っぱと黄色い葉っぱもあるね。黒い花が咲いてるのは、赤い葉っぱの草?
「薬草だな」
お薬になる葉っぱなら、後でプルソンに頼んでお勉強しよう。用意された机や椅子のところで立ち止まる。待ってたのはアガレスとマルバス、それからアモン。僕とパパとベロで6人だね!
「犬は1匹と数えるんだぞ」
パパに言われて、ベロだけ仲間はずれは嫌だから「6匹」と数えたら、それは違うみたい。数えるのは難しいね。