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143.首輪じゃなくて、首飾りだった

 ベロの首輪を探す。革か鎖が普通だから、両方見てから決めることにした。パパが知ってる革の細工をしているお店に入る。中は変わった匂いがした。でも嫌いじゃないよ。くんくんと匂ってから、お店の人を振り返ってびっくりした。


 全身が銀色に光ってる。何で出来てるんだろう。目を見開いて凝視したら、照れたように俯く。


「ごめんね、じろじろ見て。光っててカッコいいよ」


 お詫びをして、どうして見ていたか付け加える。銀色にきらきらして、とっても素敵だと思う。僕の言葉に顔を上げた銀色の人は、柔らかく笑ってくれた。


 銀って言ってもね、ぎらぎらした感じじゃなくて。銀の細かい毛が生えてるのかな? アガレスの黒い毛皮みたいだけど、もっと毛が短くて細い気がした。


「彼は水辺で暮らす一族だった。だから毛皮が水を弾くように出来てるんだ」


 パパに教えてもらう。銀に見えるけど、本当は薄い灰色だった。細い毛が光を弾いて輝くんだね。お仕事が終わると、大きなお風呂みたいなお家で過ごすと話してくれた。一度見てみたいな。


「失礼しました。お求めの品は革の首輪ですか?」


 用意してくれたのは、どれも細くて可愛い色だった。水色、青、黄色、ピンク、オレンジ、赤! 黒もある。ベロは茶色い犬だから、オレンジとか黄色は見えにくい。水色か青? でも黒もカッコいい。僕なら赤にするけど。


「この店は鎖のタイプもあるか?」


「鎖……ああ、首飾りのタイプですね。用意しております」


 銀の毛皮の人は、すぐに別の箱を持ってきた。開けたら、金や銀の綺麗な鎖が入ってる。僕が知ってる繋ぐ鎖じゃなかった。


「綺麗だね」


 赤や青の石が入ってる。緑もあるね、このピンクのはアモンに似合いそう。でもアモンは犬じゃないから、買わないけど。僕を抱っこしたまま、パパが小さく震えてる。具合悪いの? あ、笑ってた。声に出して笑ったらいいのに。我慢するとお腹の横が痛くなるよ。


「俺が勧めたのは首飾りの方だが、どうする?」


「銀色に青い石が綺麗だと思う」


 茶色いベロの毛皮に金色は目立たないし、ベロの目は青いから。同じ色の石は似合うと思うの。そう伝えたら、パパは驚いた顔をした後頷いた。


「そうだな、ちょうどカリスの色だ」


「僕?」


 言われて気づいた。僕の髪は銀色で、目は青なんだ。僕の犬だって一目で分かる色だね!


「カリスの仔犬だと分かるから、これにしよう」


 銀色の細い鎖が二本で、名前を刻む銀の板がついてる。その板に青い石が付いていた。それを選んだら、お店の人が何かを取り出した。


「首の大きさが分かりますか? およそでいいのですが……伸縮の魔法陣付きですから」


 説明に首を傾げると、銀の毛皮の人が丁寧に話してくれる。ゲーティアで飼う動物は、巨大化する種類が多いんだって。だから大きくなっても付けられるように、体に合わせて調整してくれる首飾りだった。


 僕は両手で丸い輪を作って、お店の人に差し出した。


「あのね、ベロの首の太さはこのくらい」


 さっき取り出した道具でぐるりと僕の手の輪を測り、なるほどと頷いた。その時に触った手が、すべすべで気持ちいい。


「毛皮、柔らかくて気持ちいい」


 思わず呟いたら、両手で僕の手を包んでくれた。嬉しい。にっこり笑うと、お店の人も笑った。その後、パパは僕を抱っこしてるのに手も繋いで帰ったの。いっぱい触りたかったのかな。

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